ヒーローズエイト〜神に選ばれし8人の戦士達による新八犬伝最強救世主伝説〜

蒼月丸

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第六章 山口観光騒動記

第二百十二話 ハンニャバルとの戦い

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 ハンニャバルを目の前にしている零夜達は、真剣な表情をしながら戦闘態勢に入っていた。その姿はまさに悪魔その物で、凶悪さが十分に伝わってくる。
 更にヒカリ達やトキコ、ルリカ達も駆けつけ、一斉に戦闘態勢に入り始める。緊急事態である以上、立ち向かうしか方法はないのだ。

「観客達は大丈夫。強力バリアで防いでいるから、被害が来ない仕組みになっているの。あなた達の家族も大丈夫だからね」

 トキコは観客席に視線を移しながら、彼等の前に貼られているバリアを説明する。それはどんな攻撃も弾き返す特殊なカウンターバリアであり、戦いが終わるまで有効である仕組みになっている。当然観客達は安心して観戦できるのだ。
 
「助かります。しかし、バトルオブスレイヤーの後にこの様な事態の場合はどうすれば……」

 零夜からの質問にトキコは真剣な表情をしながら、ハンニャバルに視線を移す。バトルオブスレイヤーの後に怪物が出るのは前代未聞で、この場合はどう対処するかだ。

「この場合は特別任務として言い渡すから。あの怪物を徹底的に始末せよ!」
「「「了解!」」」

 トキコからの特別任務が発生し、彼女の合図と同時に零夜達が動き出す。そのままハンニャバルとの戦いが幕を開け、歓声も聞こえ始めた。

「零夜!この戦いこそお前達の真価が問われる!絶対に打ち倒せ!」
「おう!」

 修吾の掛け声に零夜は頷きながら応え、手裏剣を構えながらハンニャバルに狙いを定め始める。彼の手裏剣は苦無型、十字型などの様々な種類があり、場合によって投げる種類が違うのだ。

「手裏剣乱れ投げ!」

 零夜の投げた手裏剣はハンニャバルの背中に当たるが、彼は平然としながら動いていた。効果ないかと思われたが、手裏剣の色が紫色になっている事に違和感を感じ始めた。どうやらこれが今後の展開を左右するだろう。

「次はこれだ!紅蓮乱れ咲きぐれんみだれざき!」

 ソニアが炎の能力を纏ったカタールを構え、ハンニャバルに斬り裂きの攻撃を与える。しかしそちらも効果なく、彼は平然としていたのだ。

「全然効果ない!?」
「どういう事だ!?」

 予想外の展開にソニアと杏が驚く中、アミリスが真剣な表情でハンニャバルを観察する。彼女の千里眼というスキルで敵のデータが判明され、彼女の脳内に流れ込んできた。

「ハンニャバルの属性は闇だけど、普通なら攻撃が効いているわ。けど、このハンニャバルは一味違う。あらゆる攻撃を無効化してしまう特殊効果を持っているわ!」
「「「ええっ!?」」」

 アミリスからの説明にミミ達は驚いてしまい、観客席からもざわついてしまう。あらゆる攻撃を無効化するチート級は初めての遭遇であり、いくら何でも卑怯というべきだろう。

「となると、その特殊効果を消せば良いのか。それなら対策済みだぜ」
「「「!?」」」

 零夜は余裕の表情をしながら説明し、それにミミ達は驚きながらも一斉に彼の方を向いた。零夜は既に敵の能力を見極めていて、先程手裏剣を投げ飛ばしていたのだ。

「もしかして……あなたの今の行動がカギとなるの?」
「そうだ。手裏剣に特殊細工しておいたからな」

 倫子からの質問に対し、零夜は余裕の笑みを見せながら応える。するとハンニャバルが口から光線を吐き出そうとしていて、零夜達は急いで回避しようと駆け出す。

「グオオオオオオ!」
「チッ!」

 零夜達はサイドステップで回避し、光線を見事回避する。しかし、光線は地面に当たって爆発を起こし、焦げ目の跡を残していたのだ。反応が遅かったら黒焦げ確定だっただろう。

「危なかった……」

 エヴァが安堵のため息をついた途端、ハンニャバルは拳を振り上げながら彼女を殴りに掛かる。強烈な巨大拳がエヴァに直撃し、彼女は宙を舞いながら飛ばされてしまった。

「ガハッ……!」
「エヴァ!」

 零夜が叫んだ直後、ハンニャバルの攻撃は緩めない。今度はコーネリアの身体を掴み、そのままポイッと投げ捨ててしまった。

「なんで私はこんな扱いなのよ!」

 コーネリアが叫んだ直後、彼女は地面に不時着してしまう。ハンニャバルはその後も攻撃を続け始め、ヒカリ、ジェニー、ソニア、杏を左手で薙ぎ払い飛ばした。

「「「うわ(きゃ)ああああああ!!」」」
「今度は四人が薙ぎ払い飛ばされた!ハンニャバルの攻撃は手強く、ブレイブペガサスは大苦戦!果たしてどうなるのか!?」

 ラビリンの実況に観客席がざわついてしまう中、倫子達もハンニャバルの攻撃を受けて飛ばされていく。誰もが心配そうな表情をする中、修吾は冷静な目で零夜達に視線を移していた。
 ボロボロの状態である零夜達の目はまだ死んでおらず、最後まで諦めずに立ち向かおうとしている。どんなに手強い敵でも、最後まで諦めずに立ち向かう覚悟がまだあるのだ。

「零夜はここで諦めない男だからな。それに……あの手裏剣がそろそろ効果を発動する頃だろう」
「あの手裏剣?」

 修吾は真剣な表情で推測するが、文香は疑問に思いながら首を傾げている。ハンニャバルの背中に刺さっている紫の手裏剣が、何の役に立つのか疑問を感じているのだ。それに栞達も気になったその時、アミが手裏剣からオーラを発しているのを見逃さずにいた。

「そろそろ効果が発動するわ!」

 全員が手裏剣に視線を移した途端、そこから特殊な電波が発せられる。その電波はハンニャバルに直撃してしまい、彼の身体が痺れ始めたのだ。

「グオオオオオオ!」
「おーっと!手裏剣から電流が流され、ハンニャバルが痺れまくる!一体どういう事だ!?」

 突然の展開にラビリンや観客達が驚きを隠せない中、ハンニャバルの身体に激痛が流れ込んでいく。同時に彼の持つスキルも全て無効化されてしまい、一気に弱体化してしまったのだ。

「まさか……先程投げた手裏剣がカギとなったの?」

 ミミがハンニャバルの背中に刺さっている手裏剣を指差し、それに零夜はコクリと頷く。あの手裏剣こそ、ハンニャバルを倒す為のカギに違いないからだ。

「ああ。あの手裏剣は退魔手裏剣たいましゅりけん。俺が開発した手裏剣で、敵のスキルを全て無効化する能力を持っている。更に怪物などの大きめの敵には、激痛と痺れの追加効果があるのさ」
「という事は……今の状態のハンニャバルは弱体化しているとの事ね!」

 零夜からの説明にミミ達は納得し、今のハンニャバルの状態に視線を移す。退魔手裏剣によってスキルは無効化され、更に激痛と痺れで動きが鈍くなっているのだ。
 まさかあの手裏剣によって、展開が一気にひっくり返されるとは思わなかっただろう。しかし、弱体化しているからこそ、攻めるなら今しかない。

「その通りだ。さて、ここからが反撃だ。散々殴り飛ばされた分反撃しないとな!」
「そうね。ここで終わる私達じゃない。私達ブレイブペガサスは何が何でも諦めない!最後まで立ち向かう覚悟だから!」

 零夜とミミの合図と同時に、倫子達も立ち上がって戦闘態勢に入り始める。すると観客席から歓声と声援が響き渡り、その後押しによって零夜達の力も上がってきたのだ。

(まさかあの手裏剣によって、状況をひっくり返すとはね。ここからが本番となるけど、ブレイブペガサスはどう立ち向かうか。その戦いぶり、見せてもらうよ!)

 トキコは笑みを浮かべつつ、ハンニャバルに立ち向かう零夜達に視線を移していた。彼等の真価がどう定められるのかは、この戦いに全てが決まるだろう。
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