1ページ劇場①

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
203 / 239
赤い葉っぱ

しおりを挟む
「あ……」

 目の前をひらりと舞ったのは、紅葉の葉っぱ……



(もうそんな季節なんだな……)

 私は、ひざを曲げ、真っ赤な葉っぱを手に取った。


ここのところ、忙しいばかりで、季節のことを考える余裕すらなかった。
 朝早くに家を出て、空腹を抱えて帰って来るのは皆がそろそろ眠ろうかとする時間…
でも、こんなに働いても、少しも満たされることはない。
 年齢のことも考えて、もう少し、楽な仕事に転職しようかと考えたりしながら、なかなか踏ん切りもつかない。


 家に帰ると、早速、楽な部屋着に着替え、駅前で買って来たお弁当に手をつける。
お風呂からあがったら、いつものように軽い睡眠薬を口に含む。
 疲れてるはずなのに、なんだか不思議と眠れない…そんな日が続き、私は手っ取り早く眠る方法を選んだ。



 ***



 (……ん?)


 何かの物音で私の睡眠は邪魔された。
どうやら、音はベランダの向こう側…ガラスを叩くような変な音…でも、そんな所で何の音が?
ゆっくりと起き出し、私は恐る恐るカーテンを開いた。


 「わっ!」


 私は後ろ手にカーテンを閉じ、弾む息を整えた。


 確か、今、なにかがいた…下の方に…
そう…なんか茶色い動物……


もしかしたら、近所の犬が迷い込んだ??


 私はカーテンをゆっくり開けて、こっそりともう一度見てみた。


それは茶色い……アライグマ??
しかも、立ってガラスを叩いてる。


 (どうしよう?)


やっぱり近所の誰かのペットが逃げ出したんだ。
 私は動物は嫌いじゃないけど…でも、関わるのも面倒だ。
カーテンをまた閉めようとすると、アライグマはじっと私を見上げてた。
 思わず、可哀想になって開けたくなったけど…でも、明日も早いしやっぱり関わるのはいやだと私は冷たくカーテンを引いた。


 「……やな奴……」

 「え?」

 再びベッドに横になった途端、聞き覚えのない声が響いた。


 (……やだ、寝ぼけてるんだ、私……)


 「無視すんなよ……」

 「え…!?」

ふと視線を落とすと、ベッドの傍にさっきのアライグマが立っていた。


 「な、なんで……」

 「開けてくれないから勝手に入って来た。」

 「え…な、な、な……」

アライグマが…アライグマが…勝手に部屋に入って、立って、喋ってる!!
 私は、どう反応すれば良いのかわからず、ただアライグマをみつめるだけだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...