ヒーローズエイト〜神に選ばれし8人の戦士達による新八犬伝最強救世主伝説〜

蒼月丸

文字の大きさ
13 / 277
第一章 戦士達の集結

第十一話 皆からのエール

しおりを挟む
 大会での出来事から翌日、零夜は会社でこれまでの事を社長などに報告し終えた後、すぐに自身の業務に取り掛かっていた。
 会社内では彼が選ばれし戦士として異世界に行く事で話題となっていて、皆が彼に視線を合わせながら注目していた。

「まさか東が異世界に行くとはな」
「ああ。我が社の誇りで憧れの存在になれるかもな!」
(おいおい……勘弁して欲しいぜ……)

 社員達の噂話に零夜が心からため息を付きながらうんざりしていた。そりゃ噂が広まれて話さえすれば、勘弁して欲しいと思う事も無理ないだろう。
 すると、一人の男が零夜の肩をポンと叩いて話しかけてきて、それに零夜はいきなりビックリしてしまう。

「うおっ!三上!?」
「東!お前、異世界に行くなんて凄いな!」

 同僚の三上晴哉みかみはるやが零夜に声を掛け、彼は苦笑いをしながら返すしかなかった。
 黒い短髪の三上は零夜とは一つ年上だが、同じ会社に入ったのは同日である。

「大した事ないよ。選ばれたのは驚いたけど、俺なりに頑張って必ず帰るから」
「けど、あまり無理するなよ。社長から期待の星だと言われているからな」
「大丈夫。この事については慣れているし、諦めの悪さは無限大だからさ」

 晴哉からのアドバイスに零夜は笑顔で応えた後、今やるべき事を終わらせる為にパソコンの入力業務を再開した。



 同時刻、渋谷にあるダンススタジオでは、ダンス仲間がミミが異世界に行く事を知り、次々と彼女の元に駆け寄っていた。
 ミミが選ばれし戦士の一人となった事に皆は驚きを隠せなかったのも無理はなく、皆が彼女の周りに集まっていた。

「ミミ、あなたも異世界に行く事になったのね。しかもヒカリさんと共に行くなんて……」
「うん。久々だけど、異世界は初めてだからね。まあ、不安な事もあるのは分かるわ」

 ミミが仲間との話で苦笑いしながら返す中、仲間の一人である住吉すみよしココアが彼女の手を取る。
 彼女は黒い三つ編みツインテールがトレードマークで、へそ出しルックのカーゴパンツを履いていた。

「必ず無事に帰ってきてね。私達は信じているから!」
「ええ!」

 ココアからの笑顔のエールに、ミミは笑顔で返しながら帰って来る事の約束を交わした。



「とうとう藍原もその時が来たな」

 ドリームバトルレスラーズの道場では、倫子の話に雷電は勿論、黒田などの他のレスラー達も頷いていた。
 プロレスラーである倫子が選ばれし戦士となった事は団体にとっても名誉な事であり、何よりも彼女が新たな物語を切り開くと信じているからだ。

「ドリームバトルレスラーズの件は俺達に任せろ。お前は自分自身の物語を切り開いて、必ず無事に帰って来てくれ」
「必ず約束を守ります」

 倫子が雷電に対して真剣な表情で一礼した後、彼女の師匠である黒田が真剣な表情で彼女の両肩を掴む。

「藍原。お前は新たな仲間と共に旅立つが、成長した姿を俺達に見せてくれ。待っているからな」
「はい……!」

 黒田からの笑顔のエールに、倫子は涙を流しながら一礼をした。
 倫子は泣き虫の性格もあるので、師匠である彼からのエールを受けた以上は泣かずにはいられなかったのだろう。



「そうか……ヒカリちゃんが異世界に向かうのか……」

 日本放送局のスタジオでは、ディレクター達がヒカリの話を聞き、納得の表情をしていた。
 まさか歌のお姉さんが選ばれし戦士の一人として活躍する事は前代未聞だが、皆は彼女の活躍を信じているからこそ、この様になっている。

「はい。自らの意思で決めました。選ばれし戦士である以上は戦う覚悟です!」
「なら、僕達は君の物語を応援するよ。お姉さんについては後任を用意しておくから」
「必ず生きて帰る事を応援しています!」
「……はい!」

 仲間達からのエールを受けたヒカリは、涙を流しながらも笑顔で応える。それと同時に自らの新たな挑戦に意気込みを入れていた。



 その日の夕方、アパート前では美津代がいつもの様に掃除を終えていた。すると夕暮れの空を見上げたと同時に心配そうな表情をしていた。
 そう。同じアパートの住人である零夜が選ばれし戦士として異世界に行く事になり、彼女は心配そうにため息をついていた。すると、零夜がスーツ姿のままアパートに帰ってきた。

「只今戻りました」
「お帰り、零夜君。まさか異世界に向かうなんて驚いたわ」
「ええ。四日後には出発する事になります」

 零夜が笑顔で美津代に対してニコッと応える中、彼女は不安な表情をしながら彼に視線を移す。

「どうしたのですか?」

 零夜が気になって心配そうな表情をしたその時、突然美津代が零夜を強く抱きしめ始めた。

「美津代さん!?」

 突然の展開に零夜が慌てる中、美津代は彼の胸の中で涙を流していた。
 その様子からすると零夜が遠くに行ってしまうのが辛くてたまらないだろう。

「……離れ離れになるけど……必ず……帰って……来るよね……?私、心配で……うええ……」

 ヒックヒックと美津代が泣いてしまい、彼と離れたくない気持ちがますます強くなっていく。すると零夜は優しい表情で彼女の頭を優しく撫で始めた。

「大丈夫ですよ。帰るのが何時になるのかは分かりませんが、俺は必ず戻る事を約束します!」
「零夜君……約束だからね……」
「ええ」

 美津代は零夜の胸の中ですすり泣きながら、彼が帰ってくる事を約束し、ずっと待つ事を決意した。
 美津代が泣き止むまで数分かかり、ようやく落ち着いたと同時に零夜から離れた。

「ごめんね、いきなり泣いちゃって」
「別に大した事無いので大丈夫ですよ」

 美津代は涙を拭いながら突然泣いてしまった事を謝罪するが、零夜は苦笑いをしながら大丈夫だと返していた。いきなり泣くのは驚いてしまったが、零夜は女性の面倒を見るのが得意なのでこのぐらいなら問題ないだろう。
 すると美津代は急にあるアイデアを思い浮かべた。

「そうだ。異世界に行く前日、零夜君達の壮行会をしようと思っているの。異世界に向かう前に思いっきり楽しめば、不安もすぐに吹き飛ぶわ」

 美津代からの提案を聞いた零夜は、笑顔ですぐに賛同する。退職する前にも送別会が行われるのは当然の事であり、この事に関しては断るわけにもいかないのだ。
 
「ええ。では、場所については居酒屋『食い倒れ』にしましょう!皆にも連絡しておきます!」
「ええ!会場の予約はしておくわね!」

 零夜はすぐにミミ達にグループチャットで壮行会の連絡を始め、美津代も居酒屋『食い倒れ』に連絡して会場の予約を取り始めた。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...