1ページ劇場①

ルカ(聖夜月ルカ)

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夕立過ぎて

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駅に着く頃には、雨はだいぶ静かなものに変わっていた。



「どうもありがとうございました。助かりました。」

「あ、ちょっとこっちに付き合って下さい。」

「え?」


男性は私の腕を掴み、駅中のショッピングセンターに引っ張っていくから、私は少し怖くなった。



「好きなの選んで下さい。」

男性が私を連れていったのは、傘売り場の前だった。



「あ、あの…」

「……覚えてませんか?」

「え……?」

言われてみれば、この人の笑顔には見覚えがあるような……



「去年の今頃…傘を貸していただいたんですよ。
すごい土砂降りの日でね。」

「え……あ!あの時の……!」

あまり男性に傘を貸すことはないのだけど、この人は確か大きな封筒をいくつか抱えてて……
雨に濡れてそれが破れたりしたら大変だって思って貸したんだ……



「思い出しました!」

「あの時、あなたは家はすぐそばだっておっしゃったけど……もしかして、それは僕が気を遣わないように、そうおっしゃったんじゃないかって思って……
さっき、あそこであなたを見た時に間違いないって思いました。」

すべてを見透かされた私は苦笑いを浮かべるしかなかった。



「あの時は本当にどうもありがとうございました。
どうか、あの時のお礼をさせて下さい。」

私が遠慮しても彼は聞き入れてくれず、結局、私は紺色の紫陽花の模様の傘をかってもらった。



思いがけない再会と贈り物にまだ落ち着かないまま、男性と別れて外に出たらもう雨はすっかり上がってた。



(この傘だけは貸してあげられないな。)



電車に乗って、降りた最寄り駅から家までの短い距離……私は買ってもらったばかりの傘をさして、澄みきった空の下をゆっくりと歩いた。


家に着いたら、早速、彼にメールをしようと考えながら…… 
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