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第1章
花言葉
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リヒトは何度目になるかわからないため息をついた。
場所はヒューマ邸の屋外の鍛錬場だ。
鍛錬をするために居るわけではなく、掃き掃除をするためにここに居る。
だがしかし、リヒトの足元には落ち葉や枯れ草はまだまだあり、先程から箒が動かされる気配は無い。
ため息ばかりが誰もいない鍛錬場に響き渡る。
「昨夜、シキとケンカでもしたんじゃな?」
「そうなんです、実は言い合いに……ってヒューマ殿、驚きました」
項垂れながら箒を抱き抱える後ろ姿を見て、いつの間にかヒューマが鍛錬場に足を踏み入れていた。
明後日には新節の宴を催すため、新節の前後数日は自警団も子どもたちも稽古はお休みだった。
ヒューマは連日若者たちへの稽古の指導をする傍ら、シキへの魔法の鍛錬も付き合ってくれていた。
「ヒューマ殿のおかげでシキも少しずつ魔法が扱えるようになってきたと聞いています、ありがとうございます」
「たいしたことはしておらんでの。シキが真面目にこつこつ努力してきた成果じゃよ。祖父母のところでよくよく言い聞かされておったのじゃろう、まだ幼いのに努力を厭わない、とても良い子じゃ」
「はい……」
リヒトが少し俯いたのをヒューマは一度頷いて、薄青の空を見上げた。
昨日のやり取りのすべてを話した訳では無いが、すべてを察したようにヒューマは語りかける。
「相手の為を思った言葉が、ときには相手を傷をつけることもあろう。お主はシキを思って、魔法の習得を最善と考えたのじゃろうが、シキ自身、それよりも大切なことがあったのじゃろうな」
「大切なこと……」
ヒューマはリヒトの肩をぽんと手を置く。じんわりとあたたかいヒューマの体温を感じ、ずいぶん自分が屋外の空気に冷やされていたことに気づいた。
「建前ばかりを並べる大人は好かれぬぞ。本当はあの子と過ごす時間を楽しく感じておったのじゃろう?」
「……それは――」
それはもちろんそうだ、と言葉には乗せなかったが、無言の肯定を受け取ったヒューマはにこりとこちらに笑みを向けたあと、そのまま邸へと帰って行った。
突然降って湧いた出会いだった。
一人で樹海暮らしを続けていくのだと決意していたところに、とつぜん共同生活を送る存在が現れたのだ。
自然と手を差し伸べて助けてしまった。そして感謝され、手伝いを買って出てくれたり、こちらの話に興味津々とした顔で頷いてくれるのだ。
冷えていた心があたたまるのに、そう時間はかからなかった。
「もう一度、きちんと話をしよう」
そう決めたリヒトは、手付かずでいた掃き掃除を終わらせるべく、動き始めた。
「おや、シキ様。このようなところにお一人で珍しいですね」
ヤツヒサが玄関までやってくると、上がり框に腰掛けて玄関先に置かれた枝を眺めているシキと出会った。
ヤツヒサ自身は玄関先に花を生けるべく、はさみと花瓶を持ってきていた。
玄関先にはつい先程ヤツヒサが庭木から採ってきた小ぶりな花がついた枝が何本か置かれている。
「ヤツヒサさん、これはなんていう植物?」
「これはウメです。あまり大きくない背丈の木が庭先に何本かあるかと思いますが、それがウメですよ」
シキによく見えるように枝を差し出す。
「特徴としては落葉の終わりごろに花を咲かせ、実りの季節のはじめごろに丸い実ができます。こちらの大陸ではユレの実に近いですね。カミユレの花と比べるととても小ぶりですけど」
「小さいお花、かわいいね」
「そうですね、私はこのウメの花がとてもすきです。この時期に花を咲かせると、ああもうすぐこの寒い季節がおわる、と思えるので」
「寒い時期に咲く花ってあまり無いよね」
「そうですね、全く無い訳では無いですが、ウメから徐々に他の花々が咲き始めるかと」
ヤツヒサは手馴れた様子ではさみでぱちぱちと枝をさらに剪定し、花を生けていく。
ヤツヒサは剪定した枝を一つ、シキへと差し出した。
小ぶりな花のついたそれを、シキは手に取って色んな角度から眺めながら、ヤツヒサがどのように生けるのかをつぶさに観察している。
ヤツヒサが生け終わり、はさみをかたりと置くまでシキは食い入るように見ていた。
「シキ様は知識を得ることがお好きなようですね」
「知らないこと、いっぱいあるから。新しいことを知るの、たのしいです」
「学ぶことはとても良いことですね」
ふふ、とヤツヒサは笑いかける。
「そんなシキ様に一つ知識を差し上げます」
「?」
なんだか楽しそうな様子のヤツヒサにシキは興味津々な様子で目を輝かせる。
「花々や草木には象徴的な意味を持つ言葉がそれぞれ付けられていることをご存知ですか?」
ふりふりと首を振るシキに頷き返すと、ヤツヒサはそっと先程生けたばかりのウメの花に触れた。
「私の故郷での白いウメの花には凛と咲きほこる姿から『高潔』という言葉や、まだまだ寒い中で花開くことを称えられ『忍耐』という花言葉が付けられているんです」
「花によってその言葉はちがうの?」
「ええ。花を贈る際に、花言葉を知っておくととても良いですよ」
「へぇ……!」
はた、とシキが何かに思い至ったのか、ヤツヒサの耳元に顔を寄せ、小声で何事かを伝える。
「ええ、ありますよ。今の季節でしたら恐らく北の森にもあるかと……」
「ほんとう!? ……森に行ってきても、いい?」
「もちろんです、私もよければご一緒しますよ。一度ヒューマ様に言伝をしてまいりますので、少しお待ちください」
ヤツヒサはにこりと笑うと、手早く周囲を片付け、ヒューマの部屋へと向かっていった。
しばらくの後、外套を持ったヤツヒサが玄関先に現れる。
そしてシキの前に屈むと、その首にふわりと赤色の毛糸で編まれたマフラーをかけた。
「昼過ぎとはいえ、まだまだ外は冷えますからね。こちらは差し上げますので、巻いて行きましょう」
「わあ、あったかい! ヤツヒサさん、ありがとう!」
「いえいえ。それでは参りましょうか」
稽古場の掃き掃除を終えたリヒトは邸の中に戻ると、ヤツヒサとシキは出掛けた後だという。
夕食までは時間があり、朝に干した洗濯物もまだ乾いてはおらず、一旦仕事は保留となった。
ヒューマは新節の宴で直接会えない遠方の知り合いのために文をしたためるとのことで、今日は書斎にこもりきりのようだ。
時間を持て余してしまったリヒトは、街へ繰り出すことにした。
あてもなく北区の住宅街からぼんやりと中央区への道を辿る。
家々は既に新節のための準備で、戸口にはさまざまな提灯が飾られていた。蝋燭はまだ灯されていなかったが、これが灯る夜には、それは幻想的な景色になることだろうと、二日後に迎える夜のことを考えた。
ふと蘇るのは、ずいぶんと昔。
リヒトがまだ幼少期の頃、ユーハイトで迎える初めての新節の宴を思い返す。
リヒトは父と二人暮しだった。
まだ上背が父の腰元に届くか届かないかの幼い頃、提灯のあかりのなか、父に手を引かれて歩いた。
まだまだ寒い気温だったはずだが、繋いでもらった手と、提灯からこぼれる蝋燭のやわらかな光が、とてもあたたかかったのを覚えている。
「(きっとシキもあの景色を見て、目を見開いて感動するのだろうな)」
そんなことを思い浮かべて、つい昨夜のシキとのやり取りを思い返してしまうのだった。
シキのほんとうにやりたいことも聞かずに、こうあるべきだという私の中の理想を押し付けてしまった。
あんなに悲しい顔をさせるつもりはなかった。
ただ、持って生まれてきた能力が生かせるなら、生かした方がいいと、そう思ったのだ。
それすらも理想論でしかないと、今は冷静に考えられる。
「(もう一度、落ち着いてシキの話がききたい)」
まだ明るい昼の道を歩いていると、花屋の前を通りかかった。
新節の前後は中央区の市場以外は店を休んでいるところが多い中で、こちらの花屋は今日も営業しているようだ。
「こんにちは、良い午後ですね。少し花を見ても?」
「こんにちは! どうぞご覧になって」
こじんまりとした店だったが、店番の奥様は元気に挨拶を返してくれた。
帳簿の計算をしているのか、奥のレジ台で眼鏡をかけて紙の束を何枚も見返している。
奥様の仕事の邪魔にならないように、店先の花を見させてもらうことにした。
落葉の季節に咲く、数少ない花々が並んでいる。芽吹きの季節に比べると、さすがに種類は少ないが、寒い季節でもじゅうぶんに楽しめる花々の種類だった。
鉢植えの棚や栄養剤の棚を眺めていたところで、リヒトの視線は止まった。
「(これは……)」
それを一つ手に取ると、リヒトは迷いなく店主がいるレジへと足を進めていた。
場所はヒューマ邸の屋外の鍛錬場だ。
鍛錬をするために居るわけではなく、掃き掃除をするためにここに居る。
だがしかし、リヒトの足元には落ち葉や枯れ草はまだまだあり、先程から箒が動かされる気配は無い。
ため息ばかりが誰もいない鍛錬場に響き渡る。
「昨夜、シキとケンカでもしたんじゃな?」
「そうなんです、実は言い合いに……ってヒューマ殿、驚きました」
項垂れながら箒を抱き抱える後ろ姿を見て、いつの間にかヒューマが鍛錬場に足を踏み入れていた。
明後日には新節の宴を催すため、新節の前後数日は自警団も子どもたちも稽古はお休みだった。
ヒューマは連日若者たちへの稽古の指導をする傍ら、シキへの魔法の鍛錬も付き合ってくれていた。
「ヒューマ殿のおかげでシキも少しずつ魔法が扱えるようになってきたと聞いています、ありがとうございます」
「たいしたことはしておらんでの。シキが真面目にこつこつ努力してきた成果じゃよ。祖父母のところでよくよく言い聞かされておったのじゃろう、まだ幼いのに努力を厭わない、とても良い子じゃ」
「はい……」
リヒトが少し俯いたのをヒューマは一度頷いて、薄青の空を見上げた。
昨日のやり取りのすべてを話した訳では無いが、すべてを察したようにヒューマは語りかける。
「相手の為を思った言葉が、ときには相手を傷をつけることもあろう。お主はシキを思って、魔法の習得を最善と考えたのじゃろうが、シキ自身、それよりも大切なことがあったのじゃろうな」
「大切なこと……」
ヒューマはリヒトの肩をぽんと手を置く。じんわりとあたたかいヒューマの体温を感じ、ずいぶん自分が屋外の空気に冷やされていたことに気づいた。
「建前ばかりを並べる大人は好かれぬぞ。本当はあの子と過ごす時間を楽しく感じておったのじゃろう?」
「……それは――」
それはもちろんそうだ、と言葉には乗せなかったが、無言の肯定を受け取ったヒューマはにこりとこちらに笑みを向けたあと、そのまま邸へと帰って行った。
突然降って湧いた出会いだった。
一人で樹海暮らしを続けていくのだと決意していたところに、とつぜん共同生活を送る存在が現れたのだ。
自然と手を差し伸べて助けてしまった。そして感謝され、手伝いを買って出てくれたり、こちらの話に興味津々とした顔で頷いてくれるのだ。
冷えていた心があたたまるのに、そう時間はかからなかった。
「もう一度、きちんと話をしよう」
そう決めたリヒトは、手付かずでいた掃き掃除を終わらせるべく、動き始めた。
「おや、シキ様。このようなところにお一人で珍しいですね」
ヤツヒサが玄関までやってくると、上がり框に腰掛けて玄関先に置かれた枝を眺めているシキと出会った。
ヤツヒサ自身は玄関先に花を生けるべく、はさみと花瓶を持ってきていた。
玄関先にはつい先程ヤツヒサが庭木から採ってきた小ぶりな花がついた枝が何本か置かれている。
「ヤツヒサさん、これはなんていう植物?」
「これはウメです。あまり大きくない背丈の木が庭先に何本かあるかと思いますが、それがウメですよ」
シキによく見えるように枝を差し出す。
「特徴としては落葉の終わりごろに花を咲かせ、実りの季節のはじめごろに丸い実ができます。こちらの大陸ではユレの実に近いですね。カミユレの花と比べるととても小ぶりですけど」
「小さいお花、かわいいね」
「そうですね、私はこのウメの花がとてもすきです。この時期に花を咲かせると、ああもうすぐこの寒い季節がおわる、と思えるので」
「寒い時期に咲く花ってあまり無いよね」
「そうですね、全く無い訳では無いですが、ウメから徐々に他の花々が咲き始めるかと」
ヤツヒサは手馴れた様子ではさみでぱちぱちと枝をさらに剪定し、花を生けていく。
ヤツヒサは剪定した枝を一つ、シキへと差し出した。
小ぶりな花のついたそれを、シキは手に取って色んな角度から眺めながら、ヤツヒサがどのように生けるのかをつぶさに観察している。
ヤツヒサが生け終わり、はさみをかたりと置くまでシキは食い入るように見ていた。
「シキ様は知識を得ることがお好きなようですね」
「知らないこと、いっぱいあるから。新しいことを知るの、たのしいです」
「学ぶことはとても良いことですね」
ふふ、とヤツヒサは笑いかける。
「そんなシキ様に一つ知識を差し上げます」
「?」
なんだか楽しそうな様子のヤツヒサにシキは興味津々な様子で目を輝かせる。
「花々や草木には象徴的な意味を持つ言葉がそれぞれ付けられていることをご存知ですか?」
ふりふりと首を振るシキに頷き返すと、ヤツヒサはそっと先程生けたばかりのウメの花に触れた。
「私の故郷での白いウメの花には凛と咲きほこる姿から『高潔』という言葉や、まだまだ寒い中で花開くことを称えられ『忍耐』という花言葉が付けられているんです」
「花によってその言葉はちがうの?」
「ええ。花を贈る際に、花言葉を知っておくととても良いですよ」
「へぇ……!」
はた、とシキが何かに思い至ったのか、ヤツヒサの耳元に顔を寄せ、小声で何事かを伝える。
「ええ、ありますよ。今の季節でしたら恐らく北の森にもあるかと……」
「ほんとう!? ……森に行ってきても、いい?」
「もちろんです、私もよければご一緒しますよ。一度ヒューマ様に言伝をしてまいりますので、少しお待ちください」
ヤツヒサはにこりと笑うと、手早く周囲を片付け、ヒューマの部屋へと向かっていった。
しばらくの後、外套を持ったヤツヒサが玄関先に現れる。
そしてシキの前に屈むと、その首にふわりと赤色の毛糸で編まれたマフラーをかけた。
「昼過ぎとはいえ、まだまだ外は冷えますからね。こちらは差し上げますので、巻いて行きましょう」
「わあ、あったかい! ヤツヒサさん、ありがとう!」
「いえいえ。それでは参りましょうか」
稽古場の掃き掃除を終えたリヒトは邸の中に戻ると、ヤツヒサとシキは出掛けた後だという。
夕食までは時間があり、朝に干した洗濯物もまだ乾いてはおらず、一旦仕事は保留となった。
ヒューマは新節の宴で直接会えない遠方の知り合いのために文をしたためるとのことで、今日は書斎にこもりきりのようだ。
時間を持て余してしまったリヒトは、街へ繰り出すことにした。
あてもなく北区の住宅街からぼんやりと中央区への道を辿る。
家々は既に新節のための準備で、戸口にはさまざまな提灯が飾られていた。蝋燭はまだ灯されていなかったが、これが灯る夜には、それは幻想的な景色になることだろうと、二日後に迎える夜のことを考えた。
ふと蘇るのは、ずいぶんと昔。
リヒトがまだ幼少期の頃、ユーハイトで迎える初めての新節の宴を思い返す。
リヒトは父と二人暮しだった。
まだ上背が父の腰元に届くか届かないかの幼い頃、提灯のあかりのなか、父に手を引かれて歩いた。
まだまだ寒い気温だったはずだが、繋いでもらった手と、提灯からこぼれる蝋燭のやわらかな光が、とてもあたたかかったのを覚えている。
「(きっとシキもあの景色を見て、目を見開いて感動するのだろうな)」
そんなことを思い浮かべて、つい昨夜のシキとのやり取りを思い返してしまうのだった。
シキのほんとうにやりたいことも聞かずに、こうあるべきだという私の中の理想を押し付けてしまった。
あんなに悲しい顔をさせるつもりはなかった。
ただ、持って生まれてきた能力が生かせるなら、生かした方がいいと、そう思ったのだ。
それすらも理想論でしかないと、今は冷静に考えられる。
「(もう一度、落ち着いてシキの話がききたい)」
まだ明るい昼の道を歩いていると、花屋の前を通りかかった。
新節の前後は中央区の市場以外は店を休んでいるところが多い中で、こちらの花屋は今日も営業しているようだ。
「こんにちは、良い午後ですね。少し花を見ても?」
「こんにちは! どうぞご覧になって」
こじんまりとした店だったが、店番の奥様は元気に挨拶を返してくれた。
帳簿の計算をしているのか、奥のレジ台で眼鏡をかけて紙の束を何枚も見返している。
奥様の仕事の邪魔にならないように、店先の花を見させてもらうことにした。
落葉の季節に咲く、数少ない花々が並んでいる。芽吹きの季節に比べると、さすがに種類は少ないが、寒い季節でもじゅうぶんに楽しめる花々の種類だった。
鉢植えの棚や栄養剤の棚を眺めていたところで、リヒトの視線は止まった。
「(これは……)」
それを一つ手に取ると、リヒトは迷いなく店主がいるレジへと足を進めていた。
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