アタシ♂お魚に転生しちゃって未熟な勇者を育てる事になっちゃった〜

お好みナッツ

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イ・ミンジュンのお店

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料理人の朝は早い。まだ陽の昇らない暗い時間から、冷たいキッチンに入らないといけない。何故なら野菜、肉の下ごしらえの準備は、本格的な料理の仕事の前に始めるのが基本だから

突然、トントンとノックの音が聞こえてきた。
気のせいかと思い、しばらく放っておくと
今度はドアノブをガチャガチャ回す音が聞こえたので誰かが来たのがわかった。
何者だ?こんな時間に?
恐る恐るドアを開けると、そこには勇者の証明であるペンダントを着けたメアリーさんがいた。

「おはようございますミンジュンさん。すいませんこんな早朝に押しかけちゃって… 」

「メアリーさんと魚の聖獣様?、それと他の方々もまだ朝も早いのでとりあえず店に上がってもらってもいいですかね」


ミンジュンに店の中へ案内されると皆、店内を物珍しそうに物色し出した。


「わぁここがミンジュンさんのお店ですか?
中の内装も素敵ですねー!」

「おほーっ椅子もフカフカじゃのう」

「どんな料理か楽しみニャー♪」

部屋の壁などは地味な白をベースにしているのに対してテーブル・椅子などはダークブラウンの木製家具を使っていてクラシカルな雰囲気を出しているのねー! なるほどいい感じじゃないの?

「あらまー中々いい雰囲気のお店じゃないの」

「ありがとうございます。店の内装はカイラと2人で考えて家具職人の方々にオーダーメイドで作ってもらい、厨房の奥にある魔法具などの設備もカイラの父親にお願いして南西の大陸から取り寄せて頂きました。」

魔法具?……何かしら初めて聞く言葉だわ??

「そうだっ!ちょうど今、朝の仕込みの途中だったんですが朝飯何か作りましょうか?」

「それでしたらここに先生が取ってきたお魚があるのでこれで何か作って下さい」

少し眠そうな目をしたメアリーは立ち上がり、袋に入った川魚をミンジュンに渡してすぐに席へと戻る。彼女とすれ違う様にアタシは厨房へとプカプカ空中を泳ぎながら入って行く

「さてと…アタシも何か手伝おうかしら♪」

「おーっ助かります。それでしたらそこの2段目に入っている野菜類を細かくに切って頂けますか?」

「お安い御用よって…アレ?何よこの店、冷蔵庫があるじゃないの?」

何と冷蔵庫があった? 異世界なのに? なんで?
でもよく見たらコンセント挿すところがないじゃないの、どういう事なの?

「ああそれでしたら魔石の中にある魔力を原動力にを使って作動させるんですよ」

「ちょっと何よーっ! それって電気代タダじゃないのよ~! さっき言ってた魔法具ってコレの事よね?いいわねコレ~♪」

「カイラが言うにはそもそもこの世界には電気やガス、ガソリンなどの私達が使っていたエネルギー資源などは使われていないそうなんですよ。そのかわりに魔法学というものが発達しているとか?」

ちょっとーっ! 何よそれーっ? あのバカみたいに高い公共料金が無しってサイコーじゃないのさ!

「へー何か面白そうな話じゃないの~?気になるわねぇ是非とも聞きたいわ~コチラも色々と聞きたい事もあるしカイラ君はいつ来るのか・し・ら?」

「今日はお昼頃に手伝いに来てくれるそうですよ。」

「ハイ昼ね、 んじゃ食事の後、彼が来るまで二階で皆を連れて眠っていてもいいかしら?」

「ええ構いませんよ」

手伝いが一通り終わったのでアタシはテーブルへと戻ると3人は気持ち良さそうにぐっすり眠っていた。起こすのもかわいそうなので放っておこうかと思ったが…

ミンジュンが料理をテーブルへを運んできた。その匂いに反応するかのようにボミエが目を覚まし、メアリーとヨハンを起こしているところ、ミンジュンはさらに大きな焼魚が乗せられた皿を持ってきてテーブルの中央に置き、みんなにフォークとナイフを渡した。

「コレはさっきの湖で取れた魚かのう」

「わぁー待ってましたニャ」

「アレっボミエさんはさっき、魚もう食べないって言ってましたよね?」

しかし…テーブルに置かれたある料理を見て3人は顔をしかめた。まあ確かにそういう反応するわよね
この町の雰囲気からしておそらくパンやじゃが芋が主食の彼等にとって全く馴染みのない物だったのでしょうね

「あのミンジュンさん、コレは一体何ですか?」

「僕がいた世界でよく食べられている唐辛子などを使った野菜の漬物でちょっと辛いかもしれませんが食べ出すとクセになりますよ。」

「なるほど、ピクルスの様な物かのう」

「ミンジュン君が漬けたキムチかしら~これをご飯に乗せて食べると美味しいのよね~!」

そこへガランとドアを開ける音がしたので皆が一斉に振り向くとカイラが店に入って来た。

「おはよう。何か店の中から賑やかな声が聞こえたのはメアリーさん達だったのか」

「アラっカイラちゃんお昼頃に来るって聞いていたのだけど?」

「実は先程までこの町の守備兵達とちょっとした事務作業をしてたんだが彼等の1人からメアリーさんらしき少女が町に入って来たという話を聞いてまさかと思いここに来たんだ」

守備兵ってさっきのアーリッヒとかいう子の事かしら?

カイラはメアリーの隣に座り、皆が目の前にある
食べ物に手をつけず躊躇している事に気付いた。確かにキムチはちょっと特異なにおいがあって、人によっては敬遠したいというかもしれないわね~
しかし…
キムチをご飯に乗せて銀の箸で美味しそうに食べているカイラを見て皆がスプーンかフォークで恐る恐る食べてみると、意外といけるのかガツガツと食べ出した。

「な…何ニャ?野菜なのに魚の味がするニャ」

「うわぁ! 何これ!辛いけどほのかに甘みを感じますよ。この白いのと一緒に食べると美味しいですね私…こんなに美味しいモノを食べたの初めてですよ!!」

「それはねご飯っていう食べ物よ!………っていうかメアリーちゃん! アナタは今まで一体どんな物を食べていたのよ?」


「えっと‥ その辺に生えている木の実とかその辺に生えている草とかですね!エヘへっ」

何よそれ?…ほとんど野生児じゃないの?
んーまぁあの村じゃ作物とかも育ててる感じじゃなかったし……いや多分働いてすらいない感じだったかしら? ヤバイじゃないのニート村じゃないのさ?

「そういえばメアリーさん達は先程まで夜釣りでもしていたんですか?」

「いや実は私、その住む場所が無くなっちゃいまして、エヘへっ」

「はい?どういう事ですか?」


メアリーの説明があまりにしどろもどろだったので
アタシはミンジュンが席についたのを見計らって、村長がメアリーの両親の家を燃やし彼女の親を殺し、さらにメアリーに手を挙げたがペンダントの力で覚醒して能力を覚え何とか防いだ事、そして村を出て行った事などを説明した。


「僕もかつて自分達の身が危なくなった事があり、ペンダントが硬化魔法を覚醒させてくれた事があります。
なぁカイラ! 」

「そういえば昔あったなそういう出来事が……
そのペンダントは先代の英雄様が持っていたという伝説があるくらいなのでもしかするとそれは宝具と呼ばれる特殊な力を備えた貴重なアイテムなのかもしれないな?」

そんな物をメアリーに?……
いやもう遅いわね。ペンダントが反応したって事は既に次の勇者として選ばれてしまったんでしょうしね。こうなったらもう彼女を育て上げるしかないのかしらね


「それと先程のメアリーさんの住む所がないって話なのですがもし良かったら、ここの2階が1部屋だけ空いていますのでどうでしょうか。」

「えっ!いいんでしょうか? 私、今お金持ってないんですけども」

「そうなのよ~アナタ達が村に渡したお金は村長に使われて彼女は今一文無しなのよね」

「お金はいらないですよ。ちなみに村を出てメアリーさんはこの先はどうしたいのですか?」

「メアリーちゃんはまだ11歳だし、とりあえず学校へは行かせるべきじゃないかしら」

「フム、それは良い考えだと思いますよ。メアリーさんの学費に関しては是非、父と相談させて下さい」

「私…イヤです!学校に通ったとしてもこの足と顔では友達も出来ずきっとまたイジメられるだけです
それよりも………それよりもどうかここで働かせてください私、自分でお金を稼いで火傷の治療費を貯めます!」


まあそりゃそうよねーまずは顔の火傷の治療からよねまずは……

「あのうすまんが儂らそろそろ……」

ヨハンとボミエは自分達が住んでいる宿舎に帰ると言うのでアタシは送って行こうとしたところをメアリーがズルズルと足を引きずってついて来た。
何かしら?

「ヨハンさん、私に剣術を教えて下さい!」

イヤーっ! 無理でしょうそもそも歩くのがやっとのその足で一体どうやって戦うのよ?

「メアリーさんや、お前さんは剣術を学んでどうしたいのじゃ??」

「私…初めて村を出てロッペンハイマーの町に来ました。今日見た物の全てが新鮮で楽しかったです。もっと世の中を見てみたい、これからもたくさん冒険をしてみたいと思っています。そうなると魔物と戦わなければならないのでその為には剣術を学ぶ必要があると思います」

ヨハンは頭を抱え、困った表情でアタシを見てきたので頷いた。

「そうか分かった考えておこうかのう」

「そんじゃまたニャー!!」

アタシとメアリーは2人に向かって手を振って見送った。


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