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内乱の火種
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そんな優秀な吾妻により、ゲストルームだけでなくトイレにも紙オムツが用意されていた。
ことの大小、蒴也の公私に関わらず、どこまでも気の利く男だ。
トイレで紙オムツとズボンを履かせ、当然のように抱き上げてゲストルームへと戻る。
体を触った感じでは随分と熱も下がったような気がする。
今度は陽をベッドに寝かせることなくベッドヘッドにクッションと枕を立て、背中を預けるように座らせた。
『陽、少しお水を飲もうな。』
冷蔵庫に入れずにおいた、さほど冷たくないペットボトルの水を、ほんの少しマグカップに移し、陽に渡してみる。
問題ない。ほんの少しではあるが、陽はマグカップの水を飲み干した。
長谷美由紀との生活の中でも使っていたのだろう。
『お水飲めたから、重湯を食べてみるか?』
ゲストルームのドアを開けたまま、キッチンで吾妻の手書きのメッセージ通り弱火で混ぜながら重湯を温める。人生で初めて温める。当然、加減がよくわからないのだが、フツフツと沸騰した頃に火を止め、器の蓋になっていた茶碗に熱々の重湯を半分ほど入れる。
右手にレンゲ左手に茶碗を持ってベッド脇のスツールに腰かければ、陽がチラリと茶碗を見る。
『これ食べたことあるか?』
ほんの少し掬った重湯をフーフーと覚まし自身の唇につけ温度を確かめる。
熱くないことを確認して陽の唇に近づければ、
ぱくっ
食べてくれた。
随分時間はかかったが、しかも茶碗半分ほどだが重湯を完食してくれた。
意識障害を疑うほど目を覚まさなかった陽が蒴也の手から水を飲み、重湯を食べる。
『早く元気になれ』
やはり陽には言葉の意味がわからないのだろう。蒴也の言葉に対する反応はないが、ほんの些細な一歩だが前に進めたような気がした。
明日は、もっと、こう、なんと言うか、食べ物らしい食べ物を食べさせてやることができればいいと思う。
『優しい主治医に聞いてみような』
これまで佐伯に対して皮肉であっても「優しい医者」などと言う比喩を使ったことはなかったのに。
創世会本部で吾妻や土門が内藤等に冷たい視線を向けていた頃、蒴也は陽に温かな視線を向けていた。
ことの大小、蒴也の公私に関わらず、どこまでも気の利く男だ。
トイレで紙オムツとズボンを履かせ、当然のように抱き上げてゲストルームへと戻る。
体を触った感じでは随分と熱も下がったような気がする。
今度は陽をベッドに寝かせることなくベッドヘッドにクッションと枕を立て、背中を預けるように座らせた。
『陽、少しお水を飲もうな。』
冷蔵庫に入れずにおいた、さほど冷たくないペットボトルの水を、ほんの少しマグカップに移し、陽に渡してみる。
問題ない。ほんの少しではあるが、陽はマグカップの水を飲み干した。
長谷美由紀との生活の中でも使っていたのだろう。
『お水飲めたから、重湯を食べてみるか?』
ゲストルームのドアを開けたまま、キッチンで吾妻の手書きのメッセージ通り弱火で混ぜながら重湯を温める。人生で初めて温める。当然、加減がよくわからないのだが、フツフツと沸騰した頃に火を止め、器の蓋になっていた茶碗に熱々の重湯を半分ほど入れる。
右手にレンゲ左手に茶碗を持ってベッド脇のスツールに腰かければ、陽がチラリと茶碗を見る。
『これ食べたことあるか?』
ほんの少し掬った重湯をフーフーと覚まし自身の唇につけ温度を確かめる。
熱くないことを確認して陽の唇に近づければ、
ぱくっ
食べてくれた。
随分時間はかかったが、しかも茶碗半分ほどだが重湯を完食してくれた。
意識障害を疑うほど目を覚まさなかった陽が蒴也の手から水を飲み、重湯を食べる。
『早く元気になれ』
やはり陽には言葉の意味がわからないのだろう。蒴也の言葉に対する反応はないが、ほんの些細な一歩だが前に進めたような気がした。
明日は、もっと、こう、なんと言うか、食べ物らしい食べ物を食べさせてやることができればいいと思う。
『優しい主治医に聞いてみような』
これまで佐伯に対して皮肉であっても「優しい医者」などと言う比喩を使ったことはなかったのに。
創世会本部で吾妻や土門が内藤等に冷たい視線を向けていた頃、蒴也は陽に温かな視線を向けていた。
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