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第1章 カイト、五歳までの軌跡
371
待て!!あのオスのゴリラン、今、人の言葉を喋ったのか?………話したよな?
もしかしたら、カイトを探す新たな手掛かりになるかもしれんぞ。
――さて、ここはどう出るが、正解か?
私の返すひと言が、私たちの生死を分けるかもしれない。
――考えるんだ、焦るな、ダウニー。
ゴクッ、私の背後から誰かが喉を鳴らした、緊張が空気を更に震わせる。
額に汗が滲む。手にはじっとり汗が滲み、喉が渇いて仕方がない。
だが、私が対峙しなければ、誰がする?
ここで間違えれば――終わる。
慎重に言葉を選ぶんだ。
私は意を決して、選んだ言葉を発する。
この返事が私たちの運命を決める。
「その人間の子は、私と似ていたか?」
カイトは私に似ていると言われる。
私よりは、カイトは中性的な顔だちをしているが、それは幼子特有のものだ。
髪色も容姿も、私の外観を受け継いでいる。
…………だから、大丈夫だろう。いや、多分大丈夫だ。
私の発した一言で、その場の空気が変わった。
同時に――ひゅ、と1つ強く風が吹いた。
それはまるで、私たちの緊張そのものを運び、ゴリランに届けたかのようだ。
若いオスのゴリランがこちらに、来るっ、と思ったら、地面が揺れるほどの衝撃と共に一瞬で距離を詰めてきた。ドスッン!
ツッ……!
早い、思ったより早い!!
私の胸を、強く締め付けられるほどの緊張が走る。
孤高の大魔神と呼ばれ、幾千の戦を渡り歩いたこの私が、
このゴリランが詰めてきた間合いに何の反応もできなかった。
――いや、違う。
“動いては行けない”
……………本能が告げたのだ。
ゴリランの目が私を射抜く。
全身を、汗がじわりと滲む。
「メノ、イロ、チガウ!!」
確かに、カイトの目の色はアマナの色!
まずい、失敗か?
やけに木々のざわめきが耳に届く。
…………どうする?
「ヤッパリ、アノコト、オナジ、ニオイ。オマエ、アノコノ、オヤ?」
「カミイロ、オナジ、ニオイ、オナジ。ダカラ、オマエ、アノコニ、チカイ、アル」
………認められた。
そう思った瞬間、胸が熱くなった。
そして僅かだが肩の力が抜けた。
ならば、問えるだろう。
「あなたが言う“人間の子”は私の子ども。子どもが居なくなったから、探している。その子どもは………どこに行ったか知ってるか?」
「ニンゲンノコ、チョーロ、タスケタ。
アコウノキニ、ツカマッテタ、チョーロ、タスケタ。ゴリラン、ヨロコブ。」
おぉぉぉ、そうか?カイトがチョーロっていう名前のゴリランを助けたのか。
だからカイトは助かったのかもしれん?
しかし、どうやってだ?
それは、分からない。
助けたのは、わかった。
………けど、それよりも、だ!
カイトの居場所は?行先は?
早る気持ちや焦りは…悟られてはならない。
この場は、ゴリランの話の続きを聞いた方がいいだろう。
「ゴリラン、ヨロコブ。
ゴリラン、オドル。
ゴリラン、ヨロコブ。
ゴリラン、オドッタ。
ニンゲンノコ、オドッタ。
ニンゲンモ、オドッタ。
カクレテタ、モウヒトリ、オドッタ。」
ん?ニンゲンノコは、カイトだな。
ニンゲンは、ハーレンか?
もう一人………?……誰かいたのか?
敵か?
私が思考の渦に巻き込まれている間に、ゴリランが円を作り出した、もしかしてダンスが始まる?
ズン!ズンズン!ウホッホッ!
ズン!ズンズン!ウホッホッ!
いや、なんだ?
腰に手をやり、腰を落として。
一歩、二歩歩く、立ち上がり胸を叩く。
これが、噂の!……ゴリラン、ダンス!
なんだ?なぜだっ!
ゴリラン達よ、なぜ私を見てる?
「コドモ、オドッタ。オマエ、オドル?
オドル、コドモ、オドッタ。ダカラ、オマエモ、オマエモ、オマエモ、ミナ、オドル。ヨイカ、ミンナ、ウホッホッ、スル」
私、ルーク、なんだ、私たちは皆、踊るように強要されているんだな。あれを…。
私の羞恥心なんて、軽いものだ。
カイトのため、カイトを救うためなのだ。
私は意を決して、ゴリランの輪に加わった。
ルーク、お前たちも早く輪に入るんだ。
私一人にするんじゃない。
私はルーク達を見回す。
その視線に答えるようにルークがひとつ頷いた。
「はい、ダウニー様。……意を決して私達も踊ります、踊りますとも!」
心を“無”して、踊ろうじゃないか。
ズン!ズンズン!ズンズン!ウホッホッ。
カイト!お前を助けるためなら、恥ずかしくないぞ、パパは踊るぞ、踊るからには楽しむぞ。そうだ!そうだ!
ズン!ズンズン!ズンズン!ウホッホッ。
ズン!ズンズン!ズンズン!ウホッホッ。
もしかしたら、カイトを探す新たな手掛かりになるかもしれんぞ。
――さて、ここはどう出るが、正解か?
私の返すひと言が、私たちの生死を分けるかもしれない。
――考えるんだ、焦るな、ダウニー。
ゴクッ、私の背後から誰かが喉を鳴らした、緊張が空気を更に震わせる。
額に汗が滲む。手にはじっとり汗が滲み、喉が渇いて仕方がない。
だが、私が対峙しなければ、誰がする?
ここで間違えれば――終わる。
慎重に言葉を選ぶんだ。
私は意を決して、選んだ言葉を発する。
この返事が私たちの運命を決める。
「その人間の子は、私と似ていたか?」
カイトは私に似ていると言われる。
私よりは、カイトは中性的な顔だちをしているが、それは幼子特有のものだ。
髪色も容姿も、私の外観を受け継いでいる。
…………だから、大丈夫だろう。いや、多分大丈夫だ。
私の発した一言で、その場の空気が変わった。
同時に――ひゅ、と1つ強く風が吹いた。
それはまるで、私たちの緊張そのものを運び、ゴリランに届けたかのようだ。
若いオスのゴリランがこちらに、来るっ、と思ったら、地面が揺れるほどの衝撃と共に一瞬で距離を詰めてきた。ドスッン!
ツッ……!
早い、思ったより早い!!
私の胸を、強く締め付けられるほどの緊張が走る。
孤高の大魔神と呼ばれ、幾千の戦を渡り歩いたこの私が、
このゴリランが詰めてきた間合いに何の反応もできなかった。
――いや、違う。
“動いては行けない”
……………本能が告げたのだ。
ゴリランの目が私を射抜く。
全身を、汗がじわりと滲む。
「メノ、イロ、チガウ!!」
確かに、カイトの目の色はアマナの色!
まずい、失敗か?
やけに木々のざわめきが耳に届く。
…………どうする?
「ヤッパリ、アノコト、オナジ、ニオイ。オマエ、アノコノ、オヤ?」
「カミイロ、オナジ、ニオイ、オナジ。ダカラ、オマエ、アノコニ、チカイ、アル」
………認められた。
そう思った瞬間、胸が熱くなった。
そして僅かだが肩の力が抜けた。
ならば、問えるだろう。
「あなたが言う“人間の子”は私の子ども。子どもが居なくなったから、探している。その子どもは………どこに行ったか知ってるか?」
「ニンゲンノコ、チョーロ、タスケタ。
アコウノキニ、ツカマッテタ、チョーロ、タスケタ。ゴリラン、ヨロコブ。」
おぉぉぉ、そうか?カイトがチョーロっていう名前のゴリランを助けたのか。
だからカイトは助かったのかもしれん?
しかし、どうやってだ?
それは、分からない。
助けたのは、わかった。
………けど、それよりも、だ!
カイトの居場所は?行先は?
早る気持ちや焦りは…悟られてはならない。
この場は、ゴリランの話の続きを聞いた方がいいだろう。
「ゴリラン、ヨロコブ。
ゴリラン、オドル。
ゴリラン、ヨロコブ。
ゴリラン、オドッタ。
ニンゲンノコ、オドッタ。
ニンゲンモ、オドッタ。
カクレテタ、モウヒトリ、オドッタ。」
ん?ニンゲンノコは、カイトだな。
ニンゲンは、ハーレンか?
もう一人………?……誰かいたのか?
敵か?
私が思考の渦に巻き込まれている間に、ゴリランが円を作り出した、もしかしてダンスが始まる?
ズン!ズンズン!ウホッホッ!
ズン!ズンズン!ウホッホッ!
いや、なんだ?
腰に手をやり、腰を落として。
一歩、二歩歩く、立ち上がり胸を叩く。
これが、噂の!……ゴリラン、ダンス!
なんだ?なぜだっ!
ゴリラン達よ、なぜ私を見てる?
「コドモ、オドッタ。オマエ、オドル?
オドル、コドモ、オドッタ。ダカラ、オマエモ、オマエモ、オマエモ、ミナ、オドル。ヨイカ、ミンナ、ウホッホッ、スル」
私、ルーク、なんだ、私たちは皆、踊るように強要されているんだな。あれを…。
私の羞恥心なんて、軽いものだ。
カイトのため、カイトを救うためなのだ。
私は意を決して、ゴリランの輪に加わった。
ルーク、お前たちも早く輪に入るんだ。
私一人にするんじゃない。
私はルーク達を見回す。
その視線に答えるようにルークがひとつ頷いた。
「はい、ダウニー様。……意を決して私達も踊ります、踊りますとも!」
心を“無”して、踊ろうじゃないか。
ズン!ズンズン!ズンズン!ウホッホッ。
カイト!お前を助けるためなら、恥ずかしくないぞ、パパは踊るぞ、踊るからには楽しむぞ。そうだ!そうだ!
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ズン!ズンズン!ズンズン!ウホッホッ。
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