婚約破棄はまだ早い?男装令嬢、でも乙女!それは密かな二重婚約 〜幼馴染の純情騎士も、腹黒な美形商人も、どっちも素敵で選べませんっ!~

季邑 えり

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第一章

1-1

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「で? クローディア。君の隣にいる人は誰?」

 光の溢れる王宮の大広間。今夜は隣国の王太子殿下を迎え舞踏会が開かれている。
 眉を寄せて不機嫌な顔を隠さないレーヴァンは、その長身を生かして私の隣に立つクレイグを睨んでいた。

「ディア……、彼が君の言っていた人?」

 うっそりとした微笑みを顔に乗せ、クレイグは甘えたような声で親し気に私の耳元で囁いた。
 まるで、レーヴァンに私たちの仲の良さを見せつけるように。

 私は今、二人の男性に、それはもう目を見張るほどの美丈夫の二人に挟まれている。

「あの、私! 喉が渇いてきちゃったかも」

 とぼけてこの場から離れたい。
 彼らが顔を合わせないように、すごく気を付けていたのにどうしてこうなった?

 なぜなら二人は、二人は私の……婚約者だ。

 会場にいる人達の注目を集め、ひそひそと噂されているに違いないこの恐ろしく美形の二人は。

 ……二人とも、私の正式な婚約者だ。

 もちろん私の身体は、一つしかない。





 齢三歳にして私には二人も婚約者がいた。幼くして私は、親公認の二股状態の女の子になっていた。

「クローディア、あなたに素晴らしい婚約者を選んであげたわ! すっごくかっこいい子よ!」

 母が選んだ婚約者はクレイグ・アールベック。漆黒の髪色に翡翠のような黄緑色の瞳をした十歳の少年だった。
 伯爵家の次男である彼は母のお眼鏡にかなった美少年で、優秀な頭脳の持ち主だ。

 私を興味深そうに眺めた彼は、にっこりと笑って宣言した。

「私がこの先、彼女と商会を守りますね」

 それはそれは、天使のように美しい笑顔だったという。
 ……今では悪魔のような嘘くさい微笑みしかしないのに。





「クローディア、お前にふさわしい血筋の子を婚約者として選んだぞ。彼の子であれば間違いない」

 父が選んだ婚約者はレーヴァン・グランストレーム。
 赤く燃えるような髪に榛色の瞳をした、伯爵位を持つ宮廷騎士団長の三男だった。
 五歳にして運動神経と体格が抜群に優れていたので、父に選ばれた。

 まだまだやんちゃな年ごろの彼は、私の手をとって優しく言った。

「僕が君を守るからね」

 それはそれは、女の子の心を蕩けさせるような優しい笑顔だったという。
 ……今は不機嫌な顔しかしないのに。

 三歳の私に五歳のレーヴァンと、十歳のクレイグ。
 どちらも将来が楽しみになるような見目麗しく、優秀な血筋の少年たちだ。

 三歳の私に意見はない。ただ与えられた状況に慣れるしかなかった。



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