1ページ劇場①

ルカ(聖夜月ルカ)

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鬼が来た!

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(……早すぎだろ……)


 私は、店頭に並ぶカレンダーに向かって、心の中で毒吐いた。


 秋分の日は過ぎたとはいえ、まだ暑い。
 行き交う人々も、まだ大半は半そでを着ている。
それなのに、もう来年のカレンダーだなんて……


(来年のことを話すと、鬼が笑うっていう諺はどうなったのよ。)


それにしても、今年もあっという間だった。
 年を取ると、時間の流れを早く感じるって言うけど、本当にその通りだ。
あっという間に一日が過ぎていって、当然のように一年もあっという間で……
特に変わったことなんて何もない同じような毎日の繰り返しだから、今日が何日で何曜日かってこともたまに間違えたりする始末……
そんな毎日の積み重ねがあっという間に一年に変わってる。


 (早い、早い…ついていけないよ。)


 心の中でぶつぶつと文句を言いながら、私は買い物を済ませて家に戻った。


 「ただ~いま!っと。」


 誰もいない家に私は声をかける。
 散らかった狭い台所…買って来たものを、ぎゅうぎゅう詰めの
冷蔵庫に無理矢理押し込む。


そこから続く部屋も酷いありさまだ。
いつも休みになったら片付けようと思うのに、休みになったらなったで漫画を読んだり、昼寝をしたりで無駄に過ぎてしまう。
 明日もきっと片付けられない。
 足で漫画本をかき分けて、私は、万年床の上に座った。


 (あぁ、疲れた……)


 買って来たお弁当を開けようとした時、不意に玄関のチャイムが鳴った。


 (もう…今座ったとこなのに…)


イラッとしながら私はゆっくりと立ち上がる。


 「はい。」

 「私よ、開けて。」

 (え?ま、まさか……)


 「お、おかーさん?」

 慌ててドアを開けると、そこにはおかあさんが立っていた。



 「もう~!こんなに汚くして!」

おかあさんの眉間に深い皺が刻まれる。


 「え……ど、どうしたの?
なにかあった?」

 「なにかあったじゃないわよ。」

あがってと言ってもないのに、お母さんは勝手に家の中に入り、あちこち見渡してはどんどん不機嫌な顔に変わっていく。


 「お、おかあさん、いつも年末なのに、どうして…」

 「お姉ちゃんから聞いたわよ。
あんた、ふだんはゴミ屋敷みたいにしてるって。」

そう言われて、先日、ここに来た姉がチクったんだと気が付いた。


 「おかあさん、しばらくここにいるから。
さ、今から片付けるわよ!」

 「そ、そんな…せめて明日にしない?
 今日は仕事だったし、まだ晩御飯も……」

 「今からです!」

 「は…はいっ!!」

くそぉ、あの馬鹿姉めが~!と、込み上げる怒りを必死に押さえ、私は足元の漫画本を拾い集めた。
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