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前編
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「アレクサンドラ・ベルナール! 貴様との婚約を破棄す――」
「うっさいな!! 少し黙れ! アホ王子!」
王太子ジュリアン・ゴーティエの誕生日を祝して開催された今回の宴の席で、意気揚々と婚約者アレクサンドラ・ベルナール公爵令嬢に婚約破棄宣言を突きつけようとしたが、逆に思いっきりブチ切れられてしまう。
「なっ 貴様! この私に向かってなんという口の利き方だ、ふー―」
「いいから黙れって言ってるんですの!! なんですのこれは!!」
「ひっ」
あまりの剣幕に腰が抜けそうになるジュリアン殿下。
よく見ると、彼の隣には側妃候補のアンジェラ・シモン侯爵令嬢の姿もあった。
「ちょっとアレクサンドラ様。殿下へなんという口の利き方ですか。折角の殿下の誕生日のお祝いのパーティーの場ではしたない」
「パーティー? 私はそんな許可してませんが?」
「私が許可しましたの。折角の殿下の誕生日をお祝いしないなんて、婚約者失格ですわ」
「何ですって……?」
「そうだ! 貴様はいつもそうやって、私のやろうとしていることを認めてくれない! その点アンジェラはいつも私のことを考えてくれて……」
「当然ですわ。ほかならぬ王太子殿下のためですもの」
「アンジェラ……」
いい雰囲気の二人をよそに、アレクサンドラのイライラは限界を超えようとしていた。
「パーティーの費用は? 誰がお支払いしますの?」
「? 王太子殿下の誕生日だもの、国庫から出せばいいじゃないの?」
「ふざけんじゃないわよ!!」
今回のパーティー、アレクサンドラは許可していない。
王宮でパーティーが開かれているという話を聞いて、会場に入ってきた矢先に、ジュリアン殿下が勢いよく婚約破棄を宣言しようとした。
「……陛下」
「な、なんじゃ……」
アレクサンドラの怒りの矛先は、会場に同席していたジュリアン殿下の父上である陛下に向かった。
「陛下の今着ているお召し物。陛下に割り当てられている予算では、とても買えないはずですが、どちらでご購入を?」
「べ、別にどこでもいいだろう……」
「国庫のお金に手を出しましたね?」
「わしは国王じゃ? 国の金をどう使おうがわしの勝手じゃ!」
「そうだ! 父上のいう通りだ!」
「この、馬鹿親子は……いい加減にしなさい!」
アレクサンドラのものすごい剣幕に、国王陛下ですら怯みあがっている。
「お二人とも、前に話しましたよね? 今年は各地で豪雨による災害が相次いでいて、国庫へ入る税収が少ないと。やれパーティーだ、衣装だ……仕事もしないで好き勝手してんじゃないわよ!」
アレクサンドラは全く仕事をしない国王陛下やジュリアン殿下の分も、国の仕事を行っていた。
それも王太子妃教育も終了していない中で。
というより公務が多すぎて王太子妃教育が進んでいないというのが正しい。
それほどまでに二人は何もしない。ここ数日は碌に家に帰れていない。
「それはすべて貴様の仕事だ」
「アンジェラ様の部屋に入り浸って遊んでいるのが殿下の仕事だと」
「そうだ!」
「わしは未来の王妃たる其方に仕事を渡してるに過ぎない」
「じゃあ陛下は何をしてますの? 何もせずに離宮に遊びに行ってるだけでしょう?」
二人の言い訳を悉くぶった切っていくアレクサンドラ。
今までの扱いに我慢の限界を迎えた彼女の勢いは凄まじく、言い返すことができないでいる。
「ええい! うるさいうるさい!! とにかく貴様はもういらない! 今すぐ出ていけ!! 国外追放だ!!」
「言われなくても出ていきますよ! こんな国!!」
「あ、じゃあ私も出ていきますね~」
と場の雰囲気にそぐわないのほほんとした声が陛下の隣から聞こえてきた。
「お、王妃よ……何を言っておるのだ?」
「だって~ アレクサンドラちゃんこの国出てっちゃうんでしょう~ じゃあ私も出ていきたいな~……って」
「は、母上? 冗談にしては笑えないですよ?」
「母上? だれが?」
その一言にジュリアン殿下は何を言われたのか一瞬理解できなかった。
「は、母上は母上しかいないでしょう」
「私? 違うわよ?」
「違うって……何を言って」
「あなたの母親は侍女長よ~」
その言葉に、ジュリアン殿下は驚きで声も出ない。
一方一部の貴族たちの間では、どこか納得した雰囲気も出ている。
会場の空気は先ほどまでとは違った意味で凍り付いた。
「そうでしょう?……陛下?」
「いや……それは……」
「本当なのですか父上?」
王妃の言ったことは事実だった。
ジュリアン殿下は、国王が手を出した侍女との間にできた子供。
陛下はその侍女を寵愛していており、当時の侍女長を無理やりクビにして、侍女長にまで昇格させたのは、王宮内では有名な話だ。
「早速荷物をまとめないと~。それでは陛下、お先に失礼します~」
「ま、待つのだ!」
陛下の制止も無視して会場を後にする王妃。
「アレクサンドラちゃん。行きましょう♪ 私の国は楽しいわよ~」
王妃は他国から嫁いできた身。
出ていくということは、母国に帰ることを意味している。
「は、はい……」
途中から空気になっていたアレクサンドラも、我に返り会場を後にした。
「うっさいな!! 少し黙れ! アホ王子!」
王太子ジュリアン・ゴーティエの誕生日を祝して開催された今回の宴の席で、意気揚々と婚約者アレクサンドラ・ベルナール公爵令嬢に婚約破棄宣言を突きつけようとしたが、逆に思いっきりブチ切れられてしまう。
「なっ 貴様! この私に向かってなんという口の利き方だ、ふー―」
「いいから黙れって言ってるんですの!! なんですのこれは!!」
「ひっ」
あまりの剣幕に腰が抜けそうになるジュリアン殿下。
よく見ると、彼の隣には側妃候補のアンジェラ・シモン侯爵令嬢の姿もあった。
「ちょっとアレクサンドラ様。殿下へなんという口の利き方ですか。折角の殿下の誕生日のお祝いのパーティーの場ではしたない」
「パーティー? 私はそんな許可してませんが?」
「私が許可しましたの。折角の殿下の誕生日をお祝いしないなんて、婚約者失格ですわ」
「何ですって……?」
「そうだ! 貴様はいつもそうやって、私のやろうとしていることを認めてくれない! その点アンジェラはいつも私のことを考えてくれて……」
「当然ですわ。ほかならぬ王太子殿下のためですもの」
「アンジェラ……」
いい雰囲気の二人をよそに、アレクサンドラのイライラは限界を超えようとしていた。
「パーティーの費用は? 誰がお支払いしますの?」
「? 王太子殿下の誕生日だもの、国庫から出せばいいじゃないの?」
「ふざけんじゃないわよ!!」
今回のパーティー、アレクサンドラは許可していない。
王宮でパーティーが開かれているという話を聞いて、会場に入ってきた矢先に、ジュリアン殿下が勢いよく婚約破棄を宣言しようとした。
「……陛下」
「な、なんじゃ……」
アレクサンドラの怒りの矛先は、会場に同席していたジュリアン殿下の父上である陛下に向かった。
「陛下の今着ているお召し物。陛下に割り当てられている予算では、とても買えないはずですが、どちらでご購入を?」
「べ、別にどこでもいいだろう……」
「国庫のお金に手を出しましたね?」
「わしは国王じゃ? 国の金をどう使おうがわしの勝手じゃ!」
「そうだ! 父上のいう通りだ!」
「この、馬鹿親子は……いい加減にしなさい!」
アレクサンドラのものすごい剣幕に、国王陛下ですら怯みあがっている。
「お二人とも、前に話しましたよね? 今年は各地で豪雨による災害が相次いでいて、国庫へ入る税収が少ないと。やれパーティーだ、衣装だ……仕事もしないで好き勝手してんじゃないわよ!」
アレクサンドラは全く仕事をしない国王陛下やジュリアン殿下の分も、国の仕事を行っていた。
それも王太子妃教育も終了していない中で。
というより公務が多すぎて王太子妃教育が進んでいないというのが正しい。
それほどまでに二人は何もしない。ここ数日は碌に家に帰れていない。
「それはすべて貴様の仕事だ」
「アンジェラ様の部屋に入り浸って遊んでいるのが殿下の仕事だと」
「そうだ!」
「わしは未来の王妃たる其方に仕事を渡してるに過ぎない」
「じゃあ陛下は何をしてますの? 何もせずに離宮に遊びに行ってるだけでしょう?」
二人の言い訳を悉くぶった切っていくアレクサンドラ。
今までの扱いに我慢の限界を迎えた彼女の勢いは凄まじく、言い返すことができないでいる。
「ええい! うるさいうるさい!! とにかく貴様はもういらない! 今すぐ出ていけ!! 国外追放だ!!」
「言われなくても出ていきますよ! こんな国!!」
「あ、じゃあ私も出ていきますね~」
と場の雰囲気にそぐわないのほほんとした声が陛下の隣から聞こえてきた。
「お、王妃よ……何を言っておるのだ?」
「だって~ アレクサンドラちゃんこの国出てっちゃうんでしょう~ じゃあ私も出ていきたいな~……って」
「は、母上? 冗談にしては笑えないですよ?」
「母上? だれが?」
その一言にジュリアン殿下は何を言われたのか一瞬理解できなかった。
「は、母上は母上しかいないでしょう」
「私? 違うわよ?」
「違うって……何を言って」
「あなたの母親は侍女長よ~」
その言葉に、ジュリアン殿下は驚きで声も出ない。
一方一部の貴族たちの間では、どこか納得した雰囲気も出ている。
会場の空気は先ほどまでとは違った意味で凍り付いた。
「そうでしょう?……陛下?」
「いや……それは……」
「本当なのですか父上?」
王妃の言ったことは事実だった。
ジュリアン殿下は、国王が手を出した侍女との間にできた子供。
陛下はその侍女を寵愛していており、当時の侍女長を無理やりクビにして、侍女長にまで昇格させたのは、王宮内では有名な話だ。
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「ま、待つのだ!」
陛下の制止も無視して会場を後にする王妃。
「アレクサンドラちゃん。行きましょう♪ 私の国は楽しいわよ~」
王妃は他国から嫁いできた身。
出ていくということは、母国に帰ることを意味している。
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