1ページ劇場①

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
75 / 239
不安定

しおりを挟む
(あ~あ…
何やってるんだろう、私……)



「なんじゃ、ひかり…
大きな溜め息なんて吐いて…
溜め息を吐いたら…」

「幸せが逃げるって言うんでしょ?
そんなことくらい知ってるよ。
でも……」

「……シュウと何かあったのか?」

おじいさんの言葉に、私はどう返事をしたら良いのか戸惑った。
だって、何かあったって言う程の事は何もないんだもん。
何もないけど……要するに、私の気持ち。
シュウはどこに行っても綺麗な女の子達に取り囲まれるし、友達が誘いに来たらすぐに遊びに行っちゃうし……



「何かあったのなら、わしが力に……」

「……何もないんだ。
ただおじいさんとお茶したかっただけ。
じゃ、そろそろ帰るね。」

私は、おじいさんに手を振って、そのまま家を後にした。
シュウはきっとまだ帰ってないだろう。



(なんで、こんなとこまで来ちゃったんだろう…
馬鹿だな、私……)



もう二度と戻れない自分の世界の事を思い出したら涙が出て来た。
だめ!だめ!しっかりしろ、私!



涙を拭い、私は空を見上げた。
そうだ…きっと、シュウの事、好きすぎるのがいけないんだ。
これからは、なるべくシュウのこと考えないようにしよう。
シュウが私に対して抱いてる気持ちと同じくらい好きでいたらちょうど良いんだ。



(もっと、クールにならないとね……)








「おかえり。」

鍵を開けて扉を開けたら、そこにはシュウが立っていた。



「か、帰ってたの?」

「あぁ。
ひかりこそ、どこ行ってたんだ?」

「……おじいさんの所…」

「……ふ~ん。」

私にはそこしか行くとこないこと知ってて……
シュウは本当に意地悪だ。



「わぁ!」

「せっかく早く帰ってきたのに……」

いきなり抱き締められて、私は思わずおかしな声を出してしまった。



「だ、だって、シュウ…一旦、出掛けたらいつもなかなか帰って来ないし……」

「でも、今日は早かった。」

勝手なことを……
でも、私のことをじっとみつめるその目を見たら……



「ご、ごめんね!」

私よ…なぜ、謝るんだ!?
なぜ、こんなにどきどきしてるんだ?



悔しいけど……
シュウの私に対する想いと同じくらい好きになんてなれそうにない。
だって、私はこんなにシュウのことが好きなんだもん……!



「わぁ!なんだ、ひかり……
なんで、よだれなんかたらしてるんだ!?」

心地良い気持ちをぶち壊すように、シュウが私の身体を押し離した。



「え…ええっ!?」

「もしかして、ケーキのにおいを嗅ぎ付けたのか!?」

反射的に頷いた私に、シュウは突然笑い始めた。



「おまえ…警察犬になれるぞ!」

その酷いジョークに、私はただ笑うしかなかった。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...