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19.王宮での記念式典(1)
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今日のアシュリーは、帝国に来てから初めてドレスに身を包んでいる。
「中々いい出来上がりになりましたね。アシュリー様のことをよくわかっているイルマに任せましたが、問題なかったようですね」
「王国の時もイルマにはかなりお世話になりましたから」
そのドレスは、メラルバ侯爵の用意したもので、彼女の侍女で侯爵家のお抱え針子となったイルマの渾身の力作。
「……私がやります」
王国でもアシュリーに支給された資金が少なくなってきたときに、イルマがそう言って前のドレスを別物に見えるように手直ししていた。
元々針作業が得意で、王国時代もアシュリーのドレスはイルマが用意していた。
王女であった彼女には、王国の年間予算から予選が割り当てられていたはずなのだが、リーテルマの横やりでその殆どをラビニアに回されていたのだ。
「この日のために、遠方からわざわざ素材を仕入れた甲斐がありました」
「……ちょっと、緊張します」
今日の衣装は遠方から輸入された上等な布をふんだんに使用したもので、アシュリーはおっかなびっくりに着ている。
「上手くやれるか、少し不安になってきました」
「私の授業にしっかりついてこれたアシュリー様なら、問題ないでしょう。私も近くに居りますので、何かあればフォローはいたします」
そもそも今日アシュリーがここまで豪華なドレスを着ているのか。
今彼女は王宮にいる。
今日王宮では、皇帝陛下の誕生日を祝う記念式典なのだ。
それは王国中の貴族はもちろんだが、客人として侯爵家にお世話になっているアシュリーも招待されていた。
侯爵から帝国マナーはしっかり教わっているが、それでも王国以来の社交の場に緊張を隠せないでいる。
彼女は王国での社交界では、あまりいい思い出はなかった。
社交界での彼女は、いつも陰で馬鹿にされることが殆どだったから。
メラルバ侯爵のエスコートで会場に入るアシュリー。
帝国の貴族夫人たちは、メラルバ侯爵に挨拶を交わしている。
それと同時に侯爵がアシュリーを紹介する。
「……お初にお目にかかります。アシュリー・クローネと申します。縁あってメラルバ侯爵様とご出席させていただきました」
「そう……貴方が王国の……」
王国と聞いてアシュリーの表情が一瞬こわばる。
「学園でのお噂は聞いてますわよ」
「え?」
「騎士科で主席をとるなんて、優秀な方ですのね」
「近衛隊長様から直々に指導を受けるなんて、うらやましいですわ!」
婦人たちの反応は、アシュリーの想像とは違ったものだった。
「あ、ありがとうございます……」
その後もメラルバ侯爵に挨拶に来る夫人達からは、学園での実績を評価するものはあれど、王国に関する話題をする人はいなかった。
侯爵の側にいるからとも考えたが、周囲の貴族もアシュリーのことを話題にしている人はいなかった。
「帝国貴族は皆、自分の実力でその地位を獲得してきた人たちです。その努力を皆知っています。他者を下に見るような人はその地位を落としていきました」
「……私も、楽しんで、いいんですね……」
「私が教えたことは、忘れてはいけませんよ」
「……はいっ」
こうしてアシュリーは、生まれて初めて、社交パーティーを楽しんだ。
「中々いい出来上がりになりましたね。アシュリー様のことをよくわかっているイルマに任せましたが、問題なかったようですね」
「王国の時もイルマにはかなりお世話になりましたから」
そのドレスは、メラルバ侯爵の用意したもので、彼女の侍女で侯爵家のお抱え針子となったイルマの渾身の力作。
「……私がやります」
王国でもアシュリーに支給された資金が少なくなってきたときに、イルマがそう言って前のドレスを別物に見えるように手直ししていた。
元々針作業が得意で、王国時代もアシュリーのドレスはイルマが用意していた。
王女であった彼女には、王国の年間予算から予選が割り当てられていたはずなのだが、リーテルマの横やりでその殆どをラビニアに回されていたのだ。
「この日のために、遠方からわざわざ素材を仕入れた甲斐がありました」
「……ちょっと、緊張します」
今日の衣装は遠方から輸入された上等な布をふんだんに使用したもので、アシュリーはおっかなびっくりに着ている。
「上手くやれるか、少し不安になってきました」
「私の授業にしっかりついてこれたアシュリー様なら、問題ないでしょう。私も近くに居りますので、何かあればフォローはいたします」
そもそも今日アシュリーがここまで豪華なドレスを着ているのか。
今彼女は王宮にいる。
今日王宮では、皇帝陛下の誕生日を祝う記念式典なのだ。
それは王国中の貴族はもちろんだが、客人として侯爵家にお世話になっているアシュリーも招待されていた。
侯爵から帝国マナーはしっかり教わっているが、それでも王国以来の社交の場に緊張を隠せないでいる。
彼女は王国での社交界では、あまりいい思い出はなかった。
社交界での彼女は、いつも陰で馬鹿にされることが殆どだったから。
メラルバ侯爵のエスコートで会場に入るアシュリー。
帝国の貴族夫人たちは、メラルバ侯爵に挨拶を交わしている。
それと同時に侯爵がアシュリーを紹介する。
「……お初にお目にかかります。アシュリー・クローネと申します。縁あってメラルバ侯爵様とご出席させていただきました」
「そう……貴方が王国の……」
王国と聞いてアシュリーの表情が一瞬こわばる。
「学園でのお噂は聞いてますわよ」
「え?」
「騎士科で主席をとるなんて、優秀な方ですのね」
「近衛隊長様から直々に指導を受けるなんて、うらやましいですわ!」
婦人たちの反応は、アシュリーの想像とは違ったものだった。
「あ、ありがとうございます……」
その後もメラルバ侯爵に挨拶に来る夫人達からは、学園での実績を評価するものはあれど、王国に関する話題をする人はいなかった。
侯爵の側にいるからとも考えたが、周囲の貴族もアシュリーのことを話題にしている人はいなかった。
「帝国貴族は皆、自分の実力でその地位を獲得してきた人たちです。その努力を皆知っています。他者を下に見るような人はその地位を落としていきました」
「……私も、楽しんで、いいんですね……」
「私が教えたことは、忘れてはいけませんよ」
「……はいっ」
こうしてアシュリーは、生まれて初めて、社交パーティーを楽しんだ。
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