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45.独りよがりな
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どんな代償を払っても構わない。
なりふり構わずに、そう助けを求めた時から、全てが始まった。
ジルヴェストにとって唯一の異母弟たるキオの存在には、それだけの『価値』があったのだから。
天候を操るほどの強力な異能を自覚することもなく、大貴族であるオルデアス一族、それも最高血統を自負するディークに馴染もうとひたむきに努力する年の離れた『弟』は、ジルヴェストと唯一釣り合う『獣』だった。
軽く言えば相性、大仰に言うならば、それは運命という本能だ。
オルデアスの血統に潜む気質は、強い弱いの個人差は大きくあれど、意思でどうこうできるものではないのだから。
なかでも強い異能に恵まれた者であれば、自身と他者が『人間』か『獣』のどちらなのかの判別も、そう難しいことではない。だからこそ、一族内での婚姻もそれを考慮して整えられる。
互いの気質がぴたりと釣り合えば、まるで惹かれあうかのように満たされる。
そこまで完全に釣り合わずとも、多くのオルデアス一族は理由のない好感を互いに抱く程度の作用で、それを実感するくらいだが。
しかし強すぎる気質を持つ者にとって、それに釣り合う相手がまず存在しないことによる問題は大きかった。
当時最も『獣』の気質の強かったエルバルトがそうだったように、強い『人間』の気質を持つジルヴェストにも、真に釣り合う存在はいなかった。
挙句、『獣』よりも『人間』の方が、相手がいないことに対して強い欠乏感を抱くのだ。
物心ついた時から、決して満たされない焦燥感を抱え続けた子供が、年齢不相応の冷めた大人びた性格となっても仕方ない。
だから、父親が禁を犯した証である異母弟との出会いは、ジルヴェストにとって衝撃だった。
その瞬間まで、自分を取り巻く世界の全てをどこか遠く感じていたはずなのに、視界が一気に色づいたのだから。
生まれて初めて覚えた、何一つ不足なく満たされた幸福感に歓喜する本能。それが血を分けた弟であることの、戸惑い。
その全てを飲み込みながら、ぎこちなく抱きしめた小さな体を、生涯守ると誓った。
これが本能に支配されているだけだとしても、『弟』として、家族として、この少年を必ず幸せにすると。
それは、名門大貴族の当主にしてオルデアス家の頂点に立つ男にとって、さほど難しいことでもなかった。
下町でぎりぎり飢えずに済むかどうかの暮らしをしていた子供に、ありとあらゆるものを惜しみなく与えることができるのだから。
本能で好む相手同士だからか、唯一の家族だからか、純粋に『兄』としてキオから慕われる日々は、ただただ穏やかな幸福をもたらしてくれた。
突然生活環境が変わったというのに、ひたむきにそれに馴染もうとする健気な姿が、愛おしくて仕方なかった。
オルデアス家当主である重圧も、緩やかに衰退していく一族への危機感も、尽きぬ悩みと迷いを無機質な美貌の下に独り抱いていた青年にとって、その時間は何にも代えがたいものだった。
と同時に、少しずつ成長していくキオを最も間近で見つめるうちに、いずれは自分の下から手放さなければという思考も、ジルヴェストにはあった。
でなければ惹き合う本能がいつかきっと、キオを傷つけるだろうと理解していたから。
理性も倫理も立場も剝ぎ取ってしまえば、一人の人間として唯一人を愛したい。心も体も全てを繋げて、溶け合うほどに愛したい。
まだオルデアスの気質すら理解できていないキオに、そんな欲を孕んだ想いを気づかれるわけにはいかなかった。
いくら互いが奇跡的に釣り合う『獣』と『人間』であろうと、異母とはいえ兄弟なのだから。
弟の、一人の人間としての幸せを願うなら、『家族』として愛せるだけでいい――。
だがジルヴェストがそう強く自制しながらも、なるべく強い『人間』の気質を持つ、気立ての良い令嬢を見繕い始めた頃に、それは起きた。
突然キオが倒れたと報せを受けてから、日を追うごとに少しずつ最愛の弟が弱っていく様を、ジルヴェストはただ見ていることしかできなかった。
そうして、どうにかキオの前では平静を保ちながらも、初めての泣き叫びたいほどの焦燥と恐怖のなか、医術の覚えのある一族を総動員して探り当てた要因に愕然とした。
怪我でも病でもなく、オルデアスの証である異能を宿す血が、キオの体にとっては毒となっていくなどと。
一族ではない相手との間に生まれた子は、短命のうちに惨たらしい死を迎えることが多い――。
稀有な血統を誇るオルデアス家が、可能な限り、一族内で婚姻を整えるようになったのもそれが最たる理由だったのだろう。
ジルヴェストがそう気づくまでに、時間はかからなかった。
少しずつ増していく苦痛にただ耐えるしかない弟を、根本的に救う手立てはない。
かつてどれだけの一族が、愛する子供や兄弟姉妹を前に、自分の無力さを呪ったのだろうか。
だから過酷な運命を課せられる子供が、これ以上存在しないように、重く戒めを強いたのだろう。
オルデアスの血を持たぬ者との子をなすことは、禁忌とす――と。
ただそれが後世まで正確に伝わらなかったのは、貴族としての外聞のためか、血統の欠陥を隠蔽する意図があったのか。
いずれにしても、万策尽きたジルヴェストに残された希望は、一つだけだった。
オルデアス家当主という立場にありながら、一族の禁を犯した張本人にして――『全ての未来を見通す』異能を持つ、実の父親エルバルト、その人に迷わず連絡を取った。
『獣』と『人間』という強い気質の意味でも、父子としての信頼関係の上でも、かつてのエルバルトとジルヴェストの仲は決して険悪ではなかった。
だからこそ父がなぜ禁を犯し、あまつ自らそれを暴露し、ジルヴェスト自身に追放まがいの処罰を下させたのか、ずっと理解できなかった。
オルデアスの中ですら異質であるその異能を教えたうえで、なぜそのような行動を取ったのか。
理解不能な父の暴挙は、自分の出生によって死んだ母親の件についても、ジルヴェストへ小さくはない疑念を抱かせてしまった。
母の死が見えていたのならば、なぜ、救わなかったのかと。
事実上の追放と同時にそんな父との接触を断ったのも、エルバルト本人から「その方が、お前の『道』にはいい」と厳命された以上に、心情的な距離が生まれていたからだ。
それでも、自分の手に負えない事態を前に、何の解決策も見つけられない絶望的な状況の中で、ジルヴェストはエルバルトを頼った。
――だというのに、先代オルデアス家当主の返答は冷たいものだった。
これがキオにとっても、最も幸福な結末なのだ、と。
気だるげにだらしなくソファーに横たわったまま、諦念に満ちた覇気のない顔で、「あと半年ほど、兄として最期まで弟の傍にいてやりなさい」と呟く父を前に、ジルヴェストは初めて声を荒らげた。
こうなると知っていて、禁を犯したのかと。
鏡越しの会話でなければ、その顔に拳を叩き込んでいたかもしれない。
そんな一時の激高の後に、当主命令という体をとりながらも『キオが幸せに、長く生きられる未来』を何としてでも見つけるよう、エルバルトへ懇願するほかなかったが。
父が望むなら当主の座も、ディークの長の座も、爵位も、受け継いだものも、手に入れたものも、全てを明け渡してもいい。
だからただ、どうか、ただ一人の弟が、人並みの時間を幸せに生きていけるように――。
全ての発端となった罪悪感か、愛息子の初めての我が儘を無下にできなかったのか、エルバルトは渋りながらも「あまり期待はするな」とため息交じりに答えてから、貴重な古酒を所望した。
あらゆる手段を用いて、半日と経たず王都から辺境へ送り届けられた三百年ものの古酒がどうなったのかは、ジルヴェストは今も関知していない。
ただ、何らかの役割を果たしたことだけは確かだったのだろう。
父から子へと『朗報』が届けられたのは、それから僅か三日後のことだったのだから。
そうして先日とは別人かのように居住まいを正し、色の違う双眸に再び光を灯した男は、ジルヴェストへ逆に懇願した。
『君の願う道の先に、わたしの望みが初めて叶う。わたしを信じ、その力を貸してほしい』
その日父の口から語られた情報は、決して充分ではなかった。
たとえ自らの血が毒となる体質を一時的に改善しても、それが運命づけられているかのように、キオにはどんな未来でも近い死が待ち受けている。
その全てを捻じ伏せ、キオが人並みに生きていられる別の未来へと続く道を築くには、兄弟としての固く結ばれた親愛関係すらをも終わらせなければならないこと。
オルデアス家当主の座を誰に明け渡すことなく、常に最善の道を模索し、己で思考し決断し続けること。
それが何年続くのかも、どこが終わりなのかも、あらかじめジルヴェストは知ってはいけない。
エルバルトが『終わり』を告げる、その時が訪れるまでは。
なかでも禁忌に等しい制約は、愛を告げることだとエルバルトは言葉を継いだ。
手段としてではあれど、心の底から求め合う、愛する者と体を重ねるというのに、決して『愛』を口にしてはいけない。確信させてもいけない。
どれだけ別の道を探ろうと、異母兄から弟へ「愛している」の一言が贈られた瞬間、それが死への引き金となる、と。
それでも、提示された手段と制約をジルヴェストが全て受け入れたのは、エルバルトの言葉を信じた――いや、信じるほかなかったからだ。
父の傀儡にただ成り下がるだけかもしれないとしても、その望みに縋ると、決めた。
かくして、『人間』は愛する『獣』を組み伏せた。
わざと傷つける言葉を口にしながら、一欠片の愛情も見せずに、まだ華奢な少年の躰を抱いた。
わけのわからぬまま、されるがまま、それでもジルヴェストへ応えるように啼く獣を、哀れなほど愛おしく想いながら。
寵愛から冷遇へ、親愛なる兄から支配者たる飼い主へ。
待遇と立場を変え、誰よりも愛しい存在を『欠陥品』と蔑んでみせながら、その延命を図り続けた。
苦痛に苛まれながら短命に終わるという未来を捻じ伏せ、キオが長く幸せに生きられる。その未来に、たどり着けるまで。
それが叶うのならば、愛する者からどれだけ憎まれようが恨まれようが、後悔はない。
ジルヴェストにとって、それだけの『価値』がキオにはある。
キオという愛しい異母弟は、生きて幸せになるのが当然なのだ。
他ならぬジルヴェストの、たった一人の弟なのだから。
全てはただ、それだけの理由――。
寝室から扉続きの小さな応接部屋で、ソファーに向かい合って座る異母兄の口からようやく明かされた真相は、キオ一人では到底聞き出せなかっただろう。
さすがに相手を床に押し倒したままでする話ではない、と場を仕切り直してくれたフレンがキオに寝間着を着せ、どこか気が抜けたかのように一人で立ち上がることもままならないジルヴェストに肩を貸し、まずは二人を向き合わせてくれたのだ。
とはいえ、この十二年近く熟成された感情が暴れ回るキオの口が饒舌に回るはずもなければ、聞かれたことにしか答えようとしない男の本心を暴露させるのには、かなりの労力を要した。
部外者の立場だというのに、キオの心情を察し、秘されたジルヴェストの事情を思い量りながら、フレンが時折静かに、されど的確に口を出す。
そのおかげで、初めて兄の本心に触れたキオは、よくぞここまでとフレンの成長に感嘆しながら心底感謝もしていた。
と同時に、自分たち兄弟のこんな話を聞かせてよかったのかと、今更ながら頭の隅に不安がひっそりと過ったものの……まだ今は、それどころではない。
「じゃあ今まで……兄様は全部、オレのために……」
疎まれていなかった。
必要とされていた。
――――こんなにも、愛されていた。
全てを咀嚼しきれたわけではなくとも、その確かな核心だけでキオの視界はまた勝手に潤んでぼやけていってしまう。
しかし、その向こうで疲れたように小さく微笑んだ美しい異母兄が口にした言葉に、反射的に肩を強張らせた。
「お前のため?ふ……私を愚弄するなよ、キオ」
低く優しい声音で呟かれる、辛辣な言葉。
思わず見開かれた薄紫の瞳から一つ、小さな雫が頬を伝う。
その様にキオの隣に座るフレンは腰を浮かしかけたが、続くジルヴェストの言葉に無言のまま、体勢を元に戻した。
「この私が、誰かを理由に自分の為したことを弁明する男だと?私はただ、私の望みのためだけに、お前を一方的に巻き込んだに過ぎない」
まるで小さな子供を諭すように、穏やかな声音は言い放つ。
「お前のいない世界で生きることに、私が、耐えられなかった。これはただの、独りよがりな執着だ」
それを単なる『愛』などと思ってくれるな、と言うように。
そんな綺麗な言葉で、取り繕ってはいけない。
真にキオの幸せを望むなら、兄としての一線を決して越えるべきではなかった。まだ幼さすら残る少年を、家族として看取ってやるべきだった。
長く幸せに生きてほしいと願いながら、キオを長年苦しめた事実を、ジルヴェストは自らそう断じた。
愛ではなく、執着なのだと。だから――。
「キオ。お前はもう、できる限り私から離れてフレデリック殿下の傍にいればいい。私に抱かれるのは耐え難いだろうが、今後はなるべく記憶に残らぬよう善処はする」
これからは心から愛する者と共に在ればいいのだと告げる男に、キオは知らず、膝に置いた拳をきつく握りしめる。
今ならば、キオにだって少しはジルヴェストの思考を追える。
きっとこの兄は、初めて自分を抱いた時から決めていたのだ。
いつか、ジルヴェストの望む未来にたどり着いたその時は、キオの傍にいるのは自分ではないと。
延命のためとはいえ異母弟に肉体関係を強いたことも、何よりキオの心を傷つけ続けてきたことを、ジルヴェスト自身が罪深く思っているから。
それなのに後悔などいうまでもなく、許しすら到底請わない。
全ては自分が望んだだけのことだと、キオには何一つ負い目すら背負わせてくれない。
どこまでも高潔で、強く、自分勝手な、異母兄。
でもそれが、キオの愛するジルヴェストだった。
「オレがいつ、貴方なしで平気だと言いましたか。オレは不出来な欠陥品なので、愛してくれるのが『一人』じゃ満足できないんです。二人がかりで愛してくれないと……死にますよ」
愛してくれる『一人』は、一晩かけて言葉を尽くした甲斐があったと、キオの隣で嬉しそうに微笑みを浮かべている。
もう一人は、キオと向かい合ったまま困り顔のまま眉をひそめてみせる。
当然だ。冗談でも簡単に死を口にする弟に、彼だけは笑えるはずがない。
「キオ……」
そう窘めるように低い声音で名を呼ばれても、もう萎縮する理由がキオにはなかった。
ただとっくに許容量を超えきっている現状に、頭の中は一直線に純粋な望みへと染まりきっていくだけ。
「貴方の一番近くで愛されていなければ、オレは幸せじゃない。どうするんです?独りよがりな執着の責任とやら、取ってくれるんでしょう?オレの、ジル兄様」
自分の口からよくもこんな言葉が出てくるものだ、と心の隅で驚きながらも、キオは笑っていた。
ここでジルヴェストに手放されたら、それこそ死んでしまうという台詞に真実味しかない、悲愴な泣き顔で。
勿論それが、望みを叶えるために最も効果的な一手となることを熟知しているが故にだ。
理性も倫理も立場も捨てて、キオを愛し続けてくれた男が、自分を不幸にするはずがないのだから。
そうして静かな沈黙がしばらく部屋を満たした後、ため息のような震える吐息交じりの声音が返した答えこそが、キオの未来を決定づけたのかもしれない。
「――――お前はこの私の、弟だ。誰よりも、幸せになれるに決まっている。私が、そうするのだから」
雪のような白銀の髪と顔を覆う右手で、俯きながら口を動かした男の表情は隠されている。
けれど、その美しい頤を一滴の雫が流れ落ちていった様を、キオの薄紫の瞳は確かに捉えていた。
なりふり構わずに、そう助けを求めた時から、全てが始まった。
ジルヴェストにとって唯一の異母弟たるキオの存在には、それだけの『価値』があったのだから。
天候を操るほどの強力な異能を自覚することもなく、大貴族であるオルデアス一族、それも最高血統を自負するディークに馴染もうとひたむきに努力する年の離れた『弟』は、ジルヴェストと唯一釣り合う『獣』だった。
軽く言えば相性、大仰に言うならば、それは運命という本能だ。
オルデアスの血統に潜む気質は、強い弱いの個人差は大きくあれど、意思でどうこうできるものではないのだから。
なかでも強い異能に恵まれた者であれば、自身と他者が『人間』か『獣』のどちらなのかの判別も、そう難しいことではない。だからこそ、一族内での婚姻もそれを考慮して整えられる。
互いの気質がぴたりと釣り合えば、まるで惹かれあうかのように満たされる。
そこまで完全に釣り合わずとも、多くのオルデアス一族は理由のない好感を互いに抱く程度の作用で、それを実感するくらいだが。
しかし強すぎる気質を持つ者にとって、それに釣り合う相手がまず存在しないことによる問題は大きかった。
当時最も『獣』の気質の強かったエルバルトがそうだったように、強い『人間』の気質を持つジルヴェストにも、真に釣り合う存在はいなかった。
挙句、『獣』よりも『人間』の方が、相手がいないことに対して強い欠乏感を抱くのだ。
物心ついた時から、決して満たされない焦燥感を抱え続けた子供が、年齢不相応の冷めた大人びた性格となっても仕方ない。
だから、父親が禁を犯した証である異母弟との出会いは、ジルヴェストにとって衝撃だった。
その瞬間まで、自分を取り巻く世界の全てをどこか遠く感じていたはずなのに、視界が一気に色づいたのだから。
生まれて初めて覚えた、何一つ不足なく満たされた幸福感に歓喜する本能。それが血を分けた弟であることの、戸惑い。
その全てを飲み込みながら、ぎこちなく抱きしめた小さな体を、生涯守ると誓った。
これが本能に支配されているだけだとしても、『弟』として、家族として、この少年を必ず幸せにすると。
それは、名門大貴族の当主にしてオルデアス家の頂点に立つ男にとって、さほど難しいことでもなかった。
下町でぎりぎり飢えずに済むかどうかの暮らしをしていた子供に、ありとあらゆるものを惜しみなく与えることができるのだから。
本能で好む相手同士だからか、唯一の家族だからか、純粋に『兄』としてキオから慕われる日々は、ただただ穏やかな幸福をもたらしてくれた。
突然生活環境が変わったというのに、ひたむきにそれに馴染もうとする健気な姿が、愛おしくて仕方なかった。
オルデアス家当主である重圧も、緩やかに衰退していく一族への危機感も、尽きぬ悩みと迷いを無機質な美貌の下に独り抱いていた青年にとって、その時間は何にも代えがたいものだった。
と同時に、少しずつ成長していくキオを最も間近で見つめるうちに、いずれは自分の下から手放さなければという思考も、ジルヴェストにはあった。
でなければ惹き合う本能がいつかきっと、キオを傷つけるだろうと理解していたから。
理性も倫理も立場も剝ぎ取ってしまえば、一人の人間として唯一人を愛したい。心も体も全てを繋げて、溶け合うほどに愛したい。
まだオルデアスの気質すら理解できていないキオに、そんな欲を孕んだ想いを気づかれるわけにはいかなかった。
いくら互いが奇跡的に釣り合う『獣』と『人間』であろうと、異母とはいえ兄弟なのだから。
弟の、一人の人間としての幸せを願うなら、『家族』として愛せるだけでいい――。
だがジルヴェストがそう強く自制しながらも、なるべく強い『人間』の気質を持つ、気立ての良い令嬢を見繕い始めた頃に、それは起きた。
突然キオが倒れたと報せを受けてから、日を追うごとに少しずつ最愛の弟が弱っていく様を、ジルヴェストはただ見ていることしかできなかった。
そうして、どうにかキオの前では平静を保ちながらも、初めての泣き叫びたいほどの焦燥と恐怖のなか、医術の覚えのある一族を総動員して探り当てた要因に愕然とした。
怪我でも病でもなく、オルデアスの証である異能を宿す血が、キオの体にとっては毒となっていくなどと。
一族ではない相手との間に生まれた子は、短命のうちに惨たらしい死を迎えることが多い――。
稀有な血統を誇るオルデアス家が、可能な限り、一族内で婚姻を整えるようになったのもそれが最たる理由だったのだろう。
ジルヴェストがそう気づくまでに、時間はかからなかった。
少しずつ増していく苦痛にただ耐えるしかない弟を、根本的に救う手立てはない。
かつてどれだけの一族が、愛する子供や兄弟姉妹を前に、自分の無力さを呪ったのだろうか。
だから過酷な運命を課せられる子供が、これ以上存在しないように、重く戒めを強いたのだろう。
オルデアスの血を持たぬ者との子をなすことは、禁忌とす――と。
ただそれが後世まで正確に伝わらなかったのは、貴族としての外聞のためか、血統の欠陥を隠蔽する意図があったのか。
いずれにしても、万策尽きたジルヴェストに残された希望は、一つだけだった。
オルデアス家当主という立場にありながら、一族の禁を犯した張本人にして――『全ての未来を見通す』異能を持つ、実の父親エルバルト、その人に迷わず連絡を取った。
『獣』と『人間』という強い気質の意味でも、父子としての信頼関係の上でも、かつてのエルバルトとジルヴェストの仲は決して険悪ではなかった。
だからこそ父がなぜ禁を犯し、あまつ自らそれを暴露し、ジルヴェスト自身に追放まがいの処罰を下させたのか、ずっと理解できなかった。
オルデアスの中ですら異質であるその異能を教えたうえで、なぜそのような行動を取ったのか。
理解不能な父の暴挙は、自分の出生によって死んだ母親の件についても、ジルヴェストへ小さくはない疑念を抱かせてしまった。
母の死が見えていたのならば、なぜ、救わなかったのかと。
事実上の追放と同時にそんな父との接触を断ったのも、エルバルト本人から「その方が、お前の『道』にはいい」と厳命された以上に、心情的な距離が生まれていたからだ。
それでも、自分の手に負えない事態を前に、何の解決策も見つけられない絶望的な状況の中で、ジルヴェストはエルバルトを頼った。
――だというのに、先代オルデアス家当主の返答は冷たいものだった。
これがキオにとっても、最も幸福な結末なのだ、と。
気だるげにだらしなくソファーに横たわったまま、諦念に満ちた覇気のない顔で、「あと半年ほど、兄として最期まで弟の傍にいてやりなさい」と呟く父を前に、ジルヴェストは初めて声を荒らげた。
こうなると知っていて、禁を犯したのかと。
鏡越しの会話でなければ、その顔に拳を叩き込んでいたかもしれない。
そんな一時の激高の後に、当主命令という体をとりながらも『キオが幸せに、長く生きられる未来』を何としてでも見つけるよう、エルバルトへ懇願するほかなかったが。
父が望むなら当主の座も、ディークの長の座も、爵位も、受け継いだものも、手に入れたものも、全てを明け渡してもいい。
だからただ、どうか、ただ一人の弟が、人並みの時間を幸せに生きていけるように――。
全ての発端となった罪悪感か、愛息子の初めての我が儘を無下にできなかったのか、エルバルトは渋りながらも「あまり期待はするな」とため息交じりに答えてから、貴重な古酒を所望した。
あらゆる手段を用いて、半日と経たず王都から辺境へ送り届けられた三百年ものの古酒がどうなったのかは、ジルヴェストは今も関知していない。
ただ、何らかの役割を果たしたことだけは確かだったのだろう。
父から子へと『朗報』が届けられたのは、それから僅か三日後のことだったのだから。
そうして先日とは別人かのように居住まいを正し、色の違う双眸に再び光を灯した男は、ジルヴェストへ逆に懇願した。
『君の願う道の先に、わたしの望みが初めて叶う。わたしを信じ、その力を貸してほしい』
その日父の口から語られた情報は、決して充分ではなかった。
たとえ自らの血が毒となる体質を一時的に改善しても、それが運命づけられているかのように、キオにはどんな未来でも近い死が待ち受けている。
その全てを捻じ伏せ、キオが人並みに生きていられる別の未来へと続く道を築くには、兄弟としての固く結ばれた親愛関係すらをも終わらせなければならないこと。
オルデアス家当主の座を誰に明け渡すことなく、常に最善の道を模索し、己で思考し決断し続けること。
それが何年続くのかも、どこが終わりなのかも、あらかじめジルヴェストは知ってはいけない。
エルバルトが『終わり』を告げる、その時が訪れるまでは。
なかでも禁忌に等しい制約は、愛を告げることだとエルバルトは言葉を継いだ。
手段としてではあれど、心の底から求め合う、愛する者と体を重ねるというのに、決して『愛』を口にしてはいけない。確信させてもいけない。
どれだけ別の道を探ろうと、異母兄から弟へ「愛している」の一言が贈られた瞬間、それが死への引き金となる、と。
それでも、提示された手段と制約をジルヴェストが全て受け入れたのは、エルバルトの言葉を信じた――いや、信じるほかなかったからだ。
父の傀儡にただ成り下がるだけかもしれないとしても、その望みに縋ると、決めた。
かくして、『人間』は愛する『獣』を組み伏せた。
わざと傷つける言葉を口にしながら、一欠片の愛情も見せずに、まだ華奢な少年の躰を抱いた。
わけのわからぬまま、されるがまま、それでもジルヴェストへ応えるように啼く獣を、哀れなほど愛おしく想いながら。
寵愛から冷遇へ、親愛なる兄から支配者たる飼い主へ。
待遇と立場を変え、誰よりも愛しい存在を『欠陥品』と蔑んでみせながら、その延命を図り続けた。
苦痛に苛まれながら短命に終わるという未来を捻じ伏せ、キオが長く幸せに生きられる。その未来に、たどり着けるまで。
それが叶うのならば、愛する者からどれだけ憎まれようが恨まれようが、後悔はない。
ジルヴェストにとって、それだけの『価値』がキオにはある。
キオという愛しい異母弟は、生きて幸せになるのが当然なのだ。
他ならぬジルヴェストの、たった一人の弟なのだから。
全てはただ、それだけの理由――。
寝室から扉続きの小さな応接部屋で、ソファーに向かい合って座る異母兄の口からようやく明かされた真相は、キオ一人では到底聞き出せなかっただろう。
さすがに相手を床に押し倒したままでする話ではない、と場を仕切り直してくれたフレンがキオに寝間着を着せ、どこか気が抜けたかのように一人で立ち上がることもままならないジルヴェストに肩を貸し、まずは二人を向き合わせてくれたのだ。
とはいえ、この十二年近く熟成された感情が暴れ回るキオの口が饒舌に回るはずもなければ、聞かれたことにしか答えようとしない男の本心を暴露させるのには、かなりの労力を要した。
部外者の立場だというのに、キオの心情を察し、秘されたジルヴェストの事情を思い量りながら、フレンが時折静かに、されど的確に口を出す。
そのおかげで、初めて兄の本心に触れたキオは、よくぞここまでとフレンの成長に感嘆しながら心底感謝もしていた。
と同時に、自分たち兄弟のこんな話を聞かせてよかったのかと、今更ながら頭の隅に不安がひっそりと過ったものの……まだ今は、それどころではない。
「じゃあ今まで……兄様は全部、オレのために……」
疎まれていなかった。
必要とされていた。
――――こんなにも、愛されていた。
全てを咀嚼しきれたわけではなくとも、その確かな核心だけでキオの視界はまた勝手に潤んでぼやけていってしまう。
しかし、その向こうで疲れたように小さく微笑んだ美しい異母兄が口にした言葉に、反射的に肩を強張らせた。
「お前のため?ふ……私を愚弄するなよ、キオ」
低く優しい声音で呟かれる、辛辣な言葉。
思わず見開かれた薄紫の瞳から一つ、小さな雫が頬を伝う。
その様にキオの隣に座るフレンは腰を浮かしかけたが、続くジルヴェストの言葉に無言のまま、体勢を元に戻した。
「この私が、誰かを理由に自分の為したことを弁明する男だと?私はただ、私の望みのためだけに、お前を一方的に巻き込んだに過ぎない」
まるで小さな子供を諭すように、穏やかな声音は言い放つ。
「お前のいない世界で生きることに、私が、耐えられなかった。これはただの、独りよがりな執着だ」
それを単なる『愛』などと思ってくれるな、と言うように。
そんな綺麗な言葉で、取り繕ってはいけない。
真にキオの幸せを望むなら、兄としての一線を決して越えるべきではなかった。まだ幼さすら残る少年を、家族として看取ってやるべきだった。
長く幸せに生きてほしいと願いながら、キオを長年苦しめた事実を、ジルヴェストは自らそう断じた。
愛ではなく、執着なのだと。だから――。
「キオ。お前はもう、できる限り私から離れてフレデリック殿下の傍にいればいい。私に抱かれるのは耐え難いだろうが、今後はなるべく記憶に残らぬよう善処はする」
これからは心から愛する者と共に在ればいいのだと告げる男に、キオは知らず、膝に置いた拳をきつく握りしめる。
今ならば、キオにだって少しはジルヴェストの思考を追える。
きっとこの兄は、初めて自分を抱いた時から決めていたのだ。
いつか、ジルヴェストの望む未来にたどり着いたその時は、キオの傍にいるのは自分ではないと。
延命のためとはいえ異母弟に肉体関係を強いたことも、何よりキオの心を傷つけ続けてきたことを、ジルヴェスト自身が罪深く思っているから。
それなのに後悔などいうまでもなく、許しすら到底請わない。
全ては自分が望んだだけのことだと、キオには何一つ負い目すら背負わせてくれない。
どこまでも高潔で、強く、自分勝手な、異母兄。
でもそれが、キオの愛するジルヴェストだった。
「オレがいつ、貴方なしで平気だと言いましたか。オレは不出来な欠陥品なので、愛してくれるのが『一人』じゃ満足できないんです。二人がかりで愛してくれないと……死にますよ」
愛してくれる『一人』は、一晩かけて言葉を尽くした甲斐があったと、キオの隣で嬉しそうに微笑みを浮かべている。
もう一人は、キオと向かい合ったまま困り顔のまま眉をひそめてみせる。
当然だ。冗談でも簡単に死を口にする弟に、彼だけは笑えるはずがない。
「キオ……」
そう窘めるように低い声音で名を呼ばれても、もう萎縮する理由がキオにはなかった。
ただとっくに許容量を超えきっている現状に、頭の中は一直線に純粋な望みへと染まりきっていくだけ。
「貴方の一番近くで愛されていなければ、オレは幸せじゃない。どうするんです?独りよがりな執着の責任とやら、取ってくれるんでしょう?オレの、ジル兄様」
自分の口からよくもこんな言葉が出てくるものだ、と心の隅で驚きながらも、キオは笑っていた。
ここでジルヴェストに手放されたら、それこそ死んでしまうという台詞に真実味しかない、悲愴な泣き顔で。
勿論それが、望みを叶えるために最も効果的な一手となることを熟知しているが故にだ。
理性も倫理も立場も捨てて、キオを愛し続けてくれた男が、自分を不幸にするはずがないのだから。
そうして静かな沈黙がしばらく部屋を満たした後、ため息のような震える吐息交じりの声音が返した答えこそが、キオの未来を決定づけたのかもしれない。
「――――お前はこの私の、弟だ。誰よりも、幸せになれるに決まっている。私が、そうするのだから」
雪のような白銀の髪と顔を覆う右手で、俯きながら口を動かした男の表情は隠されている。
けれど、その美しい頤を一滴の雫が流れ落ちていった様を、キオの薄紫の瞳は確かに捉えていた。
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ぎゃあぁぁぁぁ〜
こんなに早くおかわり更新があるとは……オネダリ感想効果は偉大だぁ。。。
:(;゙゚'ω゚'):
先生がこんなに頑張っていらっしゃるなら、応援する私たち(勝手に巻き込み複数形)も頑張らないと!
やはり……かくなる上はムーンさんの高尚レビューに手を出して、ボスにワイロを渡さないといけないですね(←犯罪か!)
でも、アレってTOPページの一覧に載るんですよね?
どっ、どうしよう!!
ドレスアップしなければ!!!(←早く書け)
えーと、近いうちに読み手さんが一番集まる時間帯にチャレンジしたいと思います
( ̄^ ̄)ゞ
(ただ、沼の住人が集まる時間帯っていつなんだろう?)
でも先生、更新は号泣するほど嬉しいのですが、くれぐれも先生の体調第一でお願いしますね!
(>人<;)
完結まで伴走する覚悟は、既に固めていますので!!(←キラーん)
更新、ゴチでした!!!
m(_ _)m
こちらこそ熱く応援して頂き嬉しい限りです~!!
ぼちぼち更新頻度上げないと💦と思っていたところでしたが、ご感想も大変励みになります(≧▽≦)
気持ちとしては完結までこのまま転がっていきたく…(と言いつつ何度か失敗している前科がw)
あちらでのアレ(笑)も頂けるなら大変嬉しいですが、どうぞご負担のない範囲で、あのその、ぜひ3人の着地点までお気楽にお付き合い頂ければ嬉しいです♡
ご感想ありがとうございました(*´▽`*)
キタ〜!更新!!
(≧∀≦)
もう何回もリピート読してますが、続きが読みたくて、そろそろオネダリ感想を書くべきなのか、ムーンさんでレビューという高尚なものに手を出して、先生にワイロ(笑)を渡すべきなのか、真剣に悩んでおりましたので、更新とっても嬉しいです。
この作品、大好きなので&続きがものすごく気になるので、1年に1回でもいいので(欲を言えば3回くらい?)更新お願いします……もちろん、先生のご都合でいいので。
大人しくマテをして、お待ちしてます!
(>人<;)
ご感想本当にありがとうございます!亀更新になってしまっておりますのに、お付き合い頂けていて心底嬉しい限りです。ありがたや…ありがたや…
あ、オネダリもワイロも喜んでホイホイ受取し(自主規制☆)
いえもう既に嬉しいお言葉の数々を頂けまして、やる気が滾りますとも~!できれば夏頃…さ、最悪でも年内完結を一応は夢見ておりますので、今後とも生暖かく見守って頂けましたら幸いです。
何卒よろしくお願いいたします~!
すごく面白くて一気に読んでしまいました。お話の設定も、作り込まれた世界観も、出てくる登場人物も全部大好きです。どうか3人とも幸せなハッピーエンドを迎えられますように!
(個人的には一妻多夫大賛成です)
感想を書くのは初めてなので文が変かもしれないですが、応援してる気持ちが伝われば嬉しいです!!
わ、わ!とても嬉しいご感想をありがとうございます!!
色々とありましてのらりくらりと亀の歩みで進んでおりますが、大変励みになります。
ぜひ3人の結末をお気長に見守って頂けましたら幸いです♡
(そろそろ更新再開を画策しておりますのでっ…本当あともう少しなのでっ(笑))
ご声援本当にありがとうございますー!!