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第一章 塔の上から見た異世界
47, 領主城訪問
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今日、私は再び異世界の町グランジェへ向かう。
師匠にワンピースを着て行くように言われた。
騎士たちが探しているのは黒髪ショートカットの女の子。
チュニックにズボンだと男の子に見えて、騎士がちゃんと私だと認識してくれない可能性があるからだ。
まあ、否定はできない。
ゲンはお留守番だ。まさかまだ子供といえど、町中に魔獣を連れて行くことなんてできないからね。
町に着いたら、ゲンのためにたくさん美味しいお肉を買ってくるとしよう。
私が出かけている間、ゲンは師匠のガーデンで自由に遊んでいてもらうことにした。
森よりも危険が少ないだろうし、お日様の下で過ごす方がゲンにとってもいい様な気がしたのだ。
朝ごはんとして、残っていた最後の一本のソーセージとお肉をゲンにあげ、お水を多めに入れた器も置いておく。
夕方までには帰ってくるつもりだから、これできっと大丈夫だよね。
「ゲン、少し出かけてくるから待っていてね。なるべく早く帰ってくるし、ゲンのために美味しいお肉も買ってくるから」
そう言ってゲンの頭を撫でると、「クゥイン」とちょっと寂しそうな鳴き声と共に、『ぼく、ちゃんとまってるよ』という心の囁きを感じた。
私が地下階段を降りていくと、赤い鳥が現れた。
『町までは妾も同行しよう』
「本当に? よかったぁ。いくら森の風景を投影できるといってもトロリー車に乗って地下通路を一人で行くのは心細かったのよ」
私は赤い鳥と共にトロリー車に乗り込んだ。
そこで、師匠は私から人形を奪った貴族令嬢カーラの元で何をしたのか説明してくれた。
『……と言うわけじゃ』
「……なるほど……本物の呪い人形が呪い人形の振りをしたということね」
『ミカ、妾は呪い人形ではない。呪いのせいで人形になった大魔女じゃ』
「はいはい、どっちでもあんまり変わらないじゃない」
『何を言っておる。大違いじゃ。呪い人形は最初から人形で、妾は元は人間で大魔女だったのじゃから』
まあ、そうなんだけど……なんだか、師匠を見ていると最初から人形の様に思えてくるのよ。
なんか、人形の姿が妙に馴染んでいると言うか……
「それにしてもそのカーラって子、師匠のせいでトラウマにならなきゃいいけど」
『既になっているようじゃな。なんせ今まで集めていた人形を手放すくらいじゃからな。まあ、妾の本体だけは手放そうとしても叶わないじゃろうが』
「うわぁ、師匠の本体ってまだ、カーラの部屋に滞在しているってこと」
『そうじゃ。売ろうとしても、捨てても、燃やしても、何をしてもいつの間にか戻ってきている人形じゃ』
私は師匠の話を聞いて、少しだけカーラが気の毒になった。
十歳の少女に植え付けられたトラウマは一生消えることはないかもしれない。
トロリー車が目的の場所に到着すると、赤い鳥が外に誰もいないことを確認してから通りに出た。
最初に来た時もそうすればよかったのに……と思いながら師匠の後をついていく。
『ミカ、こっちじゃ……』
「あれ? そっちの方向は……」
方向音痴の私でもなんとなく覚えている。
あの貴族令嬢カーラに師匠の本体を奪われた雑貨屋があった通りだった。
『町の騎士たちがミカのことを探して、この辺りをうろちょろしておるのじゃ』
師匠の声が聞こえてすぐに、茶髪頭の騎士の姿が見えた。
どうやら、町の人たちに聞き込みをしているらしい。
私は、その様子をじっと見つめた。
すると、その騎士は私の視線に気がついたのか、こちらを振り向いた。
おおっ、この人もイケメン!
つい、心の中でテンションが上がる私。”まほろば亭”で会ったエレクさんも顔がよかったけど、その騎士も全く負けていなかった。
さすが、顔面偏差値が高いと言われている異世界だ。
そんなことを密かに考えていると、その騎士はスタスタと私の方に歩いてきた。
「君、ひょっとして数週間前にカーラ様に人形を売った子じゃないかい?」
イケメン茶髪騎士は、私の前に立つとそう口を開いた。
今の言葉は、いかにも私が率先して売った様に聞こえるんだけど、納得がいかない。
「カーラ様? 私のお母さんの形見の人形を、無理やりお金を置いて持って行っちゃったあのお姉さんのこと?」
中身アラフォーの私は、見た目6歳児だということをいいことに涙目でそう言った。
騎士は顔を引き攣らせていたけど、幼い子供が本当のことを言うのを止められるはずもない。
私の言った言葉をさらっと流して、「カーラ様が君にその人形のお礼を言いたいから領主邸に招待すると言っているんだ」と私を促した。
いまさらお礼? と訝しんだ私だったが、どうせ何かと理由をつけて呼び出すための口実だろうと思い、とにかく師匠の本体を取り戻すことが優先だ、と割り切ってその騎士の後をついて行った。
騎士がどこからか魔導車を呼び寄せ、私に乗る様に促す。
……まさか、人攫いじゃないよね?
最初にこの町にきた時に攫われそうになったことを思い出し、躊躇する。
『ミカ、大丈夫じゃ。その騎士の言う通りにするのじゃ』
私が戸惑っているのを知ったのか、師匠の声が耳に届いた。
魔導車の乗り心地はかなりいい。
座席のクッションがフカフカだったこともあるだろうが、道がちゃんと整備されていたことが大きいだろう。
景色の流れが穏やかになり、魔導車がゆっくりと止まった。窓の外に広がるのは、これまで見たこともない壮麗な景色だった。
灰色の石で積まれた高い城壁。その上にそびえるのは、尖塔をいくつも抱えた荘厳な建物。
うぉぉぉっ! めっちゃお城だわ!
大通りから眺めた景色と違って迫力がある。
初めてのお城訪問に、私は内心ワクワクしたのだった。
師匠にワンピースを着て行くように言われた。
騎士たちが探しているのは黒髪ショートカットの女の子。
チュニックにズボンだと男の子に見えて、騎士がちゃんと私だと認識してくれない可能性があるからだ。
まあ、否定はできない。
ゲンはお留守番だ。まさかまだ子供といえど、町中に魔獣を連れて行くことなんてできないからね。
町に着いたら、ゲンのためにたくさん美味しいお肉を買ってくるとしよう。
私が出かけている間、ゲンは師匠のガーデンで自由に遊んでいてもらうことにした。
森よりも危険が少ないだろうし、お日様の下で過ごす方がゲンにとってもいい様な気がしたのだ。
朝ごはんとして、残っていた最後の一本のソーセージとお肉をゲンにあげ、お水を多めに入れた器も置いておく。
夕方までには帰ってくるつもりだから、これできっと大丈夫だよね。
「ゲン、少し出かけてくるから待っていてね。なるべく早く帰ってくるし、ゲンのために美味しいお肉も買ってくるから」
そう言ってゲンの頭を撫でると、「クゥイン」とちょっと寂しそうな鳴き声と共に、『ぼく、ちゃんとまってるよ』という心の囁きを感じた。
私が地下階段を降りていくと、赤い鳥が現れた。
『町までは妾も同行しよう』
「本当に? よかったぁ。いくら森の風景を投影できるといってもトロリー車に乗って地下通路を一人で行くのは心細かったのよ」
私は赤い鳥と共にトロリー車に乗り込んだ。
そこで、師匠は私から人形を奪った貴族令嬢カーラの元で何をしたのか説明してくれた。
『……と言うわけじゃ』
「……なるほど……本物の呪い人形が呪い人形の振りをしたということね」
『ミカ、妾は呪い人形ではない。呪いのせいで人形になった大魔女じゃ』
「はいはい、どっちでもあんまり変わらないじゃない」
『何を言っておる。大違いじゃ。呪い人形は最初から人形で、妾は元は人間で大魔女だったのじゃから』
まあ、そうなんだけど……なんだか、師匠を見ていると最初から人形の様に思えてくるのよ。
なんか、人形の姿が妙に馴染んでいると言うか……
「それにしてもそのカーラって子、師匠のせいでトラウマにならなきゃいいけど」
『既になっているようじゃな。なんせ今まで集めていた人形を手放すくらいじゃからな。まあ、妾の本体だけは手放そうとしても叶わないじゃろうが』
「うわぁ、師匠の本体ってまだ、カーラの部屋に滞在しているってこと」
『そうじゃ。売ろうとしても、捨てても、燃やしても、何をしてもいつの間にか戻ってきている人形じゃ』
私は師匠の話を聞いて、少しだけカーラが気の毒になった。
十歳の少女に植え付けられたトラウマは一生消えることはないかもしれない。
トロリー車が目的の場所に到着すると、赤い鳥が外に誰もいないことを確認してから通りに出た。
最初に来た時もそうすればよかったのに……と思いながら師匠の後をついていく。
『ミカ、こっちじゃ……』
「あれ? そっちの方向は……」
方向音痴の私でもなんとなく覚えている。
あの貴族令嬢カーラに師匠の本体を奪われた雑貨屋があった通りだった。
『町の騎士たちがミカのことを探して、この辺りをうろちょろしておるのじゃ』
師匠の声が聞こえてすぐに、茶髪頭の騎士の姿が見えた。
どうやら、町の人たちに聞き込みをしているらしい。
私は、その様子をじっと見つめた。
すると、その騎士は私の視線に気がついたのか、こちらを振り向いた。
おおっ、この人もイケメン!
つい、心の中でテンションが上がる私。”まほろば亭”で会ったエレクさんも顔がよかったけど、その騎士も全く負けていなかった。
さすが、顔面偏差値が高いと言われている異世界だ。
そんなことを密かに考えていると、その騎士はスタスタと私の方に歩いてきた。
「君、ひょっとして数週間前にカーラ様に人形を売った子じゃないかい?」
イケメン茶髪騎士は、私の前に立つとそう口を開いた。
今の言葉は、いかにも私が率先して売った様に聞こえるんだけど、納得がいかない。
「カーラ様? 私のお母さんの形見の人形を、無理やりお金を置いて持って行っちゃったあのお姉さんのこと?」
中身アラフォーの私は、見た目6歳児だということをいいことに涙目でそう言った。
騎士は顔を引き攣らせていたけど、幼い子供が本当のことを言うのを止められるはずもない。
私の言った言葉をさらっと流して、「カーラ様が君にその人形のお礼を言いたいから領主邸に招待すると言っているんだ」と私を促した。
いまさらお礼? と訝しんだ私だったが、どうせ何かと理由をつけて呼び出すための口実だろうと思い、とにかく師匠の本体を取り戻すことが優先だ、と割り切ってその騎士の後をついて行った。
騎士がどこからか魔導車を呼び寄せ、私に乗る様に促す。
……まさか、人攫いじゃないよね?
最初にこの町にきた時に攫われそうになったことを思い出し、躊躇する。
『ミカ、大丈夫じゃ。その騎士の言う通りにするのじゃ』
私が戸惑っているのを知ったのか、師匠の声が耳に届いた。
魔導車の乗り心地はかなりいい。
座席のクッションがフカフカだったこともあるだろうが、道がちゃんと整備されていたことが大きいだろう。
景色の流れが穏やかになり、魔導車がゆっくりと止まった。窓の外に広がるのは、これまで見たこともない壮麗な景色だった。
灰色の石で積まれた高い城壁。その上にそびえるのは、尖塔をいくつも抱えた荘厳な建物。
うぉぉぉっ! めっちゃお城だわ!
大通りから眺めた景色と違って迫力がある。
初めてのお城訪問に、私は内心ワクワクしたのだった。
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