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出逢い そして救出
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翌朝8時前には佐伯がマンションを訪れた。
挨拶もそこそこにゲストルームに入れば、点滴の留置針を確認し、熱を計っている。
『37.6℃か。だいぶ下がったね。』
昨日ここに運び込んだ時よりも、幾分顔色がいい。
それでも、まだ目を覚ます気配はない。
『野生動物は、ただただ眠って癒すだろ?』
だから人間も同じなのだと言う。
それでも少年の様子から、ほんの少しでも回復の兆しを感じたのだろう。佐伯は少年が目を覚まさないうちに、と話し始めた。
『結果から言えば、この子は長谷美由紀の子供だよ』
やはり、とも思うが何故?とも思う。
佐伯の同期である渡瀬医師の診察で、美由紀は重度の脅迫神経症であると診断された。
『わかりやすく言えば、度を越した潔癖症だね』
それが原因で、血が出るまで手を洗っていたのだと言う。
それと、と佐伯の説明はつらつらと続く。
美由紀は重度の脅迫神経症であると共に、程度はわからないながらも知的障がいがあると言うのだ。
周囲との意志疎通は苦手だがある程度可能。けれど一般的な30代の女性が持ち合わせている知性は美由紀には大きく欠落している、と言うのが診察とカウンセリングで明らかになったそうだ。
美由紀が16年前アパートで生活を共にしていたのは
美由紀が『タツヤ』と呼ぶ青年だったらしい。
『タツヤ』のフルネームは美由紀に聞いても、わからないのだと言う。
その『タツヤ』から恋人同士になろうと言われ、訳もわからず体を重ねたのだろう。結果、当然美由紀は妊娠した。病院に行くこともなく自宅アパートで出産したのは美由紀が18歳になってすぐだったらしい。
しかし子供が生まれて暫くして『タツヤ』は姿を消してしまった。
当然出生届など出されているはずもなく、生まれた子供、つまり蒴也が拐った少年は無戸籍のまま現在に至ったのだ。
『子供を育てる』と言う概念がなかった美由紀だが、働かなければお金が得られない。お金がなければ生活できない。と言うのは経験からわかっていたのだろう。出産後、すぐに菓子製造工場で働き始めたようだ。
『今更、そのタツヤってのを探すのは不可能だよね?』
確かに『タツヤ』と言う名前だけで15年以上前のことを調べあげるのは現実的ではないだろう。
だとしたら、何をどうすべきなのか。全く予想していなかった展開に蒴也も吾妻も脳内をフル回転させる。
しかし、既に1つは解決したのだと佐伯は言う。
長谷美由紀は、しかるべき施設に入所できるよう渡瀬医師が骨を折ってくれたようだ。
『ねえ、若』
佐伯の口調は、どこまでも優しい。
美由紀だけでなく、少年を福祉施設に入所させることも可能であり、そうしたとしても誰かが誰かを責められるような問題ではないと言う。
だからこそ、どうするかは蒴也が判断しろ、と。
蒴也の想いを解っているからこそ、決断を委ねたのだ。
いくら闇医者とは言え、それなりの伝手をたどれば少年にとってそれなりにいい環境を佐伯ならば用意できるのだ。
そして出した蒴也の答えに吾妻も佐伯も胸を撫で下ろした。
『俺の側に置く』
蒴也が出した答えなのだ。吾妻はもちろん佐伯とて否はない。
それでも問題は山積みなのだが。
挨拶もそこそこにゲストルームに入れば、点滴の留置針を確認し、熱を計っている。
『37.6℃か。だいぶ下がったね。』
昨日ここに運び込んだ時よりも、幾分顔色がいい。
それでも、まだ目を覚ます気配はない。
『野生動物は、ただただ眠って癒すだろ?』
だから人間も同じなのだと言う。
それでも少年の様子から、ほんの少しでも回復の兆しを感じたのだろう。佐伯は少年が目を覚まさないうちに、と話し始めた。
『結果から言えば、この子は長谷美由紀の子供だよ』
やはり、とも思うが何故?とも思う。
佐伯の同期である渡瀬医師の診察で、美由紀は重度の脅迫神経症であると診断された。
『わかりやすく言えば、度を越した潔癖症だね』
それが原因で、血が出るまで手を洗っていたのだと言う。
それと、と佐伯の説明はつらつらと続く。
美由紀は重度の脅迫神経症であると共に、程度はわからないながらも知的障がいがあると言うのだ。
周囲との意志疎通は苦手だがある程度可能。けれど一般的な30代の女性が持ち合わせている知性は美由紀には大きく欠落している、と言うのが診察とカウンセリングで明らかになったそうだ。
美由紀が16年前アパートで生活を共にしていたのは
美由紀が『タツヤ』と呼ぶ青年だったらしい。
『タツヤ』のフルネームは美由紀に聞いても、わからないのだと言う。
その『タツヤ』から恋人同士になろうと言われ、訳もわからず体を重ねたのだろう。結果、当然美由紀は妊娠した。病院に行くこともなく自宅アパートで出産したのは美由紀が18歳になってすぐだったらしい。
しかし子供が生まれて暫くして『タツヤ』は姿を消してしまった。
当然出生届など出されているはずもなく、生まれた子供、つまり蒴也が拐った少年は無戸籍のまま現在に至ったのだ。
『子供を育てる』と言う概念がなかった美由紀だが、働かなければお金が得られない。お金がなければ生活できない。と言うのは経験からわかっていたのだろう。出産後、すぐに菓子製造工場で働き始めたようだ。
『今更、そのタツヤってのを探すのは不可能だよね?』
確かに『タツヤ』と言う名前だけで15年以上前のことを調べあげるのは現実的ではないだろう。
だとしたら、何をどうすべきなのか。全く予想していなかった展開に蒴也も吾妻も脳内をフル回転させる。
しかし、既に1つは解決したのだと佐伯は言う。
長谷美由紀は、しかるべき施設に入所できるよう渡瀬医師が骨を折ってくれたようだ。
『ねえ、若』
佐伯の口調は、どこまでも優しい。
美由紀だけでなく、少年を福祉施設に入所させることも可能であり、そうしたとしても誰かが誰かを責められるような問題ではないと言う。
だからこそ、どうするかは蒴也が判断しろ、と。
蒴也の想いを解っているからこそ、決断を委ねたのだ。
いくら闇医者とは言え、それなりの伝手をたどれば少年にとってそれなりにいい環境を佐伯ならば用意できるのだ。
そして出した蒴也の答えに吾妻も佐伯も胸を撫で下ろした。
『俺の側に置く』
蒴也が出した答えなのだ。吾妻はもちろん佐伯とて否はない。
それでも問題は山積みなのだが。
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