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発火
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明星会の事務所で各々が持ち場に着いた頃、全員が情報を共有するためのインカムからハッカーの1人の声がする。
篠崎の運転するミニバンに炎星会所有のワンボックスカーが3台合流したことが確認されたのだ。フルスモークのため人数は確認できないものの最大で25人程を迎え撃つこととなる。
構成員だけで500人はくだらい組織を持ちながら、たった25名人での復讐劇だ。迎えるこちらの方に遣る瀬無さが募る。だからと言って手加減するつもりはないのだが。
しかも蒴也の自宅マンションには炎星会の人間が向かっている様子はない。明星会組事務所に向かっている20余名のみが有志、同志として集めることができたのだろう。
そもそも蒴也が組事務所不在と言う発想がないところが篠崎らしいと言えば篠崎らしい。穴だらけのその筋書きに助言する人間もいないのだろう。
しかも蓋を開けてみれば、
『篠崎を入れて総勢16人です』
組事務所前の道路を撮す監視カメラには、篠崎が乗り付けたミニバンとワンボックスカーから15人が降りただけなのだと嘲笑するような口調のハッカーの声がインカムに響いた。
炎星会には腕利きのヒットマンが何人かいたはずだ。それを秘密裏に差し向けることすらできずに篠崎自らが現れたのだ。
同情すら覚えるが、刃向かう輩を放っておくほどお人好しではない。
抑揚のないインカムからの声は事務所の表玄関に8人、裏口に7人を確認したようだ。
しかも15人の内、拳銃を所持しているのは僅か4人。残りの11人は短刀を所持しているのみ、と。
そして、そこに篠崎の姿はない。
彼等なりに篠崎は切り札として隠しているつもりなのだろうか。それとも、篠崎なりの画策があるのか。いずれにしても行動は筒抜けなのだが。
表玄関と裏口の15人のうち何人かが時計を気にする素振りをインカムが知らせる。一斉奇襲のつもりだろう。
表玄関の扉と裏口のドアが同時に開けられ、怒号が響き渡る。
しかし、ここでありがちな組んず解れつの大乱闘にはならない。
明星会の事務所は新築時、敵襲に備えて各出入口は極めて狭隘な造りとしたのだ。
見映えよりも組事務所として利用するのに合理的かつ効果的な構造としたのは、幸田会長が蒴也の意見を取り入れてのものだった。
当然、大人数が一気に押し入ることは不可能だ。
結果的に行儀よく順番を待って入らなければならない炎星会の面々はなかなかに間抜けなものだが、入った瞬間に狙いを定め短刀を振るう彼等からは、やはり喧嘩慣れした匂いがする。
それでもこちらは完璧な布陣を敷いて控えていたのだ。
全てが想定の範囲内だった。
押し入った炎星会組員を全て拘束したところで真打ちの乱暴なご登場だ。
派手な銃声と共に表玄関に現れた篠崎は辺り構わず二丁の拳銃のトリガーを引き続ける。
それを止めたのは吾妻のワルサーPPKから放たれた、たった一発の弾丸だった。
正確に右手首を撃ち抜かれ蹲る篠崎を更に詰め寄った吾妻は憐れみの表情で見下ろした。
『チェックメイトですね』
篠崎の運転するミニバンに炎星会所有のワンボックスカーが3台合流したことが確認されたのだ。フルスモークのため人数は確認できないものの最大で25人程を迎え撃つこととなる。
構成員だけで500人はくだらい組織を持ちながら、たった25名人での復讐劇だ。迎えるこちらの方に遣る瀬無さが募る。だからと言って手加減するつもりはないのだが。
しかも蒴也の自宅マンションには炎星会の人間が向かっている様子はない。明星会組事務所に向かっている20余名のみが有志、同志として集めることができたのだろう。
そもそも蒴也が組事務所不在と言う発想がないところが篠崎らしいと言えば篠崎らしい。穴だらけのその筋書きに助言する人間もいないのだろう。
しかも蓋を開けてみれば、
『篠崎を入れて総勢16人です』
組事務所前の道路を撮す監視カメラには、篠崎が乗り付けたミニバンとワンボックスカーから15人が降りただけなのだと嘲笑するような口調のハッカーの声がインカムに響いた。
炎星会には腕利きのヒットマンが何人かいたはずだ。それを秘密裏に差し向けることすらできずに篠崎自らが現れたのだ。
同情すら覚えるが、刃向かう輩を放っておくほどお人好しではない。
抑揚のないインカムからの声は事務所の表玄関に8人、裏口に7人を確認したようだ。
しかも15人の内、拳銃を所持しているのは僅か4人。残りの11人は短刀を所持しているのみ、と。
そして、そこに篠崎の姿はない。
彼等なりに篠崎は切り札として隠しているつもりなのだろうか。それとも、篠崎なりの画策があるのか。いずれにしても行動は筒抜けなのだが。
表玄関と裏口の15人のうち何人かが時計を気にする素振りをインカムが知らせる。一斉奇襲のつもりだろう。
表玄関の扉と裏口のドアが同時に開けられ、怒号が響き渡る。
しかし、ここでありがちな組んず解れつの大乱闘にはならない。
明星会の事務所は新築時、敵襲に備えて各出入口は極めて狭隘な造りとしたのだ。
見映えよりも組事務所として利用するのに合理的かつ効果的な構造としたのは、幸田会長が蒴也の意見を取り入れてのものだった。
当然、大人数が一気に押し入ることは不可能だ。
結果的に行儀よく順番を待って入らなければならない炎星会の面々はなかなかに間抜けなものだが、入った瞬間に狙いを定め短刀を振るう彼等からは、やはり喧嘩慣れした匂いがする。
それでもこちらは完璧な布陣を敷いて控えていたのだ。
全てが想定の範囲内だった。
押し入った炎星会組員を全て拘束したところで真打ちの乱暴なご登場だ。
派手な銃声と共に表玄関に現れた篠崎は辺り構わず二丁の拳銃のトリガーを引き続ける。
それを止めたのは吾妻のワルサーPPKから放たれた、たった一発の弾丸だった。
正確に右手首を撃ち抜かれ蹲る篠崎を更に詰め寄った吾妻は憐れみの表情で見下ろした。
『チェックメイトですね』
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