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手編みのセーター
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「それは犬にはもったいないな。」
不意に聞こえた声に振り向くと、そこには高橋君がいた。
ちょっと変わった人っていうのか、よくわからない人で、同じクラスなのに、私はほとんどしゃべったことがない。
「へぇ…手編みのセーターねぇ…今時、珍しいな。
でも、良い色じゃないか。
それに、けっこう上手に出来てるな。
どれどれ。」
高橋君は、杉浦君からセーターを奪い取り、学ランを脱いでそれを着る。
「おぉ、ぴったりじゃないか。
それに、これ……すっごく温かい。
なぁ、穂波…これ、俺にくれよ。」
「え……私は良いけど……」
ちらっと杉浦君を見たら、彼は微かに微笑んで立ち上がった。
「あ~あ、ゴン太のなのに。
……ま、いいや。」
そう言うと、杉浦君は教室を出て行った。
「ゴン太には俺がマットでも買ってやるか。
じゃ、穂波、ありがとな!」
高橋君も出て行って……
私もそこにいる理由はないから、家路に着いた。
馬鹿みたい…
こんなことしなければ、ずっと杉浦君のファンでいられたのに……
*
お母さんとお姉ちゃんに早速結果を聞かれた私は、喜んでもらえたって嘘を吐いた。
本当のことなんてとても言えない。
杉浦君は、明日、きっと山程プレゼントをもらうだろうから、私のセーターのことなんてすぐに忘れてくれるよね。
今日にしといて良かったよ。
私は明日はまた家族でクリスマスイヴを祝う。
もしかしたら、明日は杉浦君と…なんて、妄想もしてたけど、妄想は妄想でしかなかった。
やっぱり家族が一番だよ。
こんなことなら、あのセーター…お父さんにあげれば良かった……
あの毛糸代で家族にもっと良いプレゼントを買ってあげれば良かった……
悔しさや悲しさが全部後悔に変わってた…
*
「穂波、昨日はありがとうな。」
次の日の帰り、高橋君に声をかけられた。
「ううん。」
高橋君の気持ちがわからない。
なんで、わざわざそんなこと言ってくるのか。
だから、それ以上の言葉も出て来なかった。
「これ、すっごい温けぇな。
コートなんかよりずっとぽかぽかだ。」
「え…着てくれてるの?」
高橋君は、ボタンをいくつかはずし、セーターをちらっと見せてくれた。
「あ、これ…つまらないもんだけど……
じゃあ、な!」
「あ……!」
高橋君に押し付けられたのは小さな包み。
いかにもクリスマスっぽい包装がしてある。
気になって、家の途中の公園で私はさっきの包みを開いた。
「うわぁ…!」
それはとても綺麗なペンダントだった。
可愛い小鳥の絵が描かれてる。
でも、どうして、私が小鳥好きだって知ってるんだろう?
ペンダントと共に、小さなカードが入ってて、そこには「メリークリスマス!」という文字と彼のメアドが書いてあった。
次の年、高橋君と二人でクリスマスを祝うことになるなんて、この時の私は、知る由もなかった。
fin.
不意に聞こえた声に振り向くと、そこには高橋君がいた。
ちょっと変わった人っていうのか、よくわからない人で、同じクラスなのに、私はほとんどしゃべったことがない。
「へぇ…手編みのセーターねぇ…今時、珍しいな。
でも、良い色じゃないか。
それに、けっこう上手に出来てるな。
どれどれ。」
高橋君は、杉浦君からセーターを奪い取り、学ランを脱いでそれを着る。
「おぉ、ぴったりじゃないか。
それに、これ……すっごく温かい。
なぁ、穂波…これ、俺にくれよ。」
「え……私は良いけど……」
ちらっと杉浦君を見たら、彼は微かに微笑んで立ち上がった。
「あ~あ、ゴン太のなのに。
……ま、いいや。」
そう言うと、杉浦君は教室を出て行った。
「ゴン太には俺がマットでも買ってやるか。
じゃ、穂波、ありがとな!」
高橋君も出て行って……
私もそこにいる理由はないから、家路に着いた。
馬鹿みたい…
こんなことしなければ、ずっと杉浦君のファンでいられたのに……
*
お母さんとお姉ちゃんに早速結果を聞かれた私は、喜んでもらえたって嘘を吐いた。
本当のことなんてとても言えない。
杉浦君は、明日、きっと山程プレゼントをもらうだろうから、私のセーターのことなんてすぐに忘れてくれるよね。
今日にしといて良かったよ。
私は明日はまた家族でクリスマスイヴを祝う。
もしかしたら、明日は杉浦君と…なんて、妄想もしてたけど、妄想は妄想でしかなかった。
やっぱり家族が一番だよ。
こんなことなら、あのセーター…お父さんにあげれば良かった……
あの毛糸代で家族にもっと良いプレゼントを買ってあげれば良かった……
悔しさや悲しさが全部後悔に変わってた…
*
「穂波、昨日はありがとうな。」
次の日の帰り、高橋君に声をかけられた。
「ううん。」
高橋君の気持ちがわからない。
なんで、わざわざそんなこと言ってくるのか。
だから、それ以上の言葉も出て来なかった。
「これ、すっごい温けぇな。
コートなんかよりずっとぽかぽかだ。」
「え…着てくれてるの?」
高橋君は、ボタンをいくつかはずし、セーターをちらっと見せてくれた。
「あ、これ…つまらないもんだけど……
じゃあ、な!」
「あ……!」
高橋君に押し付けられたのは小さな包み。
いかにもクリスマスっぽい包装がしてある。
気になって、家の途中の公園で私はさっきの包みを開いた。
「うわぁ…!」
それはとても綺麗なペンダントだった。
可愛い小鳥の絵が描かれてる。
でも、どうして、私が小鳥好きだって知ってるんだろう?
ペンダントと共に、小さなカードが入ってて、そこには「メリークリスマス!」という文字と彼のメアドが書いてあった。
次の年、高橋君と二人でクリスマスを祝うことになるなんて、この時の私は、知る由もなかった。
fin.
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