ヒーローズエイト〜神に選ばれし8人の戦士達による新八犬伝最強救世主伝説〜

蒼月丸

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第六章 山口観光騒動記

第二百十話 経験の差

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 羽田からの衝撃的な事実に零夜達が驚きを隠せず、観客達はざわついてしまう。まさかこのバトルオブスレイヤーにも、アークスレイヤーのルールが組み込まれていたのは予想外としか言えないのだ。

(奴等は失敗したら死ぬ掟となると、これは彼等の意見を尊重するべきね……それに零夜達はどう応えるのか……)

 トキコは真剣な表情をしつつ、心から思いながら零夜達に視線を移す。彼はすぐに落ち着きを取り戻したと同時に、真剣な表情をしながら羽田達に視線を移していた。

「お前等……本気なのか?」
「ああ……俺達は既に後がない……だからこそ、お前を倒してこの因縁を終わらせる!覚悟しろ!」
「おい!抜け駆けするな!」 

 羽田は素早く駆け出したと同時に、零夜に単独で立ち向かう。殿町が制止しようとしても、羽田の耳には届いていない。彼は既に零夜を倒す事に集中力を高めている為、何を言っても無駄なのだ。

「そっちがそのつもりなら、相手になるのみ!この戦いで終わらせてやるぜ!」

 零夜も素早く駆け出したと同時に、羽田にそのまま立ち向かい始める。すると羽田は右の拳に力を込め始め、この一発で勝負を決めようとしていく。その拳には水のオーラが纏わっていて、渦の様な回転力も増していた。

「こいつを喰らえ!アクアストレート!」
「あらよっと!」
「な!?回避された!?」 

 強烈な水の拳が零夜に襲い掛かるが、彼は素早い動きでしゃがみながら回避してしまう。渾身の技は見事回避されてしまい、羽田が驚くのも無理はない。
 更に攻撃の空振りによって、羽田は隙だらけとなってしまう。零夜はそれを見逃さずに反撃の一打を与えようとしていた。

「そこだ!」
「ガハッ!」
「まだまだ行くぞ!」

 零夜の強烈なアッパーが羽田の顎を捉え、見事打ち上げる事に成功。更にボディーや顔面にまでパンチやキックを打ち込んで次々と与えていく。普通の攻撃だが、その威力は凄まじいほどだ。

「アイツのパンチの威力、凄すぎるぞ!」
「どういう事だ!?まさか奴も鍛錬して強くなっていたというのか!?」

 この光景に乗川兄弟が呆然としてしまい、沼田達も驚きを隠せずにいた。強化された羽田がボコボコにされていて、十二年前と同じ展開になっていたのだ。
 エヴァは真剣な表情をしながら、その原因をすぐに察していた。

「その事だけど、零夜は毎日欠かさず基礎練をしていたわ」
「基礎練だと!?」

 エヴァからの説明に沼田達は驚いてしまうが、彼女は更に説明を始める。ここまでしなければ分かってくれる事はないと感じているのだ。

「彼は小学校時代の頃から鍛錬を繰り返し、さらなる強さを求めて強くなっていたの。今の強さはあなた達よりも遥かに超えている……当然こうなるのも無理ないわね……」
「マジか……だからあの様な強さを持っていたのか……」

 エヴァからの説明に対し、沼田達は呆然としながら何も言えなくなる。自分達だって必死に訓練した筈なのに、零夜はその倍をこなしながらも強くなっている。更に基礎練を長年欠かさず行っている為、その差は明らかになっているのだ。

「くそっ!奴を甘く見ていたとは……不覚としか言いようがない……」

 殿町は地面に拳を叩きながら悔しそうにしていて、それに沼田達も同様に俯いていた。零夜は自分達の想像を遥かに超えていて、さらなる成長をしている。それに比べて自分達は能力を過信していて、それが仇になったのは言うまでも無い。

「東も強くなっていた以上、苦戦するのは確定となるな。羽田、まだやれるか?」
「バッキャロー……俺がこの程度でやられるかよ……俺だってここで諦める理由にはいかねえんだ!アクアブラスター!」

 羽田は背中の翼を広げて空を飛び、両手から強烈な水流を発射した。その威力はとても強く、直撃したら大ダメージ確定だ。

「チッ!」

 零夜は間一髪で回避し、水流は地面に激突。すると強烈な威力で地面に跡ができてしまい、この光景にミミとエヴァはゾッと冷や汗を流してしまう。

「今のはすごい威力ね……下手したら死ぬかも……」
「ええ。彼等もまた……諦めずに成長しているみたいね」

 ミミとエヴァは真剣な表情をしながら殿町達を睨みつけ、彼等の背後には怨念と恨みのオーラが漂っていた。奴等もまた零夜を倒す信念があるからこそ、ここで諦める理由にはいかないと思っているだろう。

「その通りだ!俺達は東を倒す諦めの悪さがある!今度は逃すか!」
「そうはさせないわ!ストームキャノン!」
「しまった!」 

 羽田は零夜に向けて水流を再び出そうとするが、エヴァは風の波動弾を片手で生成して投げ飛ばす。牽制攻撃となる一撃はそのまま羽田へと向かい、彼の頭に当たろうとしていた。

「あれ?」
「弾き返された!?」 
 
 しかし……羽田の頭はスキンヘッドなので、波動弾は彼のツルツル頭で弾き返されてしまったのだ。スキンヘッドは光に当たると反射する事があるので、波動弾も弾き返す事が出来たのだ。

「おーっと!波動弾がツルツル頭で弾き返された!髪の毛が無いとこんな事までできるのですね」
「うるせー!人が気にしている事を言うな!」

 ラビリンの実況に羽田が吠えた直後、波動弾はエヴァの元へ向かってきた。このままだと直撃してダメージを受けてしまうが、彼女はすぐに次の手を打っていた。

「バリアシールド!」
「うわっ!今度はこっちに来たぞ!」

 エヴァは自身とミミの周りにバリアを展開し、波動弾を弾き返していた。そのまま波動弾は殿町達の元へ向かい、直撃して爆発を起こしてしまった。

「「「うわっ!」」」 

 殿町達は爆発によって飛ばされてしまい、地面を転がりながら倒れてしまう。少しのダメージしか与えていないが、吹き飛ばす威力はとても強いのだ。

「命拾いしたな。東の前にお前から倒してやる!」

 羽田はエヴァに向かってスピードを上げ、彼女に襲い掛かってくる。そのスピードはまさにスズメバチの様で、狙った獲物は逃さないのだ。

「そう来ると思ったわ!」
「何!?」
 
 しかしエヴァは平然としていて、羽田の突進を回避してしまう。エヴァの動体視力は超人レベルである為、相手の動きを予測する事ができるのだ。
 更に反撃として、強烈な肘打ちを羽田の脳天に直撃。彼は今の一撃でフラフラとなってしまい、正気に戻るには時間が掛かるのだ。

「これで終わらせるわ!ウルフスマッシャー!」
「ぐはっ!!」

 ラストは強烈なパンチが羽田の頬を殴り飛ばし、彼は勢いよく飛ばされてしまった。そのまま地面を引きずりながら倒れてしまい、立ち上がる事が出来なくなったのだ。

「東の他にも……強い奴がいたとは……俺の復讐も……ここまで……か……」

 羽田は光の粒となって消滅し、大空へと舞い上がる。同時に彼の死亡も確認され、電光掲示板にも羽田の映像が消えてしまった。

「羽田の死亡が確認!先制攻撃はブレイブペガサスだ!」

 ラビリンの実況に歓声が沸き起こり、会場全体が盛り上がり始める。しかし、敵チームの残りはあと七人。油断禁物となる戦いはまだまだ続く。
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