ヒーローズエイト〜神に選ばれし8人の戦士達による新八犬伝最強救世主伝説〜

蒼月丸

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第五章 ハルバータの姫君

第百八十話 決意と修羅場

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 ゴッドエデンにある議会場では、トキコが戦士殺しの件が終わりを告げた事をカーンとロストに報告していた。 
 紅蓮丸の死から翌日、彼に特典を与えたヴァルモも捕まえる事に成功。判決の結果は死刑という結果となり、処刑は三日後に行われるとの事である。

「以上が報告の内容です」
「そうか……これで戦士殺しの件は終わりを告げたが、その犠牲者は計り知れないな……」
「ええ。優勝候補のホープガイアまで脱落となると、戦いはますます混沌を極めますね」

 カーンの意見に対し、ロストも同意しながら推測する。今回の戦士殺しの件で多くの脱落チームが出てしまい、新たな神々によるチーム再編も活発になりつつある。当初参加したチームは五百ぐらいいたが、現在は二百に絞られてしまったのだ。

「だが、アークスレイヤーは今後どう動くかだ。トキコ、調査員を多く派遣させ、それぞれの世界を監視してくれ。アークスレイヤーの輩がとんでもない事をしようとした際は、直ぐに対処を頼む!」
「はっ!」

 カーンからの命令にトキコは承諾したと同時に、その場から別の場所に転移した。同時にアークスレイヤーとの戦いも、新たな段階へとステップアップし始めたのだった。



 それから三日後、零夜はヒーローアイランドで訓練を終えた後、海岸近くの平原で寝転んでいた。どうやらキスされてしまった事を、まだ思っているのだろう。練習には普通に進んでいるが、時々陰でため息をつく事もあるのだ。

(まさか俺がキスされてしまうなんてな……何やってんだか……)

 零夜が心の底からため息をついたその時、倫子が隣に座って彼をじっと見る。どうやら零夜の事を心配していたらしく、このままだとデビュー戦はとんでもない事になると予測したからだろう。

「その様子だと悩んでいるみたいやね」
「倫子さん!?どうしてここに!?」

 倫子に気付いた零夜は驚いてしまうが、彼女はずいっと彼に接近してくる。そのまま身体を密着させたと同時に、零夜の肩を組み始めた。
 密着した肌と服が全身に伝わり始め、ドキドキ感が心の底から溢れそうになる。憧れの人とこの様な展開になるのは、誰もが羨ましがるのも無理ないだろう。

「心配だから来たんよ。なんか悩みでもあるん?」
「実は……」

 零夜は自身が抱える悩みを、倫子にそのまま打ち明け始める。それを聞いた彼女は驚くのも無理なく、左手で口を押さえていた。アメリアからキスをもらってしまった事は、誰だって驚くのも当然だからだ。

「まさか零夜君がアメリア姫からキスをくれるなんて……凄い事やね……」
「俺としても想定外ですよ。いきなりキスをされるなんてビックリしましたし、バレてしまったら大事ですよ……」

 零夜は照れ臭そうに頬を掻きながら、この事を改めて振り返っていた。しかし、それがミミ達にバレてしまったら、怒りどころじゃ済まないレベルになるだろう。零夜はその事を警戒しているのも無理なく、ため息をついてしまった。
 その話を聞いた倫子は彼に抱き着いたと同時に、よしよしと彼の頭を撫で始める。まるで姉弟感覚の様に見えるが、彼女はこの事を推測しながらアドバイスをし始める。

「あのキスについてだけど、アメリア姫も零夜君の事を好きなんじゃないのかなって思うんだよね……ウチ等がいなかったら今のアメリア姫はいなかったし、何よりも零夜君が傍にいてくれたのが嬉しかったんじゃないかな?」
「あ……」

 倫子の推測とアドバイスを聞いた零夜は、ヴァルムントにいた時の事を思い出し始めた。
 アメリア姫は零夜から訓練を受けている時、生き生きとした表情を見せながら受けていた。それだけでなく、僅か短期間で格闘技・剣術の習得も無事に終わらせ、更にはプロレス技も覚えてしまった。零夜が彼女の傍にいた影響はとても強く、ここまで強化させたのは見事としか言えないだろう。

「そうでしたね……彼女をここまで強化させた以上、好きになってしまうのも無理はない。ヒーローズエイトを巡る戦いで、新たなライバルを増やしてしまったかなと思います」

 零夜は苦笑いしながら、アメリア達がライバルとして立ちはだかる事を予測する。
 彼女は零夜の指導もあって強化してしまい、選ばれし戦士としての能力も発揮。今後は彼等の前に立ちはだかる事になるが、ライバルは多ければ多い程燃え上がっていくのだ。
 零夜は倫子から離れたと同時に、すぐに立ち上がる。そのまま青い空を見上げながら、新たな決意を立てようとしていた。

「けど、ヒーローズエイトになってアークスレイヤーを倒すのは俺達だって同じ。こんなところで諦めず、精一杯立ち向かいます!」
「そうこないとね!取り敢えず立ち直って良かった!」

 零夜の新たな決意に倫子が笑顔で応えた直後、エアロが駆け付けてきた。今の姿は小さなドラゴンである為、まだ甘えたい年頃なのだろう。

「エアロ、おいで」
「キュルー!」

 倫子は両手を広げてエアロをこちらに誘い込んだ途端、彼は喜んで彼女の胸に飛びついた。すっかり倫子に懐いている為か、嬉しそうにスリスリと抱き着いているのだ。

「エアロって……男の子だったのですか?」
「うん。女性好きと声で分かっているからね。けど……今の話をエヴァちゃん達が聞いているんじゃないのかな……」
「?」

 倫子が指差す方を零夜が向いた途端、なんとエヴァ、ミミ、ルリカ、美津代が怒りのオーラを出していた。心配だから様子見をしたが、まさかキスされた事に驚きを隠せなかったのだろう。
 おまけにヒカリ達もこっそりと聞いていて、一歩後ずさりながらブルブル震えていた。ミミ達が怖くて震えていたのだろう。

「零夜……まさかアンタ、アメリア姫とキスしたとは……」
「どういう事かキッチリ説明してもらいますよ……」

 ミミ達四人は腕を鳴らしながら零夜に接近し始め、彼は冷や汗を大量に流してしまう。それを見た倫子とエアロは身の危険を感じ、その場から走り去ってしまった。

「いや、あれはハプニングだから!俺はただアメリア姫に呼び止められて……」
「「「この浮気者ォォォォォォォォ!!」」」
「ギャアアアアアアアア!!」

 零夜の説得も効果なく、そのままミミ達にボコボコにされてしまう。まさに修羅場展開となっていて、今の状態で近付く事は危険だろう。

「まさかオイラがヒーローアイランドに残っている間に、こんな事が起こったなんて……」
「ああ……止めようとしても逆に殴り飛ばされてしまうだろう……ここは気の済むまで放っておこう……」
「そ、そうだな……」

 唖然とするサンペイに、トラマツが近付かない事を皆に提案。それにノースマン達も頷きながら同意し、その場から逃げ去る様に走り去ってしまった。止めに入ればボコボコにされるのは確定で、命を大事にしようと決断したのだろう。

「お前等!助ける気はないのかよ!」

 ボコボコにされている零夜がトラマツ達に叫んだ直後、ミミが彼の顔にずいっと接近し始める。ボコボコにするだけでは物足りず、何か言いたい事があるのだろう。

「それともう一つ!デビュー戦までは私達四人とスキンシップをする事!一つでもサボれば追加お仕置きだからね!」
「ひえーっ!」

 ミミからの命令に零夜の叫びがまた響き渡り、この様子を倫子とエアロは隠れながら見ていた。確かにこの件は零夜のとばっちりと言えるが、自業自得の件もあるのだろう。

「零夜君の苦労は当分終わらないかもね……」
「キュル?」

 倫子は苦笑いしながら零夜に同情していて、エアロに至っては疑問に感じていた。彼の苦労は今後も永久に続いていくだろう……
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