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第1章 カイト、五歳までの軌跡
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(ダウニー率いるルーク団長と騎士団達)
「ダウニー様、ハァハァハァ………!馬の蹄の跡を見つけましたッ!」
息を切らしながらも、必死に走って報告してくれたのだな。
私に付いてきた騎士団たちは、“カイトを一刻も早く見つけたい”という私の焦りを、理解してくれてる、ありがたい。
「でかした。それはどこだ?」
騎士に案内され、森の奥へと移動する。
それは確かに、くっきりと残った馬の蹄の跡だ。
足踏みした形跡、その先はさらに森の奥へと続いている。
私はしゃがみ込み、馬の蹄の跡の深さを指でなぞる。馬の蹄の深さをだ。
重さ、速度、馬の状態………後で必ず役に立つはずだ。
「よし、この足跡で間違いない。追うぞ」
森は相変わらず口を閉ざしたまま。
だが、木漏れ日だけがポツポツと地面を照らしている。
その時――少し風が変わった。
少し湿り気を帯び、僅かだが温度が下がった気がする。
これは長年の経験からわかる。
……どこかで強い雨が降ってる。
「王都方面で雨が降っているな。」
この国ではよくある通り雨。
この湿り気は……………まずい。
もしこちらに流れてきたら、馬の蹄の跡が消えるぞ、急がなければっ。
そうなれば、カイトを追う手がかりが失われるぞ!
「不味いな………」
「ダウニー様?如何さいました?」
「ルーク、風を読め。王都方面で強い雨が降ったと思われる。もし雨雲がこっちに流れてきたら、蹄の跡が消えるぞ!」
「んっ!たしかに!それは不味いですね」
ルークも周辺の気配を探る。
ダウニー様の見立て通り、遠くで雨の気配がする。
「雨が来ると蹄の跡が分からなくなるぞ。急ぐぞ、ルーク」
「はい!」
気が急ぐ!しかし、焦って蹄の跡を見逃す訳にはいかない。
だから、慎重に――、だが、集中して、前へ進む。
しばらく蹄の跡を追っていたところだ。
「………しっ!停止だ。静かに!」
緊張が張詰める、喉がヒュウと鳴る。
「あれは?…………ゴリランの群れ!?」
ゴクッ!――騎士達が息を飲むのが伝わった。
あれが、カイト達を連れ去ったゴリランか…?
全員、息をするのを忘れるくらいの緊張が走る。
今は、………慎重に観察だっ!
木の物陰から、そっと様子を伺う。
年老いたゴリランに寄り添う若いオスのゴリラン。
一見、群れ………違うな。
周りには他のゴリランはいないようだ。
――いや、違う!
ぞわりと、背中に冷たいものが走る。
風がピタリと止んだ気がした。
まずいぞ、.........多分、私たちは、囲まれている。
油断したわけではないっ。
“奴らは音もなく近づき、気がつけば周りを固めている”と、報告書で何度も読んで知っている。
知っていたはずだが!
なのに、もう囲まれていた。
考えろ、考えるんだ、ダウニー。冷静になれ。カイトはゴリランの群れから襲われていなかった、さっき私がそう推測した。
それは、なぜだ?なぜ無事だった?
私たちは、この場をどう乗り切ればいい?
焦るが、私はあることに気づく。
あれ?ゴリラン達は、囲むとダンスを踊るんじゃないのか?
なぜ、踊らないんだ?
森の息遣いも、風の舞で葉がすれ違う囁きだけが聞こえる。刹那。
いつの間にか、年老いたゴリランと、それを支えるオスのゴリランの視線が刺さる。
私はまたしても失敗に気づいた。
風はあの2頭のゴリランの方へなびいている。つまり、風上に私たちがいるのだ。
私たちの気配と匂いが漏れている。
動物は匂いに敏感だ。
私たちがゴリランの群れに気づいた時点で、彼らにはとっくに気づかれていたんだ。
「オマエ、ニンゲンノコト、オナジ、ニオイガスル。」
匂い?人間の子、カイトか?
「ダウニー様、ハァハァハァ………!馬の蹄の跡を見つけましたッ!」
息を切らしながらも、必死に走って報告してくれたのだな。
私に付いてきた騎士団たちは、“カイトを一刻も早く見つけたい”という私の焦りを、理解してくれてる、ありがたい。
「でかした。それはどこだ?」
騎士に案内され、森の奥へと移動する。
それは確かに、くっきりと残った馬の蹄の跡だ。
足踏みした形跡、その先はさらに森の奥へと続いている。
私はしゃがみ込み、馬の蹄の跡の深さを指でなぞる。馬の蹄の深さをだ。
重さ、速度、馬の状態………後で必ず役に立つはずだ。
「よし、この足跡で間違いない。追うぞ」
森は相変わらず口を閉ざしたまま。
だが、木漏れ日だけがポツポツと地面を照らしている。
その時――少し風が変わった。
少し湿り気を帯び、僅かだが温度が下がった気がする。
これは長年の経験からわかる。
……どこかで強い雨が降ってる。
「王都方面で雨が降っているな。」
この国ではよくある通り雨。
この湿り気は……………まずい。
もしこちらに流れてきたら、馬の蹄の跡が消えるぞ、急がなければっ。
そうなれば、カイトを追う手がかりが失われるぞ!
「不味いな………」
「ダウニー様?如何さいました?」
「ルーク、風を読め。王都方面で強い雨が降ったと思われる。もし雨雲がこっちに流れてきたら、蹄の跡が消えるぞ!」
「んっ!たしかに!それは不味いですね」
ルークも周辺の気配を探る。
ダウニー様の見立て通り、遠くで雨の気配がする。
「雨が来ると蹄の跡が分からなくなるぞ。急ぐぞ、ルーク」
「はい!」
気が急ぐ!しかし、焦って蹄の跡を見逃す訳にはいかない。
だから、慎重に――、だが、集中して、前へ進む。
しばらく蹄の跡を追っていたところだ。
「………しっ!停止だ。静かに!」
緊張が張詰める、喉がヒュウと鳴る。
「あれは?…………ゴリランの群れ!?」
ゴクッ!――騎士達が息を飲むのが伝わった。
あれが、カイト達を連れ去ったゴリランか…?
全員、息をするのを忘れるくらいの緊張が走る。
今は、………慎重に観察だっ!
木の物陰から、そっと様子を伺う。
年老いたゴリランに寄り添う若いオスのゴリラン。
一見、群れ………違うな。
周りには他のゴリランはいないようだ。
――いや、違う!
ぞわりと、背中に冷たいものが走る。
風がピタリと止んだ気がした。
まずいぞ、.........多分、私たちは、囲まれている。
油断したわけではないっ。
“奴らは音もなく近づき、気がつけば周りを固めている”と、報告書で何度も読んで知っている。
知っていたはずだが!
なのに、もう囲まれていた。
考えろ、考えるんだ、ダウニー。冷静になれ。カイトはゴリランの群れから襲われていなかった、さっき私がそう推測した。
それは、なぜだ?なぜ無事だった?
私たちは、この場をどう乗り切ればいい?
焦るが、私はあることに気づく。
あれ?ゴリラン達は、囲むとダンスを踊るんじゃないのか?
なぜ、踊らないんだ?
森の息遣いも、風の舞で葉がすれ違う囁きだけが聞こえる。刹那。
いつの間にか、年老いたゴリランと、それを支えるオスのゴリランの視線が刺さる。
私はまたしても失敗に気づいた。
風はあの2頭のゴリランの方へなびいている。つまり、風上に私たちがいるのだ。
私たちの気配と匂いが漏れている。
動物は匂いに敏感だ。
私たちがゴリランの群れに気づいた時点で、彼らにはとっくに気づかれていたんだ。
「オマエ、ニンゲンノコト、オナジ、ニオイガスル。」
匂い?人間の子、カイトか?
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