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第三章
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「うぉぉぉー、アイツっ、なんだとぉぉぉーーー!」
ディリスがウィルストン殿下からの通達を手にすると、いきなり吠えた。
「どうした、ディリス。殿下は無事にリアリム嬢に会うことが出来たのか?」
「チャーリー。あぁ、確かに無事を確認できたようだ。やはり、ゴウ侯爵邸にいたのは、リアリムだ」
「えっ、リアが見つかったの?」
ウィルストン殿下の留守中、殿下の代わりに公務を行っているユゥベール殿下が声を上げた。
「ユゥベール殿下。はい、どうやら無事が確認できました。今、ウィルストン殿下が迎えに行かれています」
「そっか、良かった!」
ウィルストン殿下とは違って、自由に生きてきたユゥベール殿下であったが、いざ公務を分担させると有能ぶりを発揮していた。
「チャーリー、だが、悪い知らせもある」
「なんだ、悪い知らせとは。怪我の状態がひどいのか?」
確か、リアリム嬢は足を怪我されていたと報告にあった。そのことを指摘すると、そうではないとディリスが顔をしかめた。
「ウィルストン殿下が、3日後のお祭りまで滞在するとある。二人で過ごしたいらしい、ぞ」
ディリスはそう言うと、通達の手紙を広げて見せた。このウィルストン殿下の執務室にいる男3人で、盛大に大きなため息を吐く。
「全く、何を言うかと思えば二人で過ごしたい、ですか。まぁ、この休みでしっかりとリアリム嬢を捕まえてくだされば、いいのですが」
「リア、やっぱり王太子ルートなのかな。いや、でもハーレムも開いたハズなのに」
ぶつぶつと呟くユゥベール殿下の前に、次の予定の詳細を書いた書類をドンっと置く。
「さぁ、ユゥベール殿下。しばらく第一王子の代理がありますので、次はこちらのスピーチを覚えてくださいね」
「うひょ~、そっか、僕はまだ解放されないんだ! リア、はやく帰ってきて!」
今度はユゥベール殿下が叫ぶ。行事変更は出来ないから、もうしばらくは頑張っていただくことになる。
「ディリス、お前はどうする? 迎えに行かなくていいのか?」
それでも妹のことは心配だろう、そう気にかけて声をかけると、意外な答えが返って来た。
「あぁ、まぁ、妹のことは殿下に任せたからな。俺は、犯人を絞り込むことにするさ」
そう言って、ディリスは手をひらひらとさせて去っていった。
残されたユゥベール殿下と二人で、お互いに顔を見合わせる。
「さぁ、二人が帰ってきたら、また忙しくなりますからね。頑張りましょう」
「あぁ、そうだね。はぁ、兄上は絶倫だから、リアは病み上がりで大丈夫かなぁ」
不穏な一言を聞いたようだが、それは無視をして執務を進める。
二人が帰って来た後は、婚約式に結び付けることが出来ればいい。国の慶事として、盛大に祝おう。
チャーリーは、リアリム嬢の憂いがなくなることを祈るだけだと、思い直した。ウィルストン殿下が傍にいるのであれば、お任せすればいいだけだ。
つきん、と痛む胸の感情は消し去り、チャーリーは再びユゥベール殿下に付き添うのであった。
チュン、チュンと鳥の鳴き声が聞こえる。これは、いや、大丈夫。夕べは疲れて二人ともぐっすりと眠った。
私を抱えるようにして眠るウィルティム様。今朝の髪の色は漆黒のままだ。
まだ目をつむって寝ている彼。もぞもぞと動いて、少し起き上がろうとする。けれど、ウィルティム様の腕に捕まっている私は、やはり抜け出すことが出来なかった。
「ハァ、どうしよう。起こすのも嫌だなぁ、私のために、無理していたみたいだし」
息を一つ吐くと、私に気が付いたのかウィルティム様もパチッと目を開けて私を見た。
「リア、おはよう」
少し寝ぼけたような声で、囁いてくれる。すると、ギュッと私を抱きしめる腕の力を強める。
「あぁ、リア。いいな、目覚めてすぐに君の顔が見える。うん、いいな」
確かめるように私の頬をなでると、そのまま顎を持ち上げてチュッと軽くキスをした。
「あっ、ウィル」
「あぁ、何も言わずに君に触れてしまったな、すまない」
「ううん、大丈夫。ウィルなら、どこを触っても大丈夫だから」
何気なく言った言葉だけど、それを聞いたウィルティム様は身体を一瞬固めている。
「リア、そうやって煽られると、調子に乗ってしまうから」
ハァ、と息を吐く彼に、私は言葉を伝える。
「あのね、ウィルは今、私の恋人だから大丈夫だよ。どこ触っても」
そう言った途端、私はぞくりとするような興奮を覚えた。彼が、瞳の奥に欲望を秘めて私を射るように見つめていたからだ。
「リア、いいのか? 怖い思いをした後だから、遠慮していたけれど、いいんだね」
「ウィル、あの、ね。ウィルのこと、私、大好きだよ。だから」
好きにして、と最後の言葉を言う前に彼は私に噛みつくようにキスをしてきた。それは、せき止められていた激流が、堤を超えて流れ込むように激しく私の上に圧しかかって来た。
「ウィル、ちょ、ちょっと」
ぷはっと口を開けた隙に空気を取り込む。まさか、いきなりこんなにも激しく貪られるように口を吸われるとは思っていなかった。
ディリスがウィルストン殿下からの通達を手にすると、いきなり吠えた。
「どうした、ディリス。殿下は無事にリアリム嬢に会うことが出来たのか?」
「チャーリー。あぁ、確かに無事を確認できたようだ。やはり、ゴウ侯爵邸にいたのは、リアリムだ」
「えっ、リアが見つかったの?」
ウィルストン殿下の留守中、殿下の代わりに公務を行っているユゥベール殿下が声を上げた。
「ユゥベール殿下。はい、どうやら無事が確認できました。今、ウィルストン殿下が迎えに行かれています」
「そっか、良かった!」
ウィルストン殿下とは違って、自由に生きてきたユゥベール殿下であったが、いざ公務を分担させると有能ぶりを発揮していた。
「チャーリー、だが、悪い知らせもある」
「なんだ、悪い知らせとは。怪我の状態がひどいのか?」
確か、リアリム嬢は足を怪我されていたと報告にあった。そのことを指摘すると、そうではないとディリスが顔をしかめた。
「ウィルストン殿下が、3日後のお祭りまで滞在するとある。二人で過ごしたいらしい、ぞ」
ディリスはそう言うと、通達の手紙を広げて見せた。このウィルストン殿下の執務室にいる男3人で、盛大に大きなため息を吐く。
「全く、何を言うかと思えば二人で過ごしたい、ですか。まぁ、この休みでしっかりとリアリム嬢を捕まえてくだされば、いいのですが」
「リア、やっぱり王太子ルートなのかな。いや、でもハーレムも開いたハズなのに」
ぶつぶつと呟くユゥベール殿下の前に、次の予定の詳細を書いた書類をドンっと置く。
「さぁ、ユゥベール殿下。しばらく第一王子の代理がありますので、次はこちらのスピーチを覚えてくださいね」
「うひょ~、そっか、僕はまだ解放されないんだ! リア、はやく帰ってきて!」
今度はユゥベール殿下が叫ぶ。行事変更は出来ないから、もうしばらくは頑張っていただくことになる。
「ディリス、お前はどうする? 迎えに行かなくていいのか?」
それでも妹のことは心配だろう、そう気にかけて声をかけると、意外な答えが返って来た。
「あぁ、まぁ、妹のことは殿下に任せたからな。俺は、犯人を絞り込むことにするさ」
そう言って、ディリスは手をひらひらとさせて去っていった。
残されたユゥベール殿下と二人で、お互いに顔を見合わせる。
「さぁ、二人が帰ってきたら、また忙しくなりますからね。頑張りましょう」
「あぁ、そうだね。はぁ、兄上は絶倫だから、リアは病み上がりで大丈夫かなぁ」
不穏な一言を聞いたようだが、それは無視をして執務を進める。
二人が帰って来た後は、婚約式に結び付けることが出来ればいい。国の慶事として、盛大に祝おう。
チャーリーは、リアリム嬢の憂いがなくなることを祈るだけだと、思い直した。ウィルストン殿下が傍にいるのであれば、お任せすればいいだけだ。
つきん、と痛む胸の感情は消し去り、チャーリーは再びユゥベール殿下に付き添うのであった。
チュン、チュンと鳥の鳴き声が聞こえる。これは、いや、大丈夫。夕べは疲れて二人ともぐっすりと眠った。
私を抱えるようにして眠るウィルティム様。今朝の髪の色は漆黒のままだ。
まだ目をつむって寝ている彼。もぞもぞと動いて、少し起き上がろうとする。けれど、ウィルティム様の腕に捕まっている私は、やはり抜け出すことが出来なかった。
「ハァ、どうしよう。起こすのも嫌だなぁ、私のために、無理していたみたいだし」
息を一つ吐くと、私に気が付いたのかウィルティム様もパチッと目を開けて私を見た。
「リア、おはよう」
少し寝ぼけたような声で、囁いてくれる。すると、ギュッと私を抱きしめる腕の力を強める。
「あぁ、リア。いいな、目覚めてすぐに君の顔が見える。うん、いいな」
確かめるように私の頬をなでると、そのまま顎を持ち上げてチュッと軽くキスをした。
「あっ、ウィル」
「あぁ、何も言わずに君に触れてしまったな、すまない」
「ううん、大丈夫。ウィルなら、どこを触っても大丈夫だから」
何気なく言った言葉だけど、それを聞いたウィルティム様は身体を一瞬固めている。
「リア、そうやって煽られると、調子に乗ってしまうから」
ハァ、と息を吐く彼に、私は言葉を伝える。
「あのね、ウィルは今、私の恋人だから大丈夫だよ。どこ触っても」
そう言った途端、私はぞくりとするような興奮を覚えた。彼が、瞳の奥に欲望を秘めて私を射るように見つめていたからだ。
「リア、いいのか? 怖い思いをした後だから、遠慮していたけれど、いいんだね」
「ウィル、あの、ね。ウィルのこと、私、大好きだよ。だから」
好きにして、と最後の言葉を言う前に彼は私に噛みつくようにキスをしてきた。それは、せき止められていた激流が、堤を超えて流れ込むように激しく私の上に圧しかかって来た。
「ウィル、ちょ、ちょっと」
ぷはっと口を開けた隙に空気を取り込む。まさか、いきなりこんなにも激しく貪られるように口を吸われるとは思っていなかった。
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