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星の流れる夜に
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(どうか、パパとママが早く帰って来ますように!)
みつけた流れ星に、僕は必死で祈った。
(どうか、マルセルの熱が下がりますように!)
(このまま、みつからずに安全な所へ逃げられますように!)
(おいしいものが食べられますように!)
夢か奇蹟のように、次から次に流れ星はみつかった。
その度に僕は心からの願いをかけた。
昔のような平和で穏やかな家に戻りたくて、僕は必死だったんだ。
平和だった頃を思い出すと、不思議と涙が浮かんで来る。
思い出される家族の顔は、皆、笑顔なのに……
*
*
*
(ハッ……)
ものすごい寒さで僕は目が覚ました。
気付かないうちに眠ってしまってたみたいだ。
起きようとしたら、世界がぐるんと大きく周って胸がむかつき、起きあがることが出来なかった。
マルセルも眠っている。
こんな寒い所で眠ったら、ますます熱が上がりそうだ。
僕は恐る恐る身体の向きを変えて、這いながらマルセルの傍に近付いた。
「マルセル……」
そっと触れたマルセルの額はとても冷たい。
それは、熱が下がったというものではなく、まるで血が通ってないような冷たさで……僕は本能的に悪い予感を感じていた。
「マルセル?マルセル!……マルセルーーーー!!」
小さな弟の身体は人形のようだった。
どこにも力はなく、僕が揺さぶるままにがくんがくんと動くだけ……
助けて!
誰か、マルセルを……僕を助けて!!
僕はもうどうしたら良いかもわからなくて…怖くて怖くてどうしようもなくて……ただ叫んで泣く事しか出来なかった。
*
「もう心配はいらないよ。」
僕が目を覚ましたのは、どこかわからない…薬のようなにおいがする明るい部屋だった。
僕は親切な人に発見され、保護されたんだ。
その後、警察が調べてくれて、あの人達は親戚でもなんでもない悪い人だってことがわかって……僕は、今、施設で穏やかに暮らしている。
流れ星は願いを叶えてくれた…
あの晩、僕ははっきりと見たんだ。
パパとママがマルセルの手を引いて、天に上っていくのを……
あの時のマルセルはとても幸せそうな顔してた。
いつもみたいな無理して作った笑顔じゃなくて、心からの笑顔を浮かべてた。
いろいろと思うことはある……
でも、マルセルのあの顔を見たら…きっと、これで良かったんだって……僕にはそう思えた。
なのに、涙が溢れて来るのはなぜだろう?
そう思うのは本心じゃないのか、それとも、ひとりぼっちになってしまったせいなのか……
(ねぇ、マルセル…君は、最期に何を祈ったんだい…?
……君の願いは叶ったのかな?)
~fin
みつけた流れ星に、僕は必死で祈った。
(どうか、マルセルの熱が下がりますように!)
(このまま、みつからずに安全な所へ逃げられますように!)
(おいしいものが食べられますように!)
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その度に僕は心からの願いをかけた。
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平和だった頃を思い出すと、不思議と涙が浮かんで来る。
思い出される家族の顔は、皆、笑顔なのに……
*
*
*
(ハッ……)
ものすごい寒さで僕は目が覚ました。
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「マルセル……」
そっと触れたマルセルの額はとても冷たい。
それは、熱が下がったというものではなく、まるで血が通ってないような冷たさで……僕は本能的に悪い予感を感じていた。
「マルセル?マルセル!……マルセルーーーー!!」
小さな弟の身体は人形のようだった。
どこにも力はなく、僕が揺さぶるままにがくんがくんと動くだけ……
助けて!
誰か、マルセルを……僕を助けて!!
僕はもうどうしたら良いかもわからなくて…怖くて怖くてどうしようもなくて……ただ叫んで泣く事しか出来なかった。
*
「もう心配はいらないよ。」
僕が目を覚ましたのは、どこかわからない…薬のようなにおいがする明るい部屋だった。
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流れ星は願いを叶えてくれた…
あの晩、僕ははっきりと見たんだ。
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いつもみたいな無理して作った笑顔じゃなくて、心からの笑顔を浮かべてた。
いろいろと思うことはある……
でも、マルセルのあの顔を見たら…きっと、これで良かったんだって……僕にはそう思えた。
なのに、涙が溢れて来るのはなぜだろう?
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