1ページ劇場①

ルカ(聖夜月ルカ)

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甘酒をもう一杯

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「そりゃあね、私も専業主婦がいやなわけじゃないよ。
でもね、ヤスの給料だけでやっていけると思う?
あいつ、いやなことがあったらすぐやめるし、はっきりとは言わないけど、私より給料安いのは間違いないし。」

 「そ、そうなの?
あ、ちらし寿司、もっと食べてよ。」

 「食べてるわよ!
あ、麻美、甘酒、もう一杯ちょうだい!」

 「あ…ちょっと待ってね。」



 (なんで、甘酒……)


 台所に立ち…私は大きなため息を吐いた。
 今日は楽しいひな祭り…のはずが、ユキのせいで楽しくないひな祭りになってしまった。
まぁ、誘ったのは私だけど…
小さなおひな様を飾り…ちらし寿司にはまぐりのお吸い物、今年は甘酒まで手作りして、かなりテンションはあがってた。
だけど、そのテンションがすっかり下がったのはユキのせい。
ユキは最近彼氏のヤスさんからプロポーズされて、ヤスさんはユキに仕事を辞めて家にいてほしいと思ってるみたいなんだけど、ユキはそうしたくないらしく…それでもめてるみたい。
ここに来てから、ずっとその愚痴ばかり。


 (あ~あ、もうない……)


ちょっと多目に作ったはずだったのに、甘酒は残り少ない。
 私はまだ飲んでないっていうのに…
ユキの分を入れたら、あとは湯呑の半分にも満たない。
でも、ユキがこんなに何倍もおかわりするってことはうまく出来てたってことなのかな?


 「お待たせ。」

 私はユキの前に甘酒を差出し、私もわずかな甘酒を飲んでみた。
うん、けっこうおいしい。
ユキは、早速、ふーふーしながら甘酒をぐいぐいと飲み干す。


 「ねぇ…ユキって、前から甘酒好きだったっけ?」

 「……そうでもないよ。」

 「実はね、それ、私の手作りなんだ。」

 「えっ!そうなの?
……あぁ、だから……」

 「だから…って…何が?」

 「さっきから何倍も飲んでるのに、全然酔わないんだもん。
あんた、お酒の分量、間違えてるんじゃないの?」

 「えっ!?」

びっくりした。
だから、ユキはあんなに何倍も飲んでたの!?


 「ユキ~
 甘酒ってお酒は入ってないんだよ。」

 「えっ!どうして?
 甘酒っていうのに、なんでお酒が入ってないの?」

 「それは知らないけど…白酒はお酒だけど、甘酒はお酒じゃないんだよ。
だから、子供も飲むでしょ?」

 「そうなの!?」

 頭が良くて、てきぱきとなんでも出来るのに、どこか抜けてるユキらしい……


「じゃあ…ワインでも飲む?」

 「うん、飲む飲む!」

それから、私達はワインを開けて…
二人ともお酒には弱いせいか、なんとなく良い気分になってきて、馬鹿みたいに笑って…
ヤスさんの愚痴も全く出なくなった。


 (来年は甘酒はやめて、白酒を買っておこう…)

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