逃れられない屋敷

Rose

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逃れられない屋敷

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山奥にひっそりと佇む古びた屋敷、その扉を潜った者は、決して逃れられないと噂を聞きつけ好奇心に駆られた大学生の3人が車を走らせていた。
『本当に行くのかよ、こんな場所』
後部座席の拓也が文句を言う。運転席の圭介がニヤリと笑い、助手席の由梨はスマホで地図を確認している。
『何か出るって噂なんでしょう?幽霊とか、消えた人の話とか、怖いけど面白そうじゃん』
その屋敷は幻の家と呼ばれていた。地図には載らず、道も不自然に消えていると言う。深夜に迷い込むと出てくると言われる屋敷だ。車は森の奥へと進んで行く。しばらくすると突然視界が開けた。そこには、噂通りの屋敷が鎮座していた。
2 玄関の扉は驚くほど簡単に開いた。中は暗く、湿っぽい匂いが漂っている。圭介が懐中電灯で照らすと古い家具や壁にかけられた肖像画が浮かび上がった。
『やめとけば良かったって言うの、まだ間に合うぞ』
拓也がぼそりとつぶやくが圭介は先へ進む。
『ビビってんのか?何もないだろ、どうせ』
由梨が足を踏み入れた瞬間、廊下の奥から、微かな声が聞こえた。
『・・・たすけて・・・』
3人は顔を見合わせた。
『今の聞いた?』
『誰かいるの・・・?』
圭介が声のする方へ進むと、一枚の扉が目に入った。ノブを握ると、冷たい感触が手に染みる。そこには➖➖➖
3  『逃れられないよ・・・』
薄暗い部屋の中央に、痩せ細った女が立っていた長い髪が顔を隠している。拓也が震える声で叫んだ。
『おい、何なんだよこれ・・・』
女がゆっくりと顔を上げると、その目には真っ黒な闇が広がっていた。次の瞬間、扉が勢いよく閉まり、3人の悲鳴が屋敷に響き渡った。
ドンドンドン!扉を必死で叩くが、びくともしない。部屋の中で、女がゆっくりと近づいてくる。
『逃れられない・・・逃れられない・・・』
壁には無数の手形と、血で書かれた文字が浮かび上がっていた。
・・・逃れられない・・・
由梨が絶叫しながら倒れ込んだ瞬間圭介と拓也も頭の中に異様な声が響いた。
『おまえたちもここにいるべきだ・・・』
4  翌朝、屋敷の前には無人の車だけが残されていた。森の中にその屋敷はもう見当たらず、地元の人間がポツリと呟いた。
『またか・・・逃れられない者達が増えたんだな』
それ以来、彼らの姿を見た者はいない。
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