異能学園

摩天楼

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学園編・1年生

7・1年後

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「これが異能学園、ね…」 
 
雷句は異能学園の、威圧的な外見に圧倒された。

「狙うは特待生…、やってやるよ」

1年前では想像もできなかった、好戦的な笑みを浮かべてそう言った。
はもう何もできない轟々雷句じゃあない。レベルも上がった。技術も、度胸もだ。それでも足りない。---足りないものが多すぎる。

『異能学園』は、私立高校として創立された、『異能者を鍛えるための学校』だ。最初は政府も反対したが、国防にも関わることであり、また、アメリカなどの先進諸国には既にそういった学校があることから、最終的に許可が下りた。国からも援助金として、一部の国防費が当てられている。

この学校で、俺は生活を送るんだ---。そう思うと、感慨深いものがある。

(トニカクハイッテミヨウゼェ…)

なんとなく某ゲームを思い出して、シリアスさが失せてしまった。

学校の敷地に近づくと、俺と同じようにこの学校の試験を受ける学生たちが見える。

(みんな個性的な見た目だな…。)

雷句はそう思っているが、自分も常人とはかなりかけ離れた見た目になっている。
髪は黒の中に白が線のように混ざり、腕は拳に黒い雷を纏い、一部は雷と同化している。歩くたびにパリッという音と共に火花が散り、存在感をこれでもかと主張している。

…これで自覚ないとか、感性おかしいんじゃないだろうか。

と、そんなことを考えていると、前から来た人に気づかなかったようで、肩がぶつかってしまった。制服を着ているので、この学園に入学する学生なのだろう。髪はアクアマリンのような色で、瞳も蒼い。容姿は整っているが、どこかのお嬢様だろうか?

「ああ、すまない…」

そう言って通り過ぎようとすると、その人物の取り巻きらしい男が、

「あぁ?てめえ、かのAランク異能持ちの『水蓮 氷華』様にぶつかっておいて、そんなチンケな謝罪はねえんじゃねえか?」

などと言ってきた。

…面倒ごとの予感しかしない。
まず第一に、なんで取り巻きみたいなのがいるのか。あと、【Aランク】という響きが嫌だ。突然強大な力を手に入れた一般人ってのは、どうにもつけあがって驕りたかぶるきらいがある。目の前の人物が、その限りでないことを祈るが…。

「おやめなさい、あなたたち」

口調からしてメンドクサイ感じがするよ…。

「何もできない弱者を虐めては、かわいそうでしょう?」

---ああ、ウザい。やっぱり分不相応な力は傲慢さを生む。魔物にならないんならそれでいいが、死ぬ時まで人を見下してるようなら---。間違いなく、こいつは【傲慢】の魔物になる。

適当に自分の無力さを思い知らせてやってもいいが、それをするにもどうも面倒だ。ここは通り過ぎるが吉。

「ああ、そうですね、だから弱者は大人しく退散するとしますよ」

そう言って去ろうとするが、

「待ちなさい。私にぶつかったのだから、少し頼みごとを聞いてくれるかしら?」

メンドクサイ…これは手ごわすぎる…。
だが、ここで断る方が後々もっと面倒なことになりそうだ。

「まあ、いいですけど…。なんです?その『頼みごと』とやらは」

「ふっ、では要件を言うわ。




---私と決闘しなさい」



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