塩しかない世界に転生したので、料理で無双しながら領地を発展させます

あんり

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第2章 物語は“影”の深層へ!

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(ケンブルク  レイ大佐side)

俺たちは、自分自身に起きた事が、今だ信じられなかった。

先の陣の奴らがマーシュ領に仕掛けたあと、捕まったらしい。

後の陣の俺らは、一時隠れていた。
先の奴らを捕まえた事で、戦が収まったとマーシュ領のやつらが油断している所を再襲撃して行く予定だった。
そして、俺たちの役目は、マーシュ領当主、ダウニーの妻と娘の奪取。

様子を伺い森に隠れること1週間。
持ってきた干し肉は、ちびちび食べてもうほとんどない。
隠れていることを悟られないようにするため、火は使えない。

そんな時だ、風に乗ってやってきたのは、わずかだが、なんとも美味そうな肉の匂いだ。
焼いている音がジュージュー聴こえそうなくらいに美味そうな匂い。

こ、これはっ。
奴らが食べているのか?

捕まった仲間も、もしかして?
―――恵んでもらって、いる?

まさかな。
捕まった仲間は、捕虜になっているはず。

もし、あの美味そうな肉を、仲間が、マーシュ領の奴らから恵んでもらっているなら―――ゴクッ。

喉が鳴る、そして腹が食わせろとグーグーと文句を言いやがる。
クソッ。

捕まってしまったと思われる仲間が、あの美味そうな肉を食っているかもしれない。
そう思うと、先の陣のやつらが羨ましくなった。敵に捕まっているのに、それが羨ましいと思ってしまう。
おかしいだろ?

だけど、それくらい俺たちは飢えているんだ。ずっとだ。もう何年も。
今まで、ろくに食べてねぇ。
腹いっぱいなんて、なった事ない。
生きるために塩だけの肉と、苦味のある植物を塩茹でした、そんなものを食べてきただけだ。
それで、何年も“生きてきた”んだ。

腹いっぱい食べたい。
その欲求は、ずっとずっと頭から離れない。ずっとずっと叶わぬ夢と諦めていた。

そんな中、我が王のただの私欲を満たすだけに放たれた我が国の奴らから聞かされた、イスカダル、マーシュ領の豊かな食事情。

そんな夢のような場所があるのか?
しかもそれが―――因縁の宿敵のいる場所、イスカダル、マーシュ領。

また、わずかに、微かに匂いがする。
美味いだろ、これは絶対にうまいだろ?
匂いを嗅ぎ、口内の唾液をゴクリと飲み込む。俺の周りの奴らも目が血走り、匂いを探している。鼻がヒクヒクしてやがる。

「レイ大佐、この匂いは腹に来ます。食べたことねぇが美味そうだと匂いでわかる。食いたくてしょうがねぇ」
「そうですよ、レイ大佐、俺は死ぬほど食いてぇ、なんの肉ですかね?」
「奴らの食料を奪っちいましょうよ、あれは絶対に美味い」
「たしか、マーシュ領は鳥を育ていると聞いたな。鳥に塩が合うらしい。何食べても美味いと感じない塩味がよ、あの鳥に塩ふりかけて食べると、最高に美味いらしいって、忍び込んでいた奴らが自慢してたぞ。くそっ、俺が忍び込んでいたら、この匂いの肉をたらふく食えたかもしれないっ」

部下の話を聞き、今凄く食べたくてたまらない。じゃあ、どうする?
答えは決まっている、奪えばいい。

そうして、1人、1人、マーシュ領に忍び込んでいく。商人や冒険者として紛れていくんだ。そして、夜中。奴らの手引きで侵入しよう。

そうして、今夜、計画を実行した。
ロープで捕まえるってな。
なあに、すぐに手に入れるさ。
俺たちは、ざっと500人だ。
あの鳥を狩るやつ、運ぶやつ。
だが、待ちきれない奴らだ。
みんな我先にと押しかけてきた。
わかるぜ、食べたい欲求は止まらねー。

鳥小屋に数十人で忍び込んだ。
月明かりで目が馴染んで見えてきた。
数人で、準備していた投げ輪を放つ。
コッココッココッコッ。
数匹捕まえたと思ったところだ。

「レイ大佐、まずいです。俺たち、鳥に囲まれてます…」

誰かが鳥に切りつけようと剣を振り下ろしたのが、戦いの始まりの合図。

肉、肉、肉だ。狩れ、狩れ、狩りまくれ。
剣を振るが、こいつらすばしっこくて、剣が当たらねぇ。
振り回された俺たちは、奴らからの蹴りの一撃が入る。吹っ飛ばされた時に聞こえた、ゴキッ。嫌な音だぜ、まさかな?

鳥たちが反撃してきた。
足蹴り、突つき。

なっ、なんだ。この強さは?
仲間が次々に声をあげる間もなく、足蹴りを喰らい、吹っ飛ばされていった。

唖然としてる間に、私は後ろから、思いっきり蹴りあげられたのだ。

ウグッフッ。
あちこちで上がる声無き悲鳴。
グフッ、ゴフッ、ガサッ、ドサドサドサ。
次々に吹っ飛ばされていく仲間を、俺も、同じく吹っ飛ばされながら、見てるだけしか無かった。

手も足も出ないとは、このことかっ。

薄れいく記憶の中、腹の痛みだけがズキズキと痛んだ。グホッ。ドサッ。

鳥の目が、勝ち誇っているようで、鳥にも勝てなかった俺たち。
無念、残念、断念だ。

………やつらには、勝てない。



気がついたのは、手を後ろに縄に縛られた辺りからだ。
周りの仲間も次々と縛り上げられていく。

真っ先に目に飛び込んできたのは、薄紫の髪、背の高い筋肉質で無駄のない体躯の美丈夫。

この10年、一度も忘れたことがねぇ。
思い出せば、やつにつけられた頬の傷が疼く。

あいつには、恨みがあるんだ。
この頬の傷も。
お前たちだけが何故、こうも恵まれているんだ。お前たちと、俺たちの―――何が違うってんだ。

くそっ、クソッ、くそーっ。
やり場のない怒りは、あいつを睨みつけ、恨みを口にするしか無かった。
顔が苛立ちで歪む。傷口もズキズキ痛む。

「お前らと、俺たちの何が違うんだ?」


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

こんばんは😆
第2章も読んで頂き、ありがとうございます。
今回は敵側の視線でした。

仕事が多忙なため、しばらくはゆっくりの更新になります。

あんり
感想 36

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