88 / 88
第五章
5-20
しおりを挟む「クローディア、クレイグ様、一緒に踊りましょう!」
結婚式の後の披露パーティーでは異国の踊りが紹介された。太鼓のリズムと手拍子だけで踊るものだ。
舞踊団の人に一緒に踊ろうと誘われる。慣れないけれど、若い人たちが率先して踊っている。二人で腕を組んで、片足を上げて三回まわり、そして反対方向に三回まわる。
陽気な踊りだけど、クレイグはこういう踊り無理だよね……と隣にいる人を見ると突然クレイグが私の腕を引っ張った。
「クローディア、踊るぞ!」
「きゃぁっ」
私たちが踊りに加わると、俄然盛り上がってくる。歓声が上がり手拍子が大きく鳴る中、クレイグが普段の冷静な顔を崩して笑いながら踊り始めた。
「ふふっ、ふふふっ!」
こんなにも弾けているクレイグを見るのは初めてだ。私も嬉しくなって笑顔がこぼれる。
「ありがとう、クレイグ」
「どうした?」
しばらく踊った私たちは、息を切らしながら隅の方に移動した。
「だって、こんなにも……卑怯な私を許してくれて、結婚してくれて、……嬉しくて」
「君は卑怯な技が得意なんだろう? 私はそんな君が好きなだけだよ」
「っ、クレイグ!」
今、好きって言ってくれた。好きって。私のことが好きって。
「何度でも言うよ、ようやくその権利を手に入れたからね。クローディア、愛しているよ」
私のこころの声が駄々洩れしていたのだろうか、クレイグは私の額にチュッとキスをした。常に冷静なことで有名な彼が浮かれている。そのことだけで、周囲にいた人たちから歓声が上がる。
「ク、クレイグ……わた、私も好きっ!」
今度は私から、思いっきり背伸びをして彼の頬にチュッとキスをした。レーヴァンほどではないけれど、彼も背が高い。
ヒュー、ヒューっと周囲から煽る声が聞こえてくる。「もっとやれ!」とスーレル王太子殿下も叫んでいた。
クレイグはその声に応えるように私の頬を両手で挟むと、軽くなんかない、ディープなキスを私にしてきた。下唇を食み、上唇を吸いながら舌をチロリと出して私の口内を犯す。
そのクレイグのご乱心ともいえるキスに周囲はさらに盛り上がった。最後にチュパッと派手に音を立てて唇を離したクレイグが、周囲に宣言する。
「花嫁は疲れたようなので、これから私が寝所へ案内したい。皆、今日は無礼講で楽しんでほしい」
おーっという歓声が上がり、クレイグは私を横抱きにして公爵邸の中へ入っていく。その顔は、口角を上げて嬉しそうに笑っていた。
——クレイグ、ありがとう。あなたの揺るがない愛情のおかげで、私は幸せを感じている。
「はぁっ、はぁっ、あああああ————!」
「おめでとうございます!女の赤ちゃんですよ!」
レーヴァンとの結婚式から一年後、私は待望だった赤ちゃんを産んだ。紫の瞳をした女の子だ。まだ髪の色はわからない。
「よかった、クローディア」
「身体は大丈夫か、ディア」
二人の夫が産院に駆けつけてくれる。普段、顔を合わせることのない二人だけれど、さすがに一人目の出産なので心配して来てくれた。生まれた子どもが何を引き継ぐかは、その子の性格や適性を考えてから決めることにしている。
二人は時々、どうやら私には秘密で会うことがあるようだ。聞けば、私が誘拐されたあの事件の時からやり取りがあったらしい。
この子の名前はどうしようかな、そんなことを考えていたら二人がそれぞれ、釣書を持ってやって来た。
「クローディア、この子にぴったりの男の子を見つけて来た。この子なら、将来のルートザシャ公爵を継ぐのに相応しい騎士となるに違いない」
「ディア、私たちの娘にふさわしい男の子だよ。娘がシュテファーニエ公爵を継ぐ時に、支えになる夫になるだろう」
「「さぁ、婚約者を決めよう」」
二人ともどうかしている。こんな生まれたての娘に婚約者候補の釣書を持って来るなんて。このままでは、この娘の婚約者が二人になってしまう。
「だっ、ダメよ! 婚約者が二人だなんて! 絶対にダメ!」
【婚約破棄はまだ早い? それは密かな二重婚約……にはしません!】
(おわり)
43
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
私が行方不明の皇女です~生死を彷徨って帰国したら信じていた初恋の従者は婚約していました~
marumi
恋愛
「あら アルヴェイン公爵がドゥーカス令嬢をエスコートされていますわ」
「ご婚約されたと噂を聞きましたが、まさか本当だとは!」
私は五年前までこの国の皇女エリシアだった。
暗殺事件に巻き込まれ、幼なじみで初恋の相手だった従者――アルヴェイン公子と共に命からがら隣国、エルダールへ亡命した。
彼の「必ず迎えに来る」その言葉を信じて、隣国の地で彼を待ち続けた……。
それなのに……。
やっとの思いで帰国した帝国の華やかなパーティー会場で、一際目立っているのは、彼と、社交界の華と言われる令嬢だった――。
※校正にAIを使用していますが、自身で考案したオリジナル小説です。
※イメージが伝わればと思い、表紙画像をAI生成してみました。
【完結】小さなマリーは僕の物
miniko
恋愛
マリーは小柄で胸元も寂しい自分の容姿にコンプレックスを抱いていた。
彼女の子供の頃からの婚約者は、容姿端麗、性格も良く、とても大事にしてくれる完璧な人。
しかし、周囲からの圧力もあり、自分は彼に不釣り合いだと感じて、婚約解消を目指す。
※マリー視点とアラン視点、同じ内容を交互に書く予定です。(最終話はマリー視点のみ)
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。10~15話前後の短編五編+番外編のお話です。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。※R6.5/18お気に入り登録300超に感謝!一話書いてみましたので是非是非!
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。 ※R7.2/22お気に入り登録500を超えておりましたことに感謝を込めて、一話お届けいたします。本当にありがとうございます。 ※R7.10/13お気に入り登録700を超えておりました(泣)多大なる感謝を込めて一話お届けいたします。 *らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.10/30に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。 ※R7.12/8お気に入り登録800超えです!ありがとうございます(泣)一話書いてみましたので、ぜひ!
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
虐げられた私が姉の策略で結婚させられたら、スパダリ夫に溺愛され人生大逆転しました。
専業プウタ
恋愛
ミリア・カルマンは帝国唯一の公爵家の次女。高貴な皇族の血を引く紫色の瞳を持って生まれたワガママな姉の陰謀で、帝国一裕福でイケメンのレナード・アーデン侯爵と婚約することになる。父親であるカルマン公爵の指示のもと後継者としてアカデミーで必死に勉強してきて首席で卒業した。アカデミー時代からの恋人、サイラスもいる。公爵になる夢も恋人も諦められない。私の人生は私が決めるんだから、イケメンの婚約者になど屈しない。地位も名誉も美しさも備えた婚約者の弱みを握り、婚約を破棄する。そして、大好きな恋人と結婚してみせる。そう決意して婚約者と接しても、この婚約者一筋縄ではいかない。初対面のはずなのに、まるで自分を知っていたかのような振る舞い。ミリアは恋人を裏切りたくない、姉の思い通りになりたくないと思いつつも彼に惹かれてく気持ちが抑えられなくなっていく。
手出しさせてやろうじゃないの! ~公爵令嬢の幼なじみは王子様~
薄影メガネ
恋愛
幼なじみの王子様ジュードは天使のような容姿で文武両道の完璧な男性。ジュードと幼なじみの公爵令嬢エルフリーデはそんな完璧王子と婚約していて、二人は親公認の仲でもある。ちょっとおてんばなエルフリーデと大人なジュード、二人は幼い頃から仲良しでいつも傍にいるのが当たり前の大切な存在。けれど、エルフリーデにはある不満があって……
結婚するまで手を出さない? なら手出しさせてやろうじゃないの!
【R18】熱い夜の相手は王太子!? ~婚約者だと告げられましたが、記憶がございません~
世界のボボブラ汁(エロル)
恋愛
激しい夜を過ごしたあと、私は気づいてしまった。
──え……この方、誰?
相手は王太子で、しかも私の婚約者だという。
けれど私は、自分の名前すら思い出せない。
訳も分からず散った純潔、家族や自分の姿への違和感──混乱する私に追い打ちをかけるように、親友(?)が告げた。
「あなた、わたくしのお兄様と恋人同士だったのよ」
……え、私、恋人がいたのに王太子とベッドを共に!?
しかも王太子も恋人も、社交界を騒がすモテ男子。
もしかして、そのせいで私は命を狙われている?
公爵令嬢ベアトリス(?)が記憶を取り戻した先に待つのは── 愛か、陰謀か、それとも破滅か。
全米がハラハラする宮廷恋愛ストーリー……になっていてほしいですね!
※本作品はR18表現があります、ご注意ください。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる