ヒーローズエイト〜神に選ばれし8人の戦士達による新八犬伝最強救世主伝説〜

蒼月丸

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第四章 エルフの森の怪物騒動

第百四十二話 因縁の再会

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「申し上げます!アルフェリア支部も破壊され、ヒューラーが死亡する事態に!倒したのはメディアとアムールの選ばれし戦士達です!」

 アークスレイヤーの本部では、兵士が慌てながらザルバッグに事の顛末を報告していた。それを聞いたザルバッグは怒りで顔を強張らせていて、数名の兵士達は後ずさってしまっていた。
 メディアによる選ばれし戦士達だけでなく、アムールまでも反抗するとは予想外と言えるだろう。

「他の所はどうなっている?」
「グラディアスは支部基地が全て滅んでしまい、残るは征服本部のみです!」

 兵士の更なる説明を聞いたザルバッグは真剣な表情で考え、部屋全体に緊迫感が漂い始める。
 バベルとしても後がない状況でありながら、何か策略を練っているに違いない。そう考えたザルバッグは兵士に視線を移す。

「バベルに伝えろ。グラディアスはお前の命運にかかっている。恐らくヒューゴ達が向かおうとしているので、失敗は許されないと思えと」
「はっ!そうお伝えします!」

 兵士がその場から立ち去ったと同時に、神室がザルバッグの前に転移しながら姿を現した。

「神室。戻ってきたか」 
「グラディアスの様子を見に行きましたが、支部基地がやられて征服本部のみとなりましたね。しかし、今のままでは返り討ちに遭う可能性があるんじゃないでしょうか?」

 神室は先程の話を聞いていて、気になる事をザルバッグに話し始める。バベルがヒューゴ達に立ち向かうとしても、実力差ではやられてしまう恐れがあるのだ。
 それを聞いたザルバッグは首を横に振りながら否定していた。

「いいや。奴等はまだメンバーを揃えていない。ヒューゴ、紬、クロエ、ガンテツ、バルクの五名だけだからな……」

 ザルバッグは真剣な表情で、ヒューゴ達の現在の状況を説明する。確かにヒューゴ達はまだメンバーが揃ってなく、偉人に関してもまだ見つけていないようだ。それならバベルも対応できるが、後はどう頭脳をフル回転するかが鍵となるだろう。

「なるほど……その件に関してはいいとして、零夜達については俺が始末しておきましょうか?」

 神室はザルバッグの説明に納得するが、零夜達ブレイブペガサスの始末に関しては自ら行こうとしていた。彼とは因縁がある為、自ら立ち向かおうとしているのだ。
 
「だが、神室はトップエイトの一人である以上、お前の出番はまだ先となる。反逆者の選ばれし八人が決まるまでは大人しくしておいてくれないか?」

 神室の説明を聞いたザルバッグは、今後の心配を考えながら彼に説得をする。それに神室がここで倒されたら、トップエイトは大混乱になってアークスレイヤーはピンチになってしまうのだ。
 そうならない為にも陥落しやすい世界の征服活動や、部下達の指導がメインとなっているのだ。

「分かってますよ。それにこの件に関しては、俺はただ挨拶をするだけですから。この顔に傷を負わせた奴をね!」

 神室がサングラスを取りながら恨みの表情を見せる。その顔面には右側の額から頬までの長さとなっている傷跡が残っていた。零夜との戦いで受けた傷には違いないが、その原因は何があったのか不明である。

「挨拶だけなら良い。くれぐれも怪我と戦いは起こすなよ?」
「分かってますって」

 神室は後ろを向いてその場から立ち去り、ザルバッグはウインドウを開いて現在の戦況を確認する。
 他の世界でもグラディアスと同じく苦戦しているところはあり、中には征服されたり守り切ったりしている世界もある。その結果をまとめると、戦力は互角と言っても良いだろう。
 その様子にザルバッグは真剣な表情をするのも無理なく、盛大なため息をついてしまった。

「こんなところだな……しかし、私の野望を成し遂げるまでは死ぬ訳には行かないからな……」

 ザルバッグは天井を見上げながら自身の野望を達成する決意を固め、その拳は強く握られていた。



 エルフの森では零夜達と風子達が、エムールにバーサークを倒した事を報告していた。それを聞いた彼は微笑みながら頷き、エルフ達は歓声を上げながら喜んでいた。
 あの化物が復活した際は、皆どうなるのか心配だった。しかし、零夜達がバーサークを倒してくれた事で、エルフの森に再び平穏が訪れる様になったのだ。

「そうか。これで我等の居場所は大丈夫となるな。礼を言うぞ」
「いえいえ。大した事ないですよ!」
「そうそう。皆の力で倒したからね」

 エムールの礼に零夜は苦笑いし、アミリスも同意する。皆の力で立ち向かったからこそ、バーサークを倒す事ができた。団結力が強ければ強い程、最大限のフルパワーも次第に強くなっていくのだ。

「それにフリードも参加するとはな。見直したぞ」

 エムールはフリードもバーサークとの戦いに参加した事を褒めていて、彼は照れ臭そうに頬を掻いていた。あの捻くれ者がここまで改心するとは、誰も思わなかっただろう。

「俺も選ばれし戦士だからな。それに……俺もそろそろメンバーと合流しないといけないからな」
「へ?フリード、あなた……」

 フリードの様子にアミリスがキョトンとしたその時、彼はリュックサックを背負い始める。この様子だと同じ仲間と合流を果たす為、自ら動き出す事を決意したのだ。

「ああ。いずれ俺も仲間達と合流しなければならないからな。次に出会う時はトーナメントだから、それまで負けるなよ!」

 フリードはウインクしながらアミリスにエールを送った後、そのまま自身の仲間の元へと向かって行った。その様子をエルフの人達は見送っていて、エムールに関しては真剣な表情で見つめていた。

「まさかフリードがここまで成長するとはね……」

 アミリスはフリードの行動に苦笑いしているが、彼の成長を実感していた。彼女はすぐに切り替えたと同時に、零夜達に視線を向ける。
  
「グラディアスについては本部のみ。その辺についてはヒューゴ達が立ち向かう事になるわ」
「じゃあ、僕達は役目を終えたし、元の世界に帰らないとね」

 アミリスからの話にトラマツ達は納得の表情をしていて、全員はその場から元の世界に帰る事を決断。するとエルフの人達が次々と差し入れを持ってきた。

「これ、俺の畑で取った野菜だ。食べてくれ」
「りんごを食べて強くなれよ!」
「あ、ありがとうございます!」

 零夜達はエルフの人達からの差し入れを受け取り、笑顔で応えていた。まさか異世界で現地の人達からの差し入れを受け取るのは初めてで、貴重な経験を感じていたその時だった。


「まさかお前がこんなところにいるとはな!」
「その声……もしや!」


 突然の声に零夜がすぐに気付いた直後、神室が突如姿を現した。しかもサングラスは外している状態で、零夜に対してギロリと睨み付けていた。

「神室……まさかお前が来るとはな……」
「ああ……久しぶりだな、東……忘れはしないぜ!この傷を!」

 神室は零夜に対して傷をつけられた事を叫び、この場一体が一触即発の展開となってしまったのだった。
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