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第五章
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しおりを挟む「お父様……これは」
「あぁ、実質的な解体命令だ。クローディア、お前の受け持つ二つの公爵位、並びに商会の三つの関係を切り離せという意味だ」
エール王国からはシュテファーニエ公爵家を、ブリス王国はルートザシャ公爵家を、そしてフェイルズ国は商会を。その三つの権利を持つ私について、丁寧にではあるが分離させることを提案している。
「クローディア、以前からこのことは水面下で言われていた」
クレイグが説明を付け加えてくれる。
「君が二つの公爵位を継ぎ、かつ巨大な組織となった商会の後継ぎとなる。君はもうすでにフェイルズ国で、君の巨額な資金でもって戦争を止めた実績があるだろう。そしてこの三年間でフェイルズ国は豊かになりつつある」
あまり表にでていないが、フェイルズ国のダストン王を支えているのは商会による投資事業だ。それは商会とダストン王の関係が平等というよりは、商会が力を持つことになった。
「戦争を止める力がある、ということは始める力を持つと言うことだ。たとえ君にその気がないとしても。そしてそれは、王家にとっては非常に大きな脅威となる。憂いを取り除くために、君の受け継ぐ権利の解消を提案してきた」
だから、クローディア。君という帝国を分割するために三国の王家が動くことになった。
「でも、私の身体は一つだわ。どうすればいいの」
「解決する方法として、戸籍を増やす。一つはエール王国に、もう一つはブリス王国に。両方の王家が関わっているから、その申請は認められるだろう。そして、商会と君の権利関係を切り離す」
クレイグは淡々とした調子で説明してくれた。王家からの書状を読むだけではわからない真の意味などを、クレイグは丁寧に解説してくれる。そして最後に、クレイグは父と母を見て説明をくわえた。
「今からの提案は、私の考えたプランの中でクローディア、君の希望に最も添うものになると思う」
そう、前置きをした彼は短く息を吐いてから、私を見つめて口を開く。
「クローディア、私とこのまま結婚して欲しい。そして、君がシュテファーニエ公爵家を継ぎ、商会の権利は全て私に譲って欲しい」
「それはっ」
レーヴァンが少し憤って口を挟むが、それを抑えるようにクレイグは話し続けた。
「同時に、レーヴァンとも結婚する。ルートザシャ公爵を継ぐのは彼だ」
クレイグは、これが最善の解決方法だと言って説明を終えた。私の身体は一つだけれど、戸籍は二人分用意する。そして権利を三人で分ける。私と、レーヴァンとクレイグと。そして、それぞれを私が生んだ子どもが継いでいくのが望ましい。
「混乱を少なくし、かつ誰しもが納得する方法だ。三王家も私たちの決断を無下にはしないだろう」
「お父様も、お母様も、それでいいの? 私は……その、望み通りといえばそうなるのだけど」
「クローディア、私はお前に随分と無理をさせて来た。お前が納得できる方法であれば、それで構わない。レーヴァンとクレイグ君、君たちの方が辛い判断となるが、大丈夫か?」
父が二人を見ると、レーヴァンがゆっくりと話し出した。
「閣下、自分は閣下の後を継ぎ、ルートザシャ公爵の伝統である武を尊ぶ家を引き継ぐことができるのは、望外の喜びです。もちろん、クローディアと結婚できることも、感謝します」
レーヴァンが話し終わると、クレイグも話し始めた。
「私も、クローディアと結婚し商会を受け継ぐことは喜んで引き受けます。たとえ、彼女にもう一人夫がいると言っても、これまでも婚約者が二人いたわけですから何とかなるでしょう。実際、これ以上の解決方法が見あたらない」
すると、最後まで沈黙をしていた母が口を開いた。
「クローディア、覚悟を決めなさい。もう一着、ウェディングドレスを作るわよ」
母以外の全員が黙るしかなかった。どこの国でも母親は強かった。
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