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第7話 水鏡が映すもの
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アメリア様に渡されたナイフに怯む私。
血? 血を垂らすって何? このナイフで傷つけて血をこの水の中に垂らすって事?
私は渡されたナイフを凝視したまま固まってしまいました。
「そうよね。そんな事言われても自分で傷つけるなんて出来ないわよね。じゃあ、ちょっと目を瞑っててね」
そう言ってアメリア様は私の手からナイフを掴み取りました。
何が何だか分からないまま私はアメリア様の言葉に従います。
「ほら、早く目を瞑って」
その言葉に反射的に目を瞑る私。少し震えてしまったのは仕方がないと思います。
その瞬間指先に痛みが走りました。
「痛っ!」
目を開けると指先から血がポタポタと流れているのが見えたのです。
水面に広がる私の血に倒れそうになりましたが、黒の貴婦人が私の手を取った瞬間、指の傷が消えていたのです。
いったい何が起こったのでしょう? 私は驚くしか有りませんでした。
「ちょっと痛かったわね。ごめんなさいね。でもこれで貴女の記憶を見る事が出来るわ」
私の記憶……?
この方は何を言っているのでしょうか? それに私の指を一瞬で治したのはまさか……
「治癒魔法……?」
この国には魔法がありません。以前はこの国にも魔法が存在していたと言われていますが、それは伝説に過ぎないという説もあるのです。
だから、私は今起こった現象を俄には信じることが出来ませんでした。
「クスクスッ、いいえ魔法ではありませんわ。私は魔法は使えませんもの。最もこの国でももはや魔法が使える者は殆どいないようですが。これは冥界の神ハデス様から私が譲り受けた力。物体の時間を操作する力。だから、ちょっと治癒時間を早めただけよ。まあ、気にしなくても宜しくてよ」
えっ? 普通気にしますわよね。
アメリア様の感覚は理解できなかったけど、どうやら嘗てはこの国に魔法の存在があったらしいことは分かりました。
私はさっきまで血が流れていた指先を凝視しました。
治癒時間を早めたって言ってましたわよね。
人間には元々治癒能力が備わっているけど通常はこんな一瞬では治らないはずです。それを指が治癒する為の再生時間を早めたと言うことなのでしょう。
と何となく理解しました。
「あらあら、酷い男ねぇ」
アメリア様が水鏡を見ながら声を零しました。
水鏡には丁度私が殿下と侍女の逢瀬に出会った場面が映し出されていました。
「きっと、お二人は愛し合っているのだと思います。殿下は政略の為に仕方なく私と婚約したのです」
「リリアンナさんは心が綺麗なのねぇ。本当にこのお二人は愛し合っていると信じているのかしら?」
私は彼女の言葉の意味が分かりませんでした。
だって、あんな所で抱き合ってあんなに激しいキスをして、愛し合っているからそんなことが出来るのでしょう? 違いますの?
「ねぇ、リリアンナさん。リリアンナさんにはちょっとショックかも知れないけど、これも見て貰える?」
困惑している私にアメリア様が水鏡の表面に指をチョンと触れました。
すると水鏡に映し出されていた場面が変わったのです。
「ふふふっ、前もってこの男の血も手に入れておいて良かったわ」
この男の血?
水鏡に映し出されているのは上衣をはだけて男女が睦み合っている男女の姿。
場所は学園内の一室のようです。
男の方は殿下に間違い有りません。と言うことは事前に殿下の血を事前に手に入れていたと言うことでしょうか?
でも良く見ると男は殿下だけど、女は……あの侍女ではありませんわね。あの侍女は確か茶髪で……今映っているのは赤髪の女性だということが分かります。
黒の貴婦人がもう一度水鏡の表面を指で触れるとまた場面が変わりました。
また男女が絡み合っている場面で、一方が殿下、もう一方は亜麻色の髪の女性。
「これは……まさか……」
私は言葉を噤むしかありませんでした。あろうことか殿下は複数の女性と関係があるようです。
「この男は、欲望だけで人を愛することは出来ないのだと思いますよ。彼が一番愛するのはきっと自分自身だけなのでしょう」
彼女の言葉で私はここでやっと理解しました。
私にこの場面を見せたのは、きっと今から私がすることに罪悪感を抱かせない為なのでしょう。
血? 血を垂らすって何? このナイフで傷つけて血をこの水の中に垂らすって事?
私は渡されたナイフを凝視したまま固まってしまいました。
「そうよね。そんな事言われても自分で傷つけるなんて出来ないわよね。じゃあ、ちょっと目を瞑っててね」
そう言ってアメリア様は私の手からナイフを掴み取りました。
何が何だか分からないまま私はアメリア様の言葉に従います。
「ほら、早く目を瞑って」
その言葉に反射的に目を瞑る私。少し震えてしまったのは仕方がないと思います。
その瞬間指先に痛みが走りました。
「痛っ!」
目を開けると指先から血がポタポタと流れているのが見えたのです。
水面に広がる私の血に倒れそうになりましたが、黒の貴婦人が私の手を取った瞬間、指の傷が消えていたのです。
いったい何が起こったのでしょう? 私は驚くしか有りませんでした。
「ちょっと痛かったわね。ごめんなさいね。でもこれで貴女の記憶を見る事が出来るわ」
私の記憶……?
この方は何を言っているのでしょうか? それに私の指を一瞬で治したのはまさか……
「治癒魔法……?」
この国には魔法がありません。以前はこの国にも魔法が存在していたと言われていますが、それは伝説に過ぎないという説もあるのです。
だから、私は今起こった現象を俄には信じることが出来ませんでした。
「クスクスッ、いいえ魔法ではありませんわ。私は魔法は使えませんもの。最もこの国でももはや魔法が使える者は殆どいないようですが。これは冥界の神ハデス様から私が譲り受けた力。物体の時間を操作する力。だから、ちょっと治癒時間を早めただけよ。まあ、気にしなくても宜しくてよ」
えっ? 普通気にしますわよね。
アメリア様の感覚は理解できなかったけど、どうやら嘗てはこの国に魔法の存在があったらしいことは分かりました。
私はさっきまで血が流れていた指先を凝視しました。
治癒時間を早めたって言ってましたわよね。
人間には元々治癒能力が備わっているけど通常はこんな一瞬では治らないはずです。それを指が治癒する為の再生時間を早めたと言うことなのでしょう。
と何となく理解しました。
「あらあら、酷い男ねぇ」
アメリア様が水鏡を見ながら声を零しました。
水鏡には丁度私が殿下と侍女の逢瀬に出会った場面が映し出されていました。
「きっと、お二人は愛し合っているのだと思います。殿下は政略の為に仕方なく私と婚約したのです」
「リリアンナさんは心が綺麗なのねぇ。本当にこのお二人は愛し合っていると信じているのかしら?」
私は彼女の言葉の意味が分かりませんでした。
だって、あんな所で抱き合ってあんなに激しいキスをして、愛し合っているからそんなことが出来るのでしょう? 違いますの?
「ねぇ、リリアンナさん。リリアンナさんにはちょっとショックかも知れないけど、これも見て貰える?」
困惑している私にアメリア様が水鏡の表面に指をチョンと触れました。
すると水鏡に映し出されていた場面が変わったのです。
「ふふふっ、前もってこの男の血も手に入れておいて良かったわ」
この男の血?
水鏡に映し出されているのは上衣をはだけて男女が睦み合っている男女の姿。
場所は学園内の一室のようです。
男の方は殿下に間違い有りません。と言うことは事前に殿下の血を事前に手に入れていたと言うことでしょうか?
でも良く見ると男は殿下だけど、女は……あの侍女ではありませんわね。あの侍女は確か茶髪で……今映っているのは赤髪の女性だということが分かります。
黒の貴婦人がもう一度水鏡の表面を指で触れるとまた場面が変わりました。
また男女が絡み合っている場面で、一方が殿下、もう一方は亜麻色の髪の女性。
「これは……まさか……」
私は言葉を噤むしかありませんでした。あろうことか殿下は複数の女性と関係があるようです。
「この男は、欲望だけで人を愛することは出来ないのだと思いますよ。彼が一番愛するのはきっと自分自身だけなのでしょう」
彼女の言葉で私はここでやっと理解しました。
私にこの場面を見せたのは、きっと今から私がすることに罪悪感を抱かせない為なのでしょう。
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