太陽と月

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内乱の火種

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今回の炎星会とチャイニーズマフィアの取引に関する対応は創世会本部の意向により、明星会と辰星会のごく一部の人間のみで為されていた。
創世会本部でも八神総裁と土門幹事長、その他数人が事態を把握しているのみだったが、ここ1年程の炎星会の動きに他の組も何等かの違和感を持っていたのだ。
創世会本部の会議室に次々と集まる幹部達は、やはり炎星会の処遇に関する召集なのではと目測を立てていた。

全員が座した創世会本部の会議室に指定された時刻をとうに過ぎた頃、炎星会会長の内藤と若頭補佐の結城が姿を現した。
そこに自然と視線が集まれば、内藤は太々しい態度で口先だけの謝罪の言葉を吐く。

『何かと多忙でしてね。時間を作るのに苦労しました』

そんな内藤の後ろでは表情を変えずとも、どこか焦燥感の滲む結城が控えている。

暫し沈黙の流れる会議室で、重い空気を断ち切るように口を開いたのは幹事長の土門であった。

『そうだな。皆忙しいだろう』

であれば早々本題に、と手元のタブレットをタップする。
同席者全員の注目が集まる中、土門はメディアの音量を最大まで上げたのだろう。聞こえてくるのはノイズ混じりの男の声だった。

蒴也が盗聴した篠崎の声。取引の具体的な日時、場所、複数の違法薬物の名前と取引相手の名前までが克明に聞き取れるものだ。

『なあ内藤、俺にはこの声が篠崎のものに聞こえるんだが』

お前には、どう聞こえる?と問われる内藤の顔色は悪い。
盗聴されているなど全く気付いていなかったのだろう。しかし所詮はヤクザなのだ。違法だのなんだのと喚くつもりはないらしいが、内藤は何より我が身が可愛い。

『そ そんな取引、俺は指示していない』

自己保身から篠崎が単独で行動していることであり、組として把握しているわけではない、と言い募る。
内藤の後ろでは結城がスマートフォンを取り出しているが、土門はそれを視線だけで制する。

『それでもなぁ内藤  お前の監督不行届は明白だ』

狼狽える内藤は、本当に一組織を率いる人間なのかと思うほどに見苦しい。

『さぁ内藤、お前ならこの落し前どうつける?』

それを決めるのはお前ではないが、と続く土門の声は地を這うほどに低い。

土門に気圧された内藤だが、それでも往生際が悪い。

『創世会本部へは、迷惑料を払う。篠崎は破門だ』

あくまでも篠崎1人で為したことであり、自分も組も被害者だと宣う。

たった今の土門の言葉を無視した言い種だ。
室内が呆れと言う名の乾いた空気に包まれた。

『ほぉ、の篠崎が破門なら』

そこで言葉を切った土門は、先程から静観を決め込んでいた八神総裁に向き直る。

『総裁のお考えは』

暫しの沈黙の後、八神は表情を変えぬまま内藤を見ることもなく言い放った。
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