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第14話:ご褒美
サリオン王国と同盟を締結し、先方の外交使節団が去った三日後。
ステラはリヴィエール公爵家の自室で、ティナとマチルダから毎日のように愛でられていた。
「この前はお疲れ様でしたね~。ステラお嬢様が通訳をすると聞いたときは、わたしは本当にびっくりしてしまいました。だって、赤ちゃんが通訳をするなんて聞いたことがありませんもの」
「あたいだってティナと同じように驚きましたよ。でも、さすがステラお嬢様です。あんなに難しい言葉を話してしまうなんて、帝国で一番の天才赤ちゃんですね」
「ありあと、うれちい」
赤ちゃんらしいたどたどしいお礼に、ティナもマチルダも蕩けてしまう。
条約締結の日は晩餐会に参加した後ステラはすぐに眠ってしまったため、お話できなくて寂しかったのだ。
ひとしきり大事に撫でられたところで、ティナが嬉しそうな顔で大きな紙箱を持ってきた。
星やハート、お菓子が印刷された綺麗な包装紙に包まれている。
中身はわからないのに、ステラはなぜかたちまち気持ちが高揚してしまった。
「なぁに、しょれ?」
「アイザック様からのプレゼントですよ~」
「パパしゃまからの!?」
嬉しさのあまり、ステラは美しい包装紙を勢いよく破いてしまう。
(あのパパ様がプレゼントをくれるなんて! なんだろう、本かな!?)
まったく予想もできなかった。
壊しかねない勢いで箱を開けると、ステラは喜びの声を上げてしまった。
「ちゅみきー!」
プレゼントは滑らかな手触りが赤ちゃんに優しい積み木のセットだった。
小さな円柱や立方体、三角柱に半球など多種多様な形が勢揃いしている。
いずれも誤飲防止の魔法がかけられており、間違えて口に入れてしまっても自動で外に飛び出すので安全だ。
瞳を輝かせるのはステラだけじゃなく、ティナとマチルダもそうだった。
「マ、マチルダさん、光積み木ですよ! まさか、実物を見れる日が来るとは……!」
「ああ、あたいもビックリさ! こんな物、公爵家でもないとお目にかかれないね!」
(心なしか、私以上に興奮しているような……)
驚きまくる二人から、ただの積み木ではないことがよくわかった。
「しょんなに、しゅごいちゅみきなの?」
「ええ、それはもちろんすごいです! ピースの中には魔力を生み出せる<魔生石>というとても珍しい魔石が入ってまして、積むたびに組み合わせによって違う色を見せてくれるんです。とても高い積み木なので、持っている人は少ないでしょう」
「手触りはスベスベで、帝国に住む赤ちゃんみんなの垂涎の的です! ……ああ、垂涎の的とは欲しくてしょうがないもの、という意味ですよ。あたいとしたことが時々、ステラお嬢様は赤ちゃんに見えないときがあるもので……」
マチルダの話に、ステラはハハハと苦笑いで答える。
積み木は手触りが柔らかく、赤ちゃんの手に優しく馴染んだ。
前世でも光る積み木自体はあったが、たいてい固い素材で作られていたと記憶する。
(光る木でできているなんてすごくファンタジーっぽい。さっそく積んでみよう!)
ステラは夢中になって積み木で遊ぶ。
屋根つきの小さな家を作ると、赤に緑、青、黄色と鮮やかに光り出した。
まるでイルミネーションのような輝きを受け、ステラはきゃっきゃっという可愛らしい笑い声を上げる。
(意外と楽しいかも! 積み木なんて子どもの遊びなのに、夢中になっちゃうのはどうして? ……そうか、今の私は赤ちゃんだからだ)
精神は大人でも、赤ちゃんの身体に引っ張られてしまうのだ。
続けて、自分だけで遊ぶのはもったいないと思い、身体に魔力を込めた。
「むむむ~! ……いっちょに遊ぼ!」
すぐさま、クローディとピュリティが現れ、光積み木に笑顔を浮かべる。
『アイザックからの贈り物だね。とても綺麗だよ』
『あたし、積み木で遊ぶの初めて。ステラちゃん、乗せるの手伝って』
一分も経たずに二匹は消えてしまうわけだが、ステラは大変に満足できた。
積み木遊びを再開したところで、彼女はふと気付く。
ティナとマチルダに積み木のピースを差し出した。
「二人もいっちょにあしょぶ?」
「「はい、ぜひっ!」」
ステラの「楽しいことを共有したい」という心の清らかさに当てられてしまい、二人はさめざめと涙を流した。
三人で一緒に遊び出したところで、部屋の扉が控えめに開けられた。
隙間から男が顔を出すと、ステラの瞳は煌めき、ティナとマチルダは大慌てで立ち上がった。
「……ステラはいるか?」
「パパしゃま、お帰りなさい!」
ステラは積み木を握ったまま、とたたたっと駆け寄る。
なんと、現れたのはアイザックだった。
(通訳の一難が去った後は、結局あまり会わない生活になると思っていたのに!)
正直それほど期待していなかった故に、再会の喜びはひとしおだ。
足下から見上げるアイザックは何も言わない。
彼は今ちょうど来たような顔をしているが、実際は扉の向こうでステラの反応を窺っていたのだった。
いつも通りの塩対応かと思いきや、アイザックは重い口をゆっくりと開いた。
「どうやら、積み木は気に入ったようだな」
「はい! すごく楽しくてずっと遊んでいましゅ! パパしゃま、ありがとうございました!」
「帝都で流行の赤子向け玩具らしい。よくわからないので一番高価な物を飼ってきた」
この世界の玩具の相場はわからないが、ティナとマチルダの反応を見るとかなり高い品なのだろうと想像ついた。
そして、彼女の想像通り、数ある赤ちゃん用玩具の中でも最高峰に高価な物だ。
ステラがぺこりと頭を下げたら、アイザックはわずかに自慢げな様子で口角を上げる。
(なんか、以前より丸くなった気がする)
義娘になった直後は、両者の間に見えなくも分厚い壁があった。
完全に無くなったとはまだ言えないが、もうずいぶんと薄く低くなったのを感じる。
近いうちに全て消滅するだろう。
ステラはしばしアイザックの顔をぼんやり眺めていたが、ふと気付くことがあった。
「しょれはちゅまり、パパしゃまが選んでくれたのでしゅか?」
「うむ、そういうことになる」
アイザックは硬い表情のまま頷く。
屋敷の誰かに買いに行かせたのではなく、本人が自分で選んだ。
その事実を知ったステラは、喜びが何倍にも膨らむのを感じる。
感情を抑えることができず、アイザックの脚にむぎゅっとしがみ付いてしまった。
「パパしゃま、ありがとうございましゅ!」
「こ、こらっ、離れろっ」
無論、アイザックが訪れた玩具店は大騒ぎになった。
まさかあの"血塗りの宰相"が来るとは露ほども思わず、店主や店員、客たちは強い衝撃に襲われた。
なぜか赤ちゃん用の玩具を選ぶ彼の姿が信じられず、"血塗りの宰相"の訪問は幻という扱いで収まった。
当のアイザックはしばしステラを引き剥がそうとしては手を引っ込めていたが、やがて真っ直ぐに持ち上げた。
なぜか、抱っこはせず手を伸ばしきっている状態だ。
(そのまま、また抱っこしてくれてもいいのに……)
ステラは塩対応が始まったと思っていたが、アイザックは単に緊張しているだけなのだった。
「そういえば、お前は本が好きだったな。積み木より本の方がよかったか?」
「いいえ、積み木がよかったでしゅ! というより、パパしゃまからのプレゼントだったら何でもいいんでしゅ!」
自分のためにアイザックが何かを選んでくれる。
それだけで、ステラは嬉しくてたまらなかったのだ。
そんな彼女の本心が伝わったアイザックは、ふっと小さく笑った。
「……ありがとう、ステラ。そう言ってもらえると選んだ甲斐があるというものだ」
「おまけのご本があると、なおしゃら嬉しかったでしゅ。わたち、通訳頑張りまちた」
「ただし、あまり調子には乗らないように」
「むぅ……」
ステラが油断も隙も無いと心の中で静かに思ったとき、アイザックは何か思案する様子を見せた。
「いや、たしかにお前の活躍には目を見張るものがあったな」
(この流れはもしかして……?)
ワクワク感を出しすぎると無しになってしまうかもしれないので、ステラは気持ちを落ち着かせる。
だが実際は、さらなるご褒美を期待した彼女の目は光り煌めいていたのだった。
アイザックは軽く笑いながらため息を吐くと。ステラが願う通りの褒美を宣言する。
「褒美として、リヴィエール家の図書室に入る許可を与えよう。読みたい本を好きなだけ読めばいい」
「やっちゃあ!」
まさか、本当に図書室の入室許可とは思っておらず、ステラは短い両手で万歳して喜んだ。
その様子に幾分か満足したらしい声音で続けて告げられる。
「図書室は屋敷の北側にある。ティナかマチルダに連れて行ってもらいなさい」
ステラの世話は主に両人が行っている。
よって、二人に頼むのは特段おかしくはない。
むしろ自然なのだが、ステラはどうしてもお願いしたいことがあった。
「できれば……パパしゃまといっちょに行きたいでしゅ」
プレゼントで貰った積み木をもじもじと握りながら、彼女は嘆願する。
初めて行く念願の図書室。
(どうせなら、パパ様に連れて行ってもらいたい。でも、どうかな……)
拒否されるかと構えていたが、意外にもアイザックはこくりとうなずいたのだった。
「……わかった。今はちょうど時間がある。私と図書室に行くぞ」
「ありがとうございましゅ! パパしゃまといっちょ!」
抱っこして、と両手を上げたら、ぐいっと持ち上げられた。
(いよいよ、パパ様に日常的に抱っこされる瞬間が! ……来なかった)
アイザックが彼女を抱くことはなく、またもや手を伸ばした状態に落ち着く。
「では、後は頼むぞ」
いつもと変わらぬ調子で言われ、ステラはどこか歪な体勢で図書室に運ばれるのであった。
ステラはリヴィエール公爵家の自室で、ティナとマチルダから毎日のように愛でられていた。
「この前はお疲れ様でしたね~。ステラお嬢様が通訳をすると聞いたときは、わたしは本当にびっくりしてしまいました。だって、赤ちゃんが通訳をするなんて聞いたことがありませんもの」
「あたいだってティナと同じように驚きましたよ。でも、さすがステラお嬢様です。あんなに難しい言葉を話してしまうなんて、帝国で一番の天才赤ちゃんですね」
「ありあと、うれちい」
赤ちゃんらしいたどたどしいお礼に、ティナもマチルダも蕩けてしまう。
条約締結の日は晩餐会に参加した後ステラはすぐに眠ってしまったため、お話できなくて寂しかったのだ。
ひとしきり大事に撫でられたところで、ティナが嬉しそうな顔で大きな紙箱を持ってきた。
星やハート、お菓子が印刷された綺麗な包装紙に包まれている。
中身はわからないのに、ステラはなぜかたちまち気持ちが高揚してしまった。
「なぁに、しょれ?」
「アイザック様からのプレゼントですよ~」
「パパしゃまからの!?」
嬉しさのあまり、ステラは美しい包装紙を勢いよく破いてしまう。
(あのパパ様がプレゼントをくれるなんて! なんだろう、本かな!?)
まったく予想もできなかった。
壊しかねない勢いで箱を開けると、ステラは喜びの声を上げてしまった。
「ちゅみきー!」
プレゼントは滑らかな手触りが赤ちゃんに優しい積み木のセットだった。
小さな円柱や立方体、三角柱に半球など多種多様な形が勢揃いしている。
いずれも誤飲防止の魔法がかけられており、間違えて口に入れてしまっても自動で外に飛び出すので安全だ。
瞳を輝かせるのはステラだけじゃなく、ティナとマチルダもそうだった。
「マ、マチルダさん、光積み木ですよ! まさか、実物を見れる日が来るとは……!」
「ああ、あたいもビックリさ! こんな物、公爵家でもないとお目にかかれないね!」
(心なしか、私以上に興奮しているような……)
驚きまくる二人から、ただの積み木ではないことがよくわかった。
「しょんなに、しゅごいちゅみきなの?」
「ええ、それはもちろんすごいです! ピースの中には魔力を生み出せる<魔生石>というとても珍しい魔石が入ってまして、積むたびに組み合わせによって違う色を見せてくれるんです。とても高い積み木なので、持っている人は少ないでしょう」
「手触りはスベスベで、帝国に住む赤ちゃんみんなの垂涎の的です! ……ああ、垂涎の的とは欲しくてしょうがないもの、という意味ですよ。あたいとしたことが時々、ステラお嬢様は赤ちゃんに見えないときがあるもので……」
マチルダの話に、ステラはハハハと苦笑いで答える。
積み木は手触りが柔らかく、赤ちゃんの手に優しく馴染んだ。
前世でも光る積み木自体はあったが、たいてい固い素材で作られていたと記憶する。
(光る木でできているなんてすごくファンタジーっぽい。さっそく積んでみよう!)
ステラは夢中になって積み木で遊ぶ。
屋根つきの小さな家を作ると、赤に緑、青、黄色と鮮やかに光り出した。
まるでイルミネーションのような輝きを受け、ステラはきゃっきゃっという可愛らしい笑い声を上げる。
(意外と楽しいかも! 積み木なんて子どもの遊びなのに、夢中になっちゃうのはどうして? ……そうか、今の私は赤ちゃんだからだ)
精神は大人でも、赤ちゃんの身体に引っ張られてしまうのだ。
続けて、自分だけで遊ぶのはもったいないと思い、身体に魔力を込めた。
「むむむ~! ……いっちょに遊ぼ!」
すぐさま、クローディとピュリティが現れ、光積み木に笑顔を浮かべる。
『アイザックからの贈り物だね。とても綺麗だよ』
『あたし、積み木で遊ぶの初めて。ステラちゃん、乗せるの手伝って』
一分も経たずに二匹は消えてしまうわけだが、ステラは大変に満足できた。
積み木遊びを再開したところで、彼女はふと気付く。
ティナとマチルダに積み木のピースを差し出した。
「二人もいっちょにあしょぶ?」
「「はい、ぜひっ!」」
ステラの「楽しいことを共有したい」という心の清らかさに当てられてしまい、二人はさめざめと涙を流した。
三人で一緒に遊び出したところで、部屋の扉が控えめに開けられた。
隙間から男が顔を出すと、ステラの瞳は煌めき、ティナとマチルダは大慌てで立ち上がった。
「……ステラはいるか?」
「パパしゃま、お帰りなさい!」
ステラは積み木を握ったまま、とたたたっと駆け寄る。
なんと、現れたのはアイザックだった。
(通訳の一難が去った後は、結局あまり会わない生活になると思っていたのに!)
正直それほど期待していなかった故に、再会の喜びはひとしおだ。
足下から見上げるアイザックは何も言わない。
彼は今ちょうど来たような顔をしているが、実際は扉の向こうでステラの反応を窺っていたのだった。
いつも通りの塩対応かと思いきや、アイザックは重い口をゆっくりと開いた。
「どうやら、積み木は気に入ったようだな」
「はい! すごく楽しくてずっと遊んでいましゅ! パパしゃま、ありがとうございました!」
「帝都で流行の赤子向け玩具らしい。よくわからないので一番高価な物を飼ってきた」
この世界の玩具の相場はわからないが、ティナとマチルダの反応を見るとかなり高い品なのだろうと想像ついた。
そして、彼女の想像通り、数ある赤ちゃん用玩具の中でも最高峰に高価な物だ。
ステラがぺこりと頭を下げたら、アイザックはわずかに自慢げな様子で口角を上げる。
(なんか、以前より丸くなった気がする)
義娘になった直後は、両者の間に見えなくも分厚い壁があった。
完全に無くなったとはまだ言えないが、もうずいぶんと薄く低くなったのを感じる。
近いうちに全て消滅するだろう。
ステラはしばしアイザックの顔をぼんやり眺めていたが、ふと気付くことがあった。
「しょれはちゅまり、パパしゃまが選んでくれたのでしゅか?」
「うむ、そういうことになる」
アイザックは硬い表情のまま頷く。
屋敷の誰かに買いに行かせたのではなく、本人が自分で選んだ。
その事実を知ったステラは、喜びが何倍にも膨らむのを感じる。
感情を抑えることができず、アイザックの脚にむぎゅっとしがみ付いてしまった。
「パパしゃま、ありがとうございましゅ!」
「こ、こらっ、離れろっ」
無論、アイザックが訪れた玩具店は大騒ぎになった。
まさかあの"血塗りの宰相"が来るとは露ほども思わず、店主や店員、客たちは強い衝撃に襲われた。
なぜか赤ちゃん用の玩具を選ぶ彼の姿が信じられず、"血塗りの宰相"の訪問は幻という扱いで収まった。
当のアイザックはしばしステラを引き剥がそうとしては手を引っ込めていたが、やがて真っ直ぐに持ち上げた。
なぜか、抱っこはせず手を伸ばしきっている状態だ。
(そのまま、また抱っこしてくれてもいいのに……)
ステラは塩対応が始まったと思っていたが、アイザックは単に緊張しているだけなのだった。
「そういえば、お前は本が好きだったな。積み木より本の方がよかったか?」
「いいえ、積み木がよかったでしゅ! というより、パパしゃまからのプレゼントだったら何でもいいんでしゅ!」
自分のためにアイザックが何かを選んでくれる。
それだけで、ステラは嬉しくてたまらなかったのだ。
そんな彼女の本心が伝わったアイザックは、ふっと小さく笑った。
「……ありがとう、ステラ。そう言ってもらえると選んだ甲斐があるというものだ」
「おまけのご本があると、なおしゃら嬉しかったでしゅ。わたち、通訳頑張りまちた」
「ただし、あまり調子には乗らないように」
「むぅ……」
ステラが油断も隙も無いと心の中で静かに思ったとき、アイザックは何か思案する様子を見せた。
「いや、たしかにお前の活躍には目を見張るものがあったな」
(この流れはもしかして……?)
ワクワク感を出しすぎると無しになってしまうかもしれないので、ステラは気持ちを落ち着かせる。
だが実際は、さらなるご褒美を期待した彼女の目は光り煌めいていたのだった。
アイザックは軽く笑いながらため息を吐くと。ステラが願う通りの褒美を宣言する。
「褒美として、リヴィエール家の図書室に入る許可を与えよう。読みたい本を好きなだけ読めばいい」
「やっちゃあ!」
まさか、本当に図書室の入室許可とは思っておらず、ステラは短い両手で万歳して喜んだ。
その様子に幾分か満足したらしい声音で続けて告げられる。
「図書室は屋敷の北側にある。ティナかマチルダに連れて行ってもらいなさい」
ステラの世話は主に両人が行っている。
よって、二人に頼むのは特段おかしくはない。
むしろ自然なのだが、ステラはどうしてもお願いしたいことがあった。
「できれば……パパしゃまといっちょに行きたいでしゅ」
プレゼントで貰った積み木をもじもじと握りながら、彼女は嘆願する。
初めて行く念願の図書室。
(どうせなら、パパ様に連れて行ってもらいたい。でも、どうかな……)
拒否されるかと構えていたが、意外にもアイザックはこくりとうなずいたのだった。
「……わかった。今はちょうど時間がある。私と図書室に行くぞ」
「ありがとうございましゅ! パパしゃまといっちょ!」
抱っこして、と両手を上げたら、ぐいっと持ち上げられた。
(いよいよ、パパ様に日常的に抱っこされる瞬間が! ……来なかった)
アイザックが彼女を抱くことはなく、またもや手を伸ばした状態に落ち着く。
「では、後は頼むぞ」
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