魔法学校の、あの部屋で会いましょう

nandemoarisa

文字の大きさ
2 / 12

秘密の近道

しおりを挟む
 よく見ると、この部屋は思ったより小さく、寮の部屋くらいしかなかった。
私たちの学校は2人部屋で、ベッドと机が2個ずつ入る程度の大きさしかない。この部屋は、それくらいの部屋だった。
その中に、人一人が寝転がれるくらいの一つの大きなソファとテーブルしかない。そのソファに座る彼の後ろには天井まで伸びる大きな窓があり、
外には植物が風に吹かれて揺れている。そういえば、今日は天気が良かったな。と、そこから差し込む日差しが彼の黒髪を照らしているのを見て思った。

「で、どこなの。ここは。」

一息置いてからそう聞くと、彼はテーブルにあったティーカップを手に持って一口飲んだ。
その所作は流石と言わんばかりに美しい。

「さあ。俺にもよく分からない。一週間前に突然現れたんだ。」

読んでいた本をパタリと閉じた。

「図書室へ行きたくて。急いでいたら、前から来た人にぶつかりそうになって、壁にぶつかって。気づいたらここに居た。」

私と全く同じかい。

「それからは、同じ場所でここに来たいと願うと、ここに来れるようになった。今は自分の部屋としてここを使っている。」

「それで、そこに私がたまたま入れてしまったと言うことね。」

「そのようだな。」

私の運の悪さ凄すぎる。

「因みに、あちらの壁から図書室へ直通で行けるぞ。図書室の奥の鏡から出られるようになっている。」

「え!そうなの!」

それは最高じゃないの!じゃあ、さっさとここをお暇させて頂こうじゃない!面倒事はごめんよ!
私はそちらの壁にタタタッと駆け寄った。

「おい。」

振り返ると、コールドウェルはやはり少し顔が赤い。こちらとは目線を合わそうとはせずに、偉そうに言った。

「ここのこと、誰にも言うなよ。」

そりゃあ、誰も来れない自分だけの秘密の部屋って最高よね。少し羨ましい。寮から図書館への近道にもなるし。
私は少し考えて言った。

「良いわよ。だけど、一つ条件があるわ。」

「何だ。」

「この部屋を通って図書室へ行っても良い許可をくれること。」

「何だって?」

「そうしたら、誰にも言わないわ!絶対秘密にする!」

コールドウェルは腕を組んで、少し考えた。そんな顔も結構美しい。

「わかった。許可する。」

「やったー!じゃ、そゆことで!」

 っていうか、別に本当にコールドウェルの部屋ってわけじゃないんだし、許可とかいらなかったのでは?
まあでも、彼が先に見つけたんだしね。仕方ない。
私は、するりと壁をすり抜けた。

その後、図書室なのに、鼻歌を歌ってしまうくらいには気分が良かった。
図書室の大きな窓から揺れる木々を見て、彼を思い出していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...