１ページ劇場①

お月見の夜

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（あ～あ…帰るの嫌だなぁ…）



家に近付くにつれて、僕の足は重くなる。
あのゲームが悪いんだ。
あのゲームが面白過ぎるのがいけないんだ！！



僕は、ゲームにハマり過ぎ、ついにゲーム禁止令を出されてしまった。
だけど、僕の頭に浮かぶのはあのゲームのことばかり。
どうにも我慢出来なくなった僕は、友達の家でそのゲームをさせてもらう事にした。
つい夢中になってるうちにいつの間にか遅い時間になっていて、お腹の虫が鳴くまでそれに気付かなかった。
二人で対戦しながらやるとなおさら面白いんだもん。

友達の家にお母さんから電話がかかって来て、友達がうっかり口を滑らせ、僕がゲームをやってた事もバレたし、帰ったら絶対に叱られる。
それも、ものすごく…だ。



空にはぽっかりと丸い月が浮かんでいて、遅い時間でもけっこう明るい。
そういえば、今日は家でお月見をするってお母さんが言ってたっけ。
そんな日にこんな遅くまで遊んでたんじゃ、なおさら叱られる！
あ～あ、呑気に揺れるすすきの穂がうらやましい…



（あ、そうだ！）



僕は、良い事を思いついた。
あのすすきを持って帰ろう。
あれを持って帰ればお月見のことを忘れてないって言い訳が出来そうだから。



適当にすすきを選んでいると、僕のズボンをつんつんと引っ張る者がいた。



「うわっ！」



そこにいたのは真っ白なうさぎ。
でも、普通のうさぎじゃない。
だって、ニ本足で立ってたんだから。



「ねぇねぇ…」

「わ！わ！う、うさぎが喋った！」

「そんなことで驚くとは、人間ってやっぱり下等な生物だな。」

なんだ、なんだ！？
えらく感じの悪いうさぎだぞ。
え…もしかしたら、妖怪とかモンスターの一種とか？それとも……



「お、おまえ、もしかして宇宙人か？」

「はぁ？俺はただの月のうさぎだ。」

「つ、月って、あの月？」

僕は頭の上の月を指差した。



「月って言ったら、あれに決まってるだろ。」

「そ、その月のうさぎがどうしてこんな所に？」

「それは…月が見たかったからだ。」

「月が…？」

「そうさ。人間達は月を見て美しいと言う。
だけど、俺達には月を見ることが出来ない。
なんせ、月に住んでるんだからな。
だから、前から一度で良いから見たいって思ってたんだ。
それで、こっそりここに降りて来て…
それにしても、本当に綺麗だな。」

うさきが空を見上げ、うっとりと目を細めた。
変なうさぎだ。
だけど、うさぎの言う通り、空に浮かんだ今夜の月はとても綺麗で…
いつもお団子しか興味のなかった僕もなんだかちょっと感動した。