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第98話:自信過剰の冒険者、イキる
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ネオン一行が領地を出発した、ちょうどその頃。
北に出現したダンジョンの前でうろつく数人の若者がいた。
みな剣や槍、杖で武装しており、冒険者パーティーと容易に推測され、実際にそうだった。 減らず口を叩きながら、攻略の準備を進める。
メンバーは全部で四人おり、金髪の男――十八歳のマルクがリーダーだった。
三大超大国の出身者ではないが、各地を放浪するうちにネオン王国へと辿り着いたのだ。
マルクは愛用の長剣を撫でながら仲間に命令する。
「おい、お前ら、ちゃんと準備しろよ。探索中の荷物もお前らが持て。俺より等級が下なんだからさ。俺が常に活躍できるように配慮しとけ」
「「はい」」
マルクの命令に仲間は静々と従う。
彼はパーティーで一番強い、上級の冒険者だった。
仲間内で最も早く等級が上がり、ギルドの面々からも才能を認められている。
一刻も早く功績を挙げて、名誉と富を手に入れることで頭がいっぱいだ。
(この世の最強は……俺だ)
少しばかり強くなった者にありがちな、一種の全能感に酔いしれていた。
危険を顧みない冒険や探索もかなり多く、命を落としかけたことも一度や二度ではない。
いずれもたまたまた運が良く命が救われただけだが、マルクは自分の実力で切り抜けたと思い込んでいた。
(俺より強いヤツなんているわけねえ)
仲間はそんな彼の機嫌を損なわないよう気を遣い、言葉に気をつけ、態度に気を配り、一緒にいるだけで体力と気力が削られる毎日だ。
このダンジョン探索だって、できれば遠慮したかった。
仲間の一人が緊張した面持ちで語りかける。
「イキリーダー……じゃなくてマルクさん。やっぱり、このダンジョンは止めませんか? 明らかに今まで入った物とは違う雰囲気ですよ。めっちゃ強い魔物ばっかりかもしれません」
「ああ? 行くに決まってんだろ。俺を誰だと思ってやがる。こんな豪華なダンジョン見たことねえよ。きっとすげえお宝があるぞ。安心しろ。俺がどんな魔物もねじ伏せてやるからさ」
意気揚々とダンジョンに入るマルクに、仲間は小さなため息を吐きながら続く。
地下に繋がる入り口の門は無機質なことが多いが、このダンジョンには龍が飛ぶような細かい意匠が施されていた。
マルクは周囲を威嚇するため、わざと大きな音を鳴らしながら地下へと向かう。
不思議と整備されたような階段で歩きやすかった。
(俺より強い冒険者はいねぇ。超上級だろうが伝説級だろうが、俺が全部ぶち倒してやるよ。俺は天才なんだ)
マルクの心にあるのは慢心だけ。
伝説級の女性が三人も近づいていることはおろか、十二歳で神話級に至った少年が近づいていることさえ知る由もない。
そして、このダンジョンの難易度は桁違いだということも知らないのであった。
北に出現したダンジョンの前でうろつく数人の若者がいた。
みな剣や槍、杖で武装しており、冒険者パーティーと容易に推測され、実際にそうだった。 減らず口を叩きながら、攻略の準備を進める。
メンバーは全部で四人おり、金髪の男――十八歳のマルクがリーダーだった。
三大超大国の出身者ではないが、各地を放浪するうちにネオン王国へと辿り着いたのだ。
マルクは愛用の長剣を撫でながら仲間に命令する。
「おい、お前ら、ちゃんと準備しろよ。探索中の荷物もお前らが持て。俺より等級が下なんだからさ。俺が常に活躍できるように配慮しとけ」
「「はい」」
マルクの命令に仲間は静々と従う。
彼はパーティーで一番強い、上級の冒険者だった。
仲間内で最も早く等級が上がり、ギルドの面々からも才能を認められている。
一刻も早く功績を挙げて、名誉と富を手に入れることで頭がいっぱいだ。
(この世の最強は……俺だ)
少しばかり強くなった者にありがちな、一種の全能感に酔いしれていた。
危険を顧みない冒険や探索もかなり多く、命を落としかけたことも一度や二度ではない。
いずれもたまたまた運が良く命が救われただけだが、マルクは自分の実力で切り抜けたと思い込んでいた。
(俺より強いヤツなんているわけねえ)
仲間はそんな彼の機嫌を損なわないよう気を遣い、言葉に気をつけ、態度に気を配り、一緒にいるだけで体力と気力が削られる毎日だ。
このダンジョン探索だって、できれば遠慮したかった。
仲間の一人が緊張した面持ちで語りかける。
「イキリーダー……じゃなくてマルクさん。やっぱり、このダンジョンは止めませんか? 明らかに今まで入った物とは違う雰囲気ですよ。めっちゃ強い魔物ばっかりかもしれません」
「ああ? 行くに決まってんだろ。俺を誰だと思ってやがる。こんな豪華なダンジョン見たことねえよ。きっとすげえお宝があるぞ。安心しろ。俺がどんな魔物もねじ伏せてやるからさ」
意気揚々とダンジョンに入るマルクに、仲間は小さなため息を吐きながら続く。
地下に繋がる入り口の門は無機質なことが多いが、このダンジョンには龍が飛ぶような細かい意匠が施されていた。
マルクは周囲を威嚇するため、わざと大きな音を鳴らしながら地下へと向かう。
不思議と整備されたような階段で歩きやすかった。
(俺より強い冒険者はいねぇ。超上級だろうが伝説級だろうが、俺が全部ぶち倒してやるよ。俺は天才なんだ)
マルクの心にあるのは慢心だけ。
伝説級の女性が三人も近づいていることはおろか、十二歳で神話級に至った少年が近づいていることさえ知る由もない。
そして、このダンジョンの難易度は桁違いだということも知らないのであった。
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『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』
※別サイトにも掲載しています。
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