ヒーローズエイト〜神に選ばれし8人の戦士達による新八犬伝最強救世主伝説〜

蒼月丸

文字の大きさ
83 / 277
第三章 花咲くロベリア革命

第八十一話 零夜と倫子のスキンシップ

しおりを挟む
 零夜達は孤児院を後にして宿屋へと向かっているが、彼は怒っている表情をしていた。ロベールの行為があまりにも許せなくて、こうなるのも無理はない。

「あのまま孤児院にいたら、ロベールが黙っていられないだろうな。宿屋に向かったのは正解と言えるだろう」
「それに俺達はシュヴァリアからの頼みを優先しないといけないし、シスターコルディからの依頼をこなせなければならないからな」

 トラマツとノースマンの意見に零夜は頷きながら同意し、ミミ達は不満な表情をしていた。任務優先なので仕方がないが、本当は孤児達と一緒にいたいのだろう。

「そうだ。それにあの孤児院にエロガキがいたとは驚いた。ノアのお陰で助かったが、あいつのやる事は絶対に非道すぎる!」

 零夜がロベールの行いに怒るのも無理なく、ミミ達が苦笑いしてしまう。それを見た倫子は彼に近付き、そのまま彼を真顔でじっと見る。

「もしかして零夜君。嫉妬しているんじゃない?」
「嫉妬!?いや、別にそんな事は……」

 零夜は倫子の質問に一度驚いてしまうが、俯きながら否定する。しかし、彼女は彼の顎をくいっと上げて、そのまま自身に視線を合わせる。

「嘘をつかないの。気持ちは分かるけど、イライラしちゃ駄目」
「すいません……」

 倫子からの頬を膨らましながらの指摘に零夜は俯いてしまうが、彼女は優しく彼の頭をよしよしと撫でる。その様子はまるで姉弟関係の様だ。

「でも、そういう時こそ私に良い考えがあるの。今日は二人きりで話をしましょう」
「あっ、はい……(倫子さんと二人きりか……なんか照れ臭くなるな……)」

 倫子のウインクしながらの提案に、零夜は照れ臭くなりながらも承諾する。だが、ミミ、エヴァ、ルリカはジト目でこの様子を見ていて、日和達が苦笑いするのも無理なかった。



 その夜、零夜と倫子は同室となり、彼等はベッドの上でお話をしていた。零夜に至っては照れ臭くてモジモジする中、倫子は笑顔で彼の頭を撫でている。

「まずはゆっくりとリラックスさせるの。まずは肩の力を抜いて」
「はい」

 零夜は倫子の指示に従い、肩の力を抜き始める。それと同時に緊迫感も解けてきて、安堵のため息をつく。

「次は私をゆっくり抱き締めて」
「抱き締めるのですか?では……」

 零夜は倫子をゆっくりと抱き締め、そのまま彼女の温もりを感じ取る。それはとても温かみがあり、思わず寝入ってしまうぐらいだ。デニムの感触が肌にも伝わっていて、興奮度も高まってくる。

「じゃあ、私を押し倒して」
「はい……」

 零夜は倫子を押し倒し、うつ伏せの状態でスヤスヤと眠ってしまう。それを見た倫子は彼の頭をポンポン撫でながら抱き締めていた。

「すっかり眠ったみたい。甘えん坊の一面が残っているみたいね」

 零夜は皆を引っ張る立場でありながらも、疲れて甘えたくなる部分もある。それを倫子は前から見抜いているからこそ、この提案を考えたのだ。

「よしよし。良い子良い子」

 倫子が笑顔で眠っている零夜を見つめ、自身も深い眠りに落ちた。月が光り輝く中、その明かりは彼等を照らしていたのだった。



 その頃、別の部屋ではミミ、ルリカ、エヴァは頬を膨らましながらベッドの上に座っていた。どうやら零夜が倫子と抱き合って眠っているのが気に食わなくて、嫉妬しているのも無理はない。

「まったく、零夜は……本当に女には甘いんだから……」
「少しばかり噛み付いておきましょうか?」
「私だったら牙が強いから少し怪我をするかも」
「これ以上好きな女性を増やしたら困るから、彼には良い薬かもね」

 三人の話を聞いているヒカリ達は唖然とした表情をしているのも無理なく、彼女達から距離を取りながらヒソヒソと話をしていた。近付いて話しかけたら殴り飛ばされる事もあり得るので、なるべく離れているのだ。

「ひょっとすると零夜君、恋に関しては鈍感なのかな……?」
「プロレス馬鹿である事は確かですけど……」

 ヒカリの質問に日和はそう答えるしかない。零夜の事については倫子から聞いているが、プロレス好きで自身も頑張っている事には変わりはない。今ではプロレス技を多くこなす事ができるが、どうやらプロデビューするのも時間の問題だろう。
 
「あらあら。これは大変な事になりそうかもね」
「「「はぁ……」」」

 マリーは零夜の行動に苦笑いをしていて、ヒカリ達は盛大にため息をつくしかなかった。彼の悪い癖は何時になったら治るのやら……



 同時刻、ロベリアから離れた場所にあるグラントルーズでは、アークスレイヤーロベリア支部基地が建てられている。西洋の城を元にした基地だが、黒く染められているのだ。
 そこにある庭園では、色とりどりの植物が咲いていた。キクやチューリップ、更には薔薇。まさに豪華としか言いようが無いだろう。
 その中にいるのはロベリア支部のボスであるアビスであり、彼は二十代後半ぐらいの年齢で赤い髪をしているのだ。

「美しい場所だ。この庭園こそ私に相応しい……」

 アビスがうっとりと庭園を見つめている中、兵士の一人が扉から姿を現した。そのまま彼は冷静な表情でアビスに報告を始める。

「アビス様。選ばれし戦士達がロベリアに姿を現しました。どうやら彼等はロベリアの革命を終わらせるとの事です」
「なるほど……奴等も動き出したのか……」

 兵士からの報告にアビスは真剣な表情をしながら、冷静に今後の事を考える。零夜達の事を知っているのは名前と画像、べムールを倒した事ぐらいだ。戦い方も知らないので、悩んでしまうのも無理はないだろう。

「べムールについてだが、我等グラディアス支部の中では最弱と言われている。だが、我々はそう簡単には倒せない」
「何れにしても奴等はまだ知りませんし、アークスレイヤーの真の恐怖をこれから体感するのですから」

 アビスと兵士は不敵な笑みを浮かべながら、余裕の表情をしていた。
 零夜達が倒していたべムールは、グラディアスにあるアークスレイヤー支部の中でも最弱と言われている。更にその上があるとなると、苦戦を強いられるのも無理ないのだ。

「更に仲間からの報告によれば、彼等はロベリアにある孤児院に寄っていたそうです。どうやら依頼を受けたみたいで」
「そうか……なら、やる事は決まった」

 アビスは決意を固めたと同時に、首を後ろに向きながら兵士に視線を移す。その目は残酷な目をしていて、冷酷な表情をしていた。

「雷轟に伝えろ。孤児院を徹底的に潰せと!」
「はっ!」

 アビスからの命令に兵士は一礼し、その場から走り去った。それと同時に……翌日の悪夢の結末が始まろうとしていたのだった……
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...