極悪な悪役貴族に転生したが、最弱設定の操作魔法を過剰な努力で極めて作中最強になる~俺を断罪するヒロインを助けたら、全員ヤンデレ化して離れない

青空あかな

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第59話:最下層①

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「いよいよ、最下層だな。気合入れていこう」
「はい、やっぱり緊張しますね」

 その後、俺とネリーは順調にダンジョンを進み、最下層の第七層に到達した。
 がらんとした、だたっ広い殺風景な空間。
 “怪異の迷宮”は特殊な構造をしており、最深部の前にボス部屋が三つある。
 その中から、どれか一つを選ぶのだ。
 魔力も体力も十分に残っている。
 このフロアにはボスしかいないので、気にせず全力を出せるぞ。
 俺たちは扉の前に進み、どれを選ぶか相談する。

「さて、問題はどれにするかだが……」
「選ぶ前にボス魔物の種類を確認しますか?」
「ああ、そうしよう」

 手の甲に描かれた紋章に魔力を込めると、空中に映像が映し出された。
 ボスは三種類いて、事前にその情報は生徒にも伝えられるという設定だ。
 鋭い角を持った鳥魔物の一角コンドル、騎士の亡霊である騎兵レイス、猛火をまとった狐型の魔物として知られる火狐……。
 いずれもD+~C級という強さだが、この段階まで進んだ原作主人公はストーリー通りでもだいぶ強くなっている。
 もちろん、他の生徒も成長しているので、二人一組ならどうにか倒せる相手だ。
 どれか一つを突破すれば攻略完了なのだが、どのボスが出現するかは部屋に入るまでわからず、そのランダム要素も楽しい一面だった。

「ネリーはどれにする? 俺は真ん中がいいかな」
「ギルベルト様、お待ちください。お父さんとお母さんに教えてもらった、秘伝のおまじないがあります。こういうとき、一番良いものを選べるのです」
「えっ、そんなのがあるの!?」
「はい。私もここぞという場面で使ってきました」

 ネリーは大変に自信ありげな顔で言う。
 彼女がそれほど強力なまじないを知っていたなんて、100周プレイした俺でも知らない設定だった。
 実際に、この世界で生きてみないとわからないこともあるな。

「ぜひ、そのまじないを使ってくれ」
「かしこまりました」

 ネリーは深呼吸すると扉に向かって指を差し、大きな声で言った。
 …………日本の小学生が言うようなセリフを。

「ど~れ~に~し~よ~お~か~な~、て~ん~の~か~み~…………」

 一文字ごとに指を差す場所を変え、ネリーは真剣な顔で選ぶ。
 お、おまじないって、これ?
 もっとこう……ファンタジーっぽい呪文とかじゃないの?

「…………い~う~と~お~り~! 右端にしましょう、ギルベルト様! この扉が一番いいです!」
「わ、わかった。ありがとう、ネリー。助かったよ」

 しばらく厳しい顔で選択がなされた後、結局右端となった。
 何はともあれ、最後の山場だ。
 気を抜かずに戦おう。
 俺とネリーは、そっと扉を押して中に入る。
 すぐ戦闘が始まってもいいように警戒して進むが…………フロアには何もいなかった。
 壁にかけられた松明が虚しく燃えるだけだ。
 いったいどうして……。
 慎重にフロアを進む中、ネリーも疑問そうに呟いた。

「まだ復活していないのでしょうか……」
「ああ、おかしいな。ボスがいないなんてこんなことは……」

 そこまで話したところで、急激に前世のゲーム知識が思い出された。
 ま、まずい……! これは……!
 思う間もなく、中央の空間が白く輝き始めた。
 俺は急いでネリーの前に出る。

「俺の後ろに下がれ、ネリー!」
「ギ、ギルベルト様、何が起きているんですか!?」

 十秒も経たぬうちに光は消え、それは姿を現した。
 右手には巨大な剣を携え、大きさは3mほどもあり、鈍く光る金属に包まれた鎧騎士のような全身は松明の光をぬめりと反射する。
 人型の風体だが、頭はまるで獅子のようだ。
 現れたのは……A級魔物のワーライオン。
 レベルはおよそ60~65の、攻防一体の強敵だ。
 事前に知らされた三種類のボス魔物ではない。
 想定外の強敵の出現に傍らのネリーは息を呑んだが、俺はこいつが出現した理由を知っている。

「な、なんで……A級魔物が……」
「こいつは“特異魔物”だよ。……“ダンジョン変動”が起きてしまったんだ」
「そ、そんな……」

 “ダンジョン変動”はその名の通り、難易度が変動する現象だ。
 “怪異の迷宮”は学園が管理しているが、本来のダンジョンとしての特性も色濃く残る。
 そのため、ボスが本来の敵ではなく、数段階強力な魔物が現れることもあった。
 原作では、極めて低確率でこのワーライオンが出現するのだ。
 運悪く、俺たちは遭遇してしまったらしい。
 入ってきた扉も“ダンジョン変動”の影響で封印の魔法陣が展開され、硬く閉ざされる。
 あれを突破するのはさすがに時間がかかりそうだし、解除につきっきりになったら攻撃をまともに受けてしまう。
 となると、ワーライオンを倒すのが唯一の道だろう。

「ネリー、大丈夫だ。俺たちなら冷静に戦えば勝てる」
「か、勝てるわけありません……A級魔物なんて……」

 安心させるように言ったが、ネリーはワーライオンを見て震えている。
 無理もない。
 A級魔物の迫力は他の魔物とは桁違いだ。
 初めて見るのならば余計にそうだろう。
 原作では、ワーライオンとのバトルは“負けイベント”だった。
 あまりにもレベル差がありすぎるからだ。
 その事実を思い出したとき、ふと脳裏に浮かんだ。
 ここで負けたら、俺は……ネリーは死ぬのか……?

 ――ふざけるな。

 拳を硬く握る。
 “負けイベント”なんて、この俺が叩きのめす。
 ネリーを傷つけさせてたまるか。
 そう思い、ワーライオンに向かって勢いよく走り出した。
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