ヒーローズエイト〜神に選ばれし8人の戦士達による新八犬伝最強救世主伝説〜

蒼月丸

文字の大きさ
213 / 277
第六章 山口観光騒動記

第二百十一話 散りゆく者達

しおりを挟む
 羽田が倒された事で殿町達は動揺してしまい、顔には冷や汗が流れていた。零夜を倒そうと彼ばかり集中していたが、エヴァが羽田を倒した事で動揺を隠せずにいた。周りを見ていなかった事が仇となっただろう。

「馬鹿な……羽田が倒された……」
「零夜の他にも強い者がいたと言うのか……こいつは想定外すぎるぞ……」

 沼田と花山が冷や汗を流してしまう中、乗川兄弟が前に出て戦おうとしている。どうやら羽田が倒されたのを見て黙ってはいられないだろう。

「兄ちゃん。ここは俺達二人が立ち向かえばイケるかも知れない!」
「ああ!コンビパワーで倒しに行こうぜ!」

 乗川兄弟は素早く駆け出したと同時に、そのまま零夜に襲い掛かってきた。早く彼を始末すればこっちの物だと考えているのだろう。

「「そうはさせない!」」
 
 しかし、ミミとエヴァも黙ってはいられず、乗川兄弟の前に立ちはだかる。そのまま分断させたと同時に、一騎打ちの展開となってしまったのだ。

「「しまった!分断されてしまった!」」
「兄ちゃん、これまずいぞ!」
「俺としてもこれは予想外だ!分断されると……俺達は力が発揮できない……」

 まさかの分断された事態に、乗川兄弟は大量の冷や汗を流してしまう。まさに絶体絶命だ。
 乗川兄弟は二人一緒に戦うのが特徴で、タッグバトルとなると天下無敵と言えるだろう。しかし、シングルになると滅茶苦茶弱くなり、連携も出来ないとなればボコボコにされてしまう。その弱点をミミとエヴァは見抜いていたのだ。

「やはり分断されると弱くなるのは本当みたいね……」
「一騎打ちとなるならこっちの物!二人共、覚悟しなさい!」

 エヴァは太郎、ミミは次郎へと駆け出し、そのまま二人に対して攻撃を仕掛ける。
 エヴァはハイキックを繰り出し、太郎の側頭部に直撃。その衝撃で彼の頭に振動が走り、そのままフラフラと仰向けに倒れてしまったのだ。

「太郎がダウン!連携では強いのに、一人になるとこんなに弱かったのでしょうか?」
「くそ……次郎が側に居てくれたら……」

 太郎は次郎の方に視線を移すと、彼もまたミミによって追い詰められていた。ピンチになっているのは次郎も同じで、ミミに殴られまくって大ダメージを受けていたのだ。

「兄ちゃん、助けてくれ……」
「じ、次郎……今行くぞ……お前は必ず助けてやる!」

 太郎は次郎を助けようと立ち上がろうとするが、背後からエヴァによって捕まってしまう。すると彼女は両腕を回して太郎の腰をクラッチし、そのまま後方へと反り投げしたのだ。

「油断禁物よ!ジャーマンスープレックス!」
「ゲボラ!(ごめん……次郎……)」

 エヴァのジャーマンスープレックスが見事炸裂し、太郎はその衝撃で大ダメージを受けてしまう。受け身も取らずに頭から激突した為、そのまま即死してしまったのだ。

「相手にならなかったわね」
「兄ちゃん……!」 

 エヴァが手を叩いた直後、太郎はそのまま光の粒となって消滅。それを見た次郎の目から涙が流れてしまい、エヴァに対しての怒りが湧き上がってきたのだ。自身の側にいてくれた兄がいなくなってしまった以上、元凶を倒すと決意したのだろう。

「よくも兄ちゃんを!うおおおおお!」
「隙あり!」
「ガハッ!(しまった、俺とした事が……)」 

 次郎はエヴァに襲い掛かってくるが、ミミの背後からの斬撃で倒されてしまう。エヴァに執着心を出してしまった事が仇となってしまい、ミミに気付かないまま攻撃を受けてしまったのだ。
 当然次郎は仰向けに倒れていて、そのまま光の粒となって消滅してしまった。だが、太郎と次郎は何時までも一緒。どんな姿になっても、共に行動するだろう。

「乗川兄弟までやられた……零夜だけじゃなく二人の女も強いとは……」
「やはり俺達じゃ話にならないのか……」

 沼田と花山はこの光景に諦めムードが漂っていて、自分達が言っても返り討ちに遭うと実感してしまう。
 自分達の想像を遥かに超えているのを目の前にしたら、不安と諦めムードが高まってしまうのが殆ど。沼田と花山もそれに該当するのだ。

「馬鹿野郎!俺達は東を倒そうとしている!こんな状態で諦める奴が何処にいるんだ!」
「「坂巻……」」

 それを見た坂巻は我慢できなくなり、二人にやる気を出させようと叱咤激励をする。ここで諦めたら今までの苦労が水の泡となり、何もせずにやられて死んでしまうのがオチである。

「だったら俺達三人で一矢報おう!どんな惨めな姿でも構わない。自殺行為だろうが何だろうが、俺達は俺達のやるべき事に集中するだけだ!」

 坂巻からの激励を受けた沼田と花山は、直ぐに目を覚まして戦闘態勢に入る。たとえ実力の差があろうとしても、最後まで諦めずに立ち向かう事に意義があるのだ。

「そうだな……なら、正々堂々立ち向かわないとな」
「小細工無しで全力で戦う。それが俺達かもな!」

 沼田と花山は小細工無しと同時に、正々堂々と挑む事を決断。それに坂巻も頷いたと同時に、拳で零夜達に立ち向かい始めようとする。自殺行為と言えるが、立ち向かうにはこうするしか方法はないのだ。

「それでいい!よし、行くぞ!」
「「おう!」」

 坂巻、沼田、花山の三人は一斉に駆け出したと同時に、それぞれの必殺技を出そうとする。チャンスは今しか無いとなると、こうするしか方法はないのだ。

「クラッシュキャノン!」
「ナイフ乱れ投げ!」
「ジャグリングボム!」

 坂巻は手で生成した波動弾、沼田は次々と投げ飛ばしまくるナイフ、花山はジャグリングボール型の爆弾を、零夜に向けて投げてきた。三人はこの攻撃こそ最後の攻めだと感じているので、こうするしか方法はなかったのだ。

「全力で戦うなら、こちらもそうするのみ!手裏剣乱れ投げ!」

 零夜は波動弾、ナイフ、爆弾を次々と回避してしまい、手裏剣を三発投げ飛ばす。すると手裏剣は坂巻、沼田、花山の三人の額に直撃し、見事倒す事に成功したのだ。

(やっぱり……俺達では相手にならなかったな……)
(ああ……だが、最後に東と戦えて良かった……)
(やっぱり敵わないぜ……東零夜!)

 坂巻、沼田、花山の三人も消滅してしまい、残るは殿町とラスプーチンの二人になってしまった。一気に六人減らされてしまったデビルキラーズは、絶体絶命となってしまった。

「まさか俺一人だけとなったか……こうなったら、奥の手を使わせてもらう!」
「奥の手だと?」

 殿町の宣言に零夜が疑問に感じる中、突然試合終了のゴングが鳴る。全員がスクリーンの画面をよく見ると、ソニアがフラッグを手に入れていたのだ。更にラスプーチンの姿もなく、調べによれば彼はソニアに倒されて消滅したとの事だ。

『零夜、取ったぜ!』
「勝負ありだが……奥の手って何だ?」

 零夜達はジト目で殿町に視線を移し、彼は赤面しながらも前を向く。試合は終わってもまだここで諦める理由にはいかないのだ。

「本来はバトルオブスレイヤー以外でするつもりだったが、ここまで追い詰められたとなると使う必要があるからな。今こそ使わせてもらうぜ!禁忌発動!」

 殿町は自らのバングルを起動させ、とあるシステムアプリをクリックする。その直後に彼の身体が光に包まれ、大きな怪物の姿に変わってしまったのだ。
 頭には三本角、背中には悪魔の翼、身体は尻尾も生えている人型怪物に変化していた。しかも顔は般若の顔である。

「こ、この姿は大型怪物『ハンニャバル』!かつて滅ぼされた最恐最悪の怪物!まさか殿町が姿を変えるとは予想外だーっ!!」

 ラビリンの実況に観客達がざわついてしまい、零夜達は冷や汗を流しながらもハンニャバルに視線を移す。バトルオブスレイヤーには勝利したが、殿町が奥の手を使った事でエクストララウンドが始まろうとしていたのだった。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...