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山茶花の咲く小路
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(俺って弱いな……)
こんなことはよくあることなのに…
いくら一生懸命やった所で、それがうまくいくとは限らない。
そんなこと、俺にだってわかってる。
だけど、今度の仕事は大袈裟に言うと命賭けてたし、自信もあった。
それだけに、認めてもらえなかった時はその反動が大きかった。
受け止められないくらいにショックが大きかったんだ。
がっくり来ると「肩を落とす」なんて表現されるけど、今の俺はまさにそんな状態。
もう顔を上げる元気もなくて、俯いてぼーっと道ばかりみつめながら、俺はあてもなく歩き続けていた。
(……あれ?)
空っぽの頭と心をひきずって、さんざん歩いて足の痛みを感じた頃…
俺は、地面がアスファルトじゃなくなっていることに気がついた。
はっと顔を上げ、あたりを見渡すとそこは全く見覚えのない場所で…赤い大きな花が道の両側にずらーっと並んで咲いていて、その香りなのか、なんだか甘い良い香りが漂っていた。
「あれ?あれ……ここってどこなんだ?」
不思議な道をしばらく進むと、ぽつんと小さな店があった。
店には「山茶花茶屋」と書いてある。
ずいぶんと古びた昔風の店だが、茶屋って書いてあるからにはなにか食べるものがあるはずだ。
ちょうど疲れて休みたいところだったから、俺は迷わずその店に入ることにした。
「いらっしゃい。」
ガラスの引き戸を開けて中に入ると、元気の良いおばあさんが出迎えてくれた。
店の中も、外観と同じく何十年か昔みたいな店だ。
「おやまぁ、また若い方だねぇ…」
「は?若いって…俺、もう三十過ぎてますよ。」
「若いじゃないか。
これからまだいっぱい出来る事があっただろうに……」
「なんですか、おばあちゃん…
まるで、俺が死んでしまうみたいなこと言って……」
「おまえさん……気付いておらんのか?」
おばあさんは、僕を憐れむような目でみつめる。
「……え?」
ど、どういうことだ?
確かに、見たことのない場所だけど……
それに、なんだかちょっと変わった場所ではあるけど……
え?…う、うそ!?まさか、まさか……
おかしな想像に、俺はだんだん不安が広がって……
「お、おばあちゃん、ここはどこですか?」
「どこって、山茶花茶屋じゃよ。
山茶花茶山にしたら面白かったんじゃが、さすがにそういうわけにもいかんと思って……」
「い、いえ、そういうことじゃなくて……
あの…おかしなことを聞きますが、ここは天国や地国じゃありませんよね?」
「天国や地獄?まさか……」
「ですよね。」
自分でも馬鹿馬鹿しい質問をしたもんだと、僕は照れ隠しにへらへらと笑った。
「天国に行くか、地獄に行くかを決めるのはこの道をもう少し進んだ先じゃ。」
「そうですか、もう少し進んだ……えええーーーーーっっ!!」
こんなことはよくあることなのに…
いくら一生懸命やった所で、それがうまくいくとは限らない。
そんなこと、俺にだってわかってる。
だけど、今度の仕事は大袈裟に言うと命賭けてたし、自信もあった。
それだけに、認めてもらえなかった時はその反動が大きかった。
受け止められないくらいにショックが大きかったんだ。
がっくり来ると「肩を落とす」なんて表現されるけど、今の俺はまさにそんな状態。
もう顔を上げる元気もなくて、俯いてぼーっと道ばかりみつめながら、俺はあてもなく歩き続けていた。
(……あれ?)
空っぽの頭と心をひきずって、さんざん歩いて足の痛みを感じた頃…
俺は、地面がアスファルトじゃなくなっていることに気がついた。
はっと顔を上げ、あたりを見渡すとそこは全く見覚えのない場所で…赤い大きな花が道の両側にずらーっと並んで咲いていて、その香りなのか、なんだか甘い良い香りが漂っていた。
「あれ?あれ……ここってどこなんだ?」
不思議な道をしばらく進むと、ぽつんと小さな店があった。
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ずいぶんと古びた昔風の店だが、茶屋って書いてあるからにはなにか食べるものがあるはずだ。
ちょうど疲れて休みたいところだったから、俺は迷わずその店に入ることにした。
「いらっしゃい。」
ガラスの引き戸を開けて中に入ると、元気の良いおばあさんが出迎えてくれた。
店の中も、外観と同じく何十年か昔みたいな店だ。
「おやまぁ、また若い方だねぇ…」
「は?若いって…俺、もう三十過ぎてますよ。」
「若いじゃないか。
これからまだいっぱい出来る事があっただろうに……」
「なんですか、おばあちゃん…
まるで、俺が死んでしまうみたいなこと言って……」
「おまえさん……気付いておらんのか?」
おばあさんは、僕を憐れむような目でみつめる。
「……え?」
ど、どういうことだ?
確かに、見たことのない場所だけど……
それに、なんだかちょっと変わった場所ではあるけど……
え?…う、うそ!?まさか、まさか……
おかしな想像に、俺はだんだん不安が広がって……
「お、おばあちゃん、ここはどこですか?」
「どこって、山茶花茶屋じゃよ。
山茶花茶山にしたら面白かったんじゃが、さすがにそういうわけにもいかんと思って……」
「い、いえ、そういうことじゃなくて……
あの…おかしなことを聞きますが、ここは天国や地国じゃありませんよね?」
「天国や地獄?まさか……」
「ですよね。」
自分でも馬鹿馬鹿しい質問をしたもんだと、僕は照れ隠しにへらへらと笑った。
「天国に行くか、地獄に行くかを決めるのはこの道をもう少し進んだ先じゃ。」
「そうですか、もう少し進んだ……えええーーーーーっっ!!」
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