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第一章
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「ウィル殿下、本日は皆さんと平等に時間を過ごしてください、と、あれほど注意しましたよね」
「お前」
ウィルストン王子はチャーリーを鋭く睨みつけていた。
「そ、そうですわ。殿下、あちらで皆さんがお待ちですわ。それに私、少し気分がすぐれないような気がしますので」
この隙に、何とか二人きりになるのを避けよう。これ以上、殿下を足止めしていたら私の社交界ライフがなくなってしまう。
「リアリム嬢では、また今度ゆっくりと。薔薇の他にも、一緒にみたい花はたくさんあるから、ね」
そ、それは謹んでお断りしたいけど。
とりあえずその場を繕うために「は、はい」と答えておく。
「仕方ない、声をかけてくるか」
ようやくウィルストン王子は渋々、といった顔で私の傍を離れて行った。
「ハァ、よ、良かった、助かった」
チャーリー様が声をかけてくれなかったら、危うく二人きりになってしまうところだった。
でも、なぜ殿下は私に興味を持ったのだろう。
今日は目立たぬように敢えて地味な服で来たのに。
もしかしたら、この光の加減で色の変わる瞳が珍しかったのかな。
ともかく、殿下が正しく判断されて、イザベラ様を婚約者として選ばれることを祈るしかない。
今や王子様ショックで大好きな焼き菓子を見ても手が動かない。
そんな私に追い打ちをかけるように、イザベラ様が近寄って来た。
「リアリムさん、貴方、殿下と何を話されていたの?」
しまった! 今日はまだご機嫌伺いのご挨拶もできていない。
「イ、イザベラ様、今日もご機嫌麗しく、とても派手、じゃない、麗しいドレスです、ね、」
「あのね、私が伺っていることは、殿下が何を貴方に話されたか、よ」
うわぁ、超ご機嫌悪し。殿下と話をされなかったのかなぁ、、
「は、はい。私の趣味の、お菓子作りについて少し、話をしました」
「そう、それで?最後は手を握られていたようだけど?」
そ、そこまで見られていたなんて! どうしよう、
「あ、はい。でも、皆さまの所に行って、一緒にお話をしましょう、と、」
まさか、二人で薔薇を見に行きましょうと誘われたことは言えない。どんどん、手に汗を感じる。
「、、そう、それなら、貴方。わかっていますわ、ね」
何だろう、殿下に手をだすな、と言うことよね、きっと。
「はい、もちろん自分の身の丈はわかっています。私はイザベラ様のように、完璧な淑女ではありませんから」
「、、わかっているなら、いいのよ」
あぁ、怖い。だけど、何とか乗り切れた、かな?
本当に、王子様に関わると良いことがない。心臓に悪い。
そんな風に思っていると、お茶会の終了時刻となっていた。
出口では、ウィルストン殿下が立って、一人ひとりに挨拶をしている。
王子様だなんて、遠くに眺めているくらいがちょうどいい。
庶民の私には、王族なんてテレビの向こうの世界に等しいのだ。
「殿下、それではごきげんよう、本日は、楽しいひと時をありがとうございました」
「えぇ、それでは、またの機会に」
今日は、基本的に宰相が選んだ方が参加されている。
殿下自身が選ばれたのは私だけだったが、そのことを知るのはずいぶんと先のことだ。
「リアリム嬢、今日はあまり時間をとれなかったが、次回も必ず、来てくれるよね」
「うっ、は、はい」
しまった、言質をとられた。
もう、招待されても調子が悪くなって断ろうと思っていたのに。
「待っているよ、私の可愛いレディ」
そう言って、私の手をとると甲のところに唇を落とす。
「ひっ」
親愛を示す挨拶であるが、そんなことを殿下からされたとなると、話が違う。
案の定、周囲がざわつき始めた。
「し、失礼しますぅ」
逃げるようにその場を去った私。
ど、どうして殿下にロックオンされてしまったの? あんなにもグイグイくるとは思わなかった。
ちょっと参加して、ちょっとだけ話せば解放されると思っていたのに
予想していなかった状況に、私はめまいがして、家に帰るとバタンと寝てしまうのだった。
「お前」
ウィルストン王子はチャーリーを鋭く睨みつけていた。
「そ、そうですわ。殿下、あちらで皆さんがお待ちですわ。それに私、少し気分がすぐれないような気がしますので」
この隙に、何とか二人きりになるのを避けよう。これ以上、殿下を足止めしていたら私の社交界ライフがなくなってしまう。
「リアリム嬢では、また今度ゆっくりと。薔薇の他にも、一緒にみたい花はたくさんあるから、ね」
そ、それは謹んでお断りしたいけど。
とりあえずその場を繕うために「は、はい」と答えておく。
「仕方ない、声をかけてくるか」
ようやくウィルストン王子は渋々、といった顔で私の傍を離れて行った。
「ハァ、よ、良かった、助かった」
チャーリー様が声をかけてくれなかったら、危うく二人きりになってしまうところだった。
でも、なぜ殿下は私に興味を持ったのだろう。
今日は目立たぬように敢えて地味な服で来たのに。
もしかしたら、この光の加減で色の変わる瞳が珍しかったのかな。
ともかく、殿下が正しく判断されて、イザベラ様を婚約者として選ばれることを祈るしかない。
今や王子様ショックで大好きな焼き菓子を見ても手が動かない。
そんな私に追い打ちをかけるように、イザベラ様が近寄って来た。
「リアリムさん、貴方、殿下と何を話されていたの?」
しまった! 今日はまだご機嫌伺いのご挨拶もできていない。
「イ、イザベラ様、今日もご機嫌麗しく、とても派手、じゃない、麗しいドレスです、ね、」
「あのね、私が伺っていることは、殿下が何を貴方に話されたか、よ」
うわぁ、超ご機嫌悪し。殿下と話をされなかったのかなぁ、、
「は、はい。私の趣味の、お菓子作りについて少し、話をしました」
「そう、それで?最後は手を握られていたようだけど?」
そ、そこまで見られていたなんて! どうしよう、
「あ、はい。でも、皆さまの所に行って、一緒にお話をしましょう、と、」
まさか、二人で薔薇を見に行きましょうと誘われたことは言えない。どんどん、手に汗を感じる。
「、、そう、それなら、貴方。わかっていますわ、ね」
何だろう、殿下に手をだすな、と言うことよね、きっと。
「はい、もちろん自分の身の丈はわかっています。私はイザベラ様のように、完璧な淑女ではありませんから」
「、、わかっているなら、いいのよ」
あぁ、怖い。だけど、何とか乗り切れた、かな?
本当に、王子様に関わると良いことがない。心臓に悪い。
そんな風に思っていると、お茶会の終了時刻となっていた。
出口では、ウィルストン殿下が立って、一人ひとりに挨拶をしている。
王子様だなんて、遠くに眺めているくらいがちょうどいい。
庶民の私には、王族なんてテレビの向こうの世界に等しいのだ。
「殿下、それではごきげんよう、本日は、楽しいひと時をありがとうございました」
「えぇ、それでは、またの機会に」
今日は、基本的に宰相が選んだ方が参加されている。
殿下自身が選ばれたのは私だけだったが、そのことを知るのはずいぶんと先のことだ。
「リアリム嬢、今日はあまり時間をとれなかったが、次回も必ず、来てくれるよね」
「うっ、は、はい」
しまった、言質をとられた。
もう、招待されても調子が悪くなって断ろうと思っていたのに。
「待っているよ、私の可愛いレディ」
そう言って、私の手をとると甲のところに唇を落とす。
「ひっ」
親愛を示す挨拶であるが、そんなことを殿下からされたとなると、話が違う。
案の定、周囲がざわつき始めた。
「し、失礼しますぅ」
逃げるようにその場を去った私。
ど、どうして殿下にロックオンされてしまったの? あんなにもグイグイくるとは思わなかった。
ちょっと参加して、ちょっとだけ話せば解放されると思っていたのに
予想していなかった状況に、私はめまいがして、家に帰るとバタンと寝てしまうのだった。
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