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第五章 ハルバータの姫君
第百五十四話 非情なる判決
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ヴァルムント王国の城に辿り着いた零夜達は、外観に驚きを隠せずにいた。姿はまさにロシアのクレムリンでありながら、異様な雰囲気を漂わせているのだ。
「す、凄い……こんな城があるなんて……」
「これだけでも大きいですからね。では、中に入りましょう」
アメリアの合図と同時に全員が城の中に入り、目的地となる部屋へそのまま向かっていた。城の中はあまりにも豪華で見事としか言えず、部屋の数も多くある。灯りの飾りはシャンデリアであり、華やかな雰囲気が漂っている。まさに王族の中ではお金持ちクラスであり、この様な屋敷があるのはその為なのだろう。
「この先には誰がいらっしゃるのですか?」
「ええ。お父様が皆様を待っていらっしゃいます。まあ、今回の件については黙ってはいられませんが」
「うっ!」
アメリアの説明と同時に、メルトの心に言葉の矢が突き刺さってしまう。確かに多くの部下を失ってしまった事はかなり痛いので、それ程責任が強いとしか思えないのだ。
「そしてその先が……陛下のいる部屋です。では、早速……」
兵士の一人は前に出たと同時に、コンコンとノックを鳴らす。同時に楽しい雰囲気から緊迫感が溢れ出し、全員が真剣な表情で引き締まっていく。
「失礼します!メルト様とアメリア様をお連れしました!同時に彼女の仲間達も連れてきました!」
『入れ』
ボリス国王の合図と同時に扉が開かれ、玉座に座る彼が見えていた。その雰囲気は偉そうなオーラを出していて、近付くと危険さを感じるようだ。それに皆がゴクリと息を呑む中、ボリスはアメリアの姿を見て笑みを浮かべていた。
「アメリア、無事で良かった……」
「ご迷惑をおかけしました」
アメリアが無事である事にボリスは安堵していて、迷惑をかけたと彼女は謝罪する。自身が不甲斐ない事をして申し訳ないと感じているのだろうが、ボリスはそれに構わず安堵の笑みを浮かべていたのだ。
「いやいや。お前が無事で何よりだ。さて、メルトよ。前に出ろ!」
「はっ!」
ボリスはアメリアに対して笑みを浮かべた後、メルトを真剣な表情で睨みつける。今回の件については黙ってはいられないので、然るべき処置は必須と判断した。
呼ばれていたメルトは前に出たと同時に、静かに一礼する。彼はその時覚悟は既にできているのだ。
「今回の件でマギアス討伐に向かったが、まさか六人が亡くなり、ここにいるのは二人だけか。シナモン、その時の状況を」
ボリスからの命令にシナモンは頷き、そのままメルトの隣に移動して一礼する。そのまま彼女はその時の状況を語り始め、誰もが真剣な表情をしながら話を聞き始める。
「はい。私達はマギアス討伐に向かいましたが、謎の男によってホーネットさん達は次々と殺されました。私とジャミラは峰打ちで助かりましたが、他の皆は死亡したという事です」
シナモンからの説明にその場にいる全員が納得し、ボリスはその内容を聞いてすぐに原因を察する。彼女の話を聞いた直後に、その男の名前については彼しかいないと判断している様だ。
「そうか……そいつは紅蓮丸だな」
「「「紅蓮丸?」」」
ボリスからの説明にアメリア達は首を傾げていて、零夜達は事前に確認しているので知っているが、一応話を聞く事にする。
「奴は多くの勇者を偽物と認識し、次々と殺しまくるシリアルキラーだ。しかし、女性には危害を加えない事を信条としているが、悪徳勇者や悪の心を持つ者には容赦しない」
ボリスからの話に零夜達は冷や汗を流していて、アメリア達は息を飲んでいた。どんなに善の心があっても、一瞬の隙で身を滅ぼしてしまう事もある。紅蓮丸はそれを見抜いて善か悪かを判断しているのだ。
今回の件だって一瞬の隙があった。それによって紅蓮丸から粛清されてもおかしくなく、下手すれば全滅するケースもあり得るだろう。
「そして今回の件……彼等はお前を王にする事を欲望とした挙げ句、この様な結果になった……本来王は民の為に戦い、国を守る存在である。しかし、自身の野望の為に王になるなど、言語道断だ!」
「仰る通りです……」
ボリスからの厳しい指摘に、メルトは項垂れながら反論する気にもならなかった。この様な結果になったのは自業自得であり、シナモンとジャミラは何も言えずに彼を見つめるしかなかった。
「そして、お前達兄弟には決まりがある事を覚えているか?」
「決まり?それって一体……」
ボリスからの質問にメルトは頷くが、ミミ達は疑問に感じながら首を傾げていた。初めて聞く事なので首を傾げるのも無理はなく、アメリアが零夜達に対して分かりやすく説明する。
「王位継承を決めるルールがあるのです。部下を誰一人も死なせず、アルメリアスの紋章を手に入れたら王になれるという決まりです」
アメリアの説明に皆が納得したと同時に、全員がメルトに視線を移す。彼は大量の冷や汗を流していて、全身がガタガタと震えていた。これは嫌な予感は確定と言うべきだが、果たしてどうなるのかが見物と言えるだろう。
ボルスは真剣な表情をしながら後処理を発表しようとしていて、その様子に誰もが息を呑んでしまう。
「では、メルト。お前には王位継承権を剥奪と同時に、辺境の地へ飛ばす事にする。国を守る礎となり、そこで一生を過ごしておけ。良いか?」
「はっ……!」
後処理の内容は、なんと辺境の地への追放だった。それは王族の地位を剥奪となるだけでなく、一般人として辺境で働く事になる事であった。これに関してはプライドもズタボロになるのは勿論、仲間と家族とは離れ離れになるのも確定的であるのだ。
メルトは項垂れながらも一礼し、兵士達と共にその場から立ち去る事になった。その様子を見たシナモンとジャミラは涙を流していて、アメリアが二人を慰めていた。
「シナモンとジャミラはアメリアの傍にいてくれ。今後は彼女の支えになる様、しっかりしておくんだぞ」
「「はい……」」
シナモンとジャミラは目に涙を浮かべながら一礼した後、ボリスは零夜達に視線を移す。彼等が娘を助けてくれた事に、恩義を感じているのだ。
「お主達がアメリアを助けてくれた様だな。礼を言う」
「いえ。そこまで大した事は無いですが……」
ボリスからの感謝の礼に、零夜は苦笑いしながら返していた。国王からお礼を言われてしまう事には慣れてなく、苦笑いするのも無理なかった。
「今回、お主達がいなかったら、アメリアは死んでいたかも知れない。この事については本当に感謝するぞ」
「分かりました。その言葉、お受け致します」
零夜が代表して礼儀正しく一礼し、ミミ達も笑顔で応える。この事については丸く収まり、ボリスは真剣な表情をしながら話を続ける。
「さて、お主達にはこのヴァルムント王国で何が起こっているかを話す必要がある。マギアスの事についても……王位継承の事についても……」
ボリスからの真剣な表情に零夜達も強く頷き、彼の話がそのまま始まりを告げられようとする。この国の真実だけでなく、マギアスとの戦いの記録も語られるのであった……
※
同時刻、メルトは兵士達に連行されながら俯いていた。自身が王になれると思っていたが、そう簡単に現実は甘くなかったのだろう。
(僕はやはり……未熟者だったな……情けないや……)
メルトは心から未熟者だと思いながら、寂しそうな笑みをしていた。そのまま彼は兵士達と共に城から出て行き、その様子をハインは寂しそうな表情でこっそりと見送ったのだった。
「す、凄い……こんな城があるなんて……」
「これだけでも大きいですからね。では、中に入りましょう」
アメリアの合図と同時に全員が城の中に入り、目的地となる部屋へそのまま向かっていた。城の中はあまりにも豪華で見事としか言えず、部屋の数も多くある。灯りの飾りはシャンデリアであり、華やかな雰囲気が漂っている。まさに王族の中ではお金持ちクラスであり、この様な屋敷があるのはその為なのだろう。
「この先には誰がいらっしゃるのですか?」
「ええ。お父様が皆様を待っていらっしゃいます。まあ、今回の件については黙ってはいられませんが」
「うっ!」
アメリアの説明と同時に、メルトの心に言葉の矢が突き刺さってしまう。確かに多くの部下を失ってしまった事はかなり痛いので、それ程責任が強いとしか思えないのだ。
「そしてその先が……陛下のいる部屋です。では、早速……」
兵士の一人は前に出たと同時に、コンコンとノックを鳴らす。同時に楽しい雰囲気から緊迫感が溢れ出し、全員が真剣な表情で引き締まっていく。
「失礼します!メルト様とアメリア様をお連れしました!同時に彼女の仲間達も連れてきました!」
『入れ』
ボリス国王の合図と同時に扉が開かれ、玉座に座る彼が見えていた。その雰囲気は偉そうなオーラを出していて、近付くと危険さを感じるようだ。それに皆がゴクリと息を呑む中、ボリスはアメリアの姿を見て笑みを浮かべていた。
「アメリア、無事で良かった……」
「ご迷惑をおかけしました」
アメリアが無事である事にボリスは安堵していて、迷惑をかけたと彼女は謝罪する。自身が不甲斐ない事をして申し訳ないと感じているのだろうが、ボリスはそれに構わず安堵の笑みを浮かべていたのだ。
「いやいや。お前が無事で何よりだ。さて、メルトよ。前に出ろ!」
「はっ!」
ボリスはアメリアに対して笑みを浮かべた後、メルトを真剣な表情で睨みつける。今回の件については黙ってはいられないので、然るべき処置は必須と判断した。
呼ばれていたメルトは前に出たと同時に、静かに一礼する。彼はその時覚悟は既にできているのだ。
「今回の件でマギアス討伐に向かったが、まさか六人が亡くなり、ここにいるのは二人だけか。シナモン、その時の状況を」
ボリスからの命令にシナモンは頷き、そのままメルトの隣に移動して一礼する。そのまま彼女はその時の状況を語り始め、誰もが真剣な表情をしながら話を聞き始める。
「はい。私達はマギアス討伐に向かいましたが、謎の男によってホーネットさん達は次々と殺されました。私とジャミラは峰打ちで助かりましたが、他の皆は死亡したという事です」
シナモンからの説明にその場にいる全員が納得し、ボリスはその内容を聞いてすぐに原因を察する。彼女の話を聞いた直後に、その男の名前については彼しかいないと判断している様だ。
「そうか……そいつは紅蓮丸だな」
「「「紅蓮丸?」」」
ボリスからの説明にアメリア達は首を傾げていて、零夜達は事前に確認しているので知っているが、一応話を聞く事にする。
「奴は多くの勇者を偽物と認識し、次々と殺しまくるシリアルキラーだ。しかし、女性には危害を加えない事を信条としているが、悪徳勇者や悪の心を持つ者には容赦しない」
ボリスからの話に零夜達は冷や汗を流していて、アメリア達は息を飲んでいた。どんなに善の心があっても、一瞬の隙で身を滅ぼしてしまう事もある。紅蓮丸はそれを見抜いて善か悪かを判断しているのだ。
今回の件だって一瞬の隙があった。それによって紅蓮丸から粛清されてもおかしくなく、下手すれば全滅するケースもあり得るだろう。
「そして今回の件……彼等はお前を王にする事を欲望とした挙げ句、この様な結果になった……本来王は民の為に戦い、国を守る存在である。しかし、自身の野望の為に王になるなど、言語道断だ!」
「仰る通りです……」
ボリスからの厳しい指摘に、メルトは項垂れながら反論する気にもならなかった。この様な結果になったのは自業自得であり、シナモンとジャミラは何も言えずに彼を見つめるしかなかった。
「そして、お前達兄弟には決まりがある事を覚えているか?」
「決まり?それって一体……」
ボリスからの質問にメルトは頷くが、ミミ達は疑問に感じながら首を傾げていた。初めて聞く事なので首を傾げるのも無理はなく、アメリアが零夜達に対して分かりやすく説明する。
「王位継承を決めるルールがあるのです。部下を誰一人も死なせず、アルメリアスの紋章を手に入れたら王になれるという決まりです」
アメリアの説明に皆が納得したと同時に、全員がメルトに視線を移す。彼は大量の冷や汗を流していて、全身がガタガタと震えていた。これは嫌な予感は確定と言うべきだが、果たしてどうなるのかが見物と言えるだろう。
ボルスは真剣な表情をしながら後処理を発表しようとしていて、その様子に誰もが息を呑んでしまう。
「では、メルト。お前には王位継承権を剥奪と同時に、辺境の地へ飛ばす事にする。国を守る礎となり、そこで一生を過ごしておけ。良いか?」
「はっ……!」
後処理の内容は、なんと辺境の地への追放だった。それは王族の地位を剥奪となるだけでなく、一般人として辺境で働く事になる事であった。これに関してはプライドもズタボロになるのは勿論、仲間と家族とは離れ離れになるのも確定的であるのだ。
メルトは項垂れながらも一礼し、兵士達と共にその場から立ち去る事になった。その様子を見たシナモンとジャミラは涙を流していて、アメリアが二人を慰めていた。
「シナモンとジャミラはアメリアの傍にいてくれ。今後は彼女の支えになる様、しっかりしておくんだぞ」
「「はい……」」
シナモンとジャミラは目に涙を浮かべながら一礼した後、ボリスは零夜達に視線を移す。彼等が娘を助けてくれた事に、恩義を感じているのだ。
「お主達がアメリアを助けてくれた様だな。礼を言う」
「いえ。そこまで大した事は無いですが……」
ボリスからの感謝の礼に、零夜は苦笑いしながら返していた。国王からお礼を言われてしまう事には慣れてなく、苦笑いするのも無理なかった。
「今回、お主達がいなかったら、アメリアは死んでいたかも知れない。この事については本当に感謝するぞ」
「分かりました。その言葉、お受け致します」
零夜が代表して礼儀正しく一礼し、ミミ達も笑顔で応える。この事については丸く収まり、ボリスは真剣な表情をしながら話を続ける。
「さて、お主達にはこのヴァルムント王国で何が起こっているかを話す必要がある。マギアスの事についても……王位継承の事についても……」
ボリスからの真剣な表情に零夜達も強く頷き、彼の話がそのまま始まりを告げられようとする。この国の真実だけでなく、マギアスとの戦いの記録も語られるのであった……
※
同時刻、メルトは兵士達に連行されながら俯いていた。自身が王になれると思っていたが、そう簡単に現実は甘くなかったのだろう。
(僕はやはり……未熟者だったな……情けないや……)
メルトは心から未熟者だと思いながら、寂しそうな笑みをしていた。そのまま彼は兵士達と共に城から出て行き、その様子をハインは寂しそうな表情でこっそりと見送ったのだった。
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