31 / 103
1-29
しおりを挟む
「デズモンドさん、飲んでいらっしゃいますか?」
顔を赤くして、いかにも酔っ払いになった同僚が、近づいてきた。
「あ、はい。十分いただいています」
さっきから、こうして男性から声をかけられる。密命を考えると、この機会に進展できそうな人を、見つけておいた方がいいのかもしれない。
とはいっても、過去に付き合ったことのある人は、彼だけだから、どうしても比べてしまう。そうすると、どんな男性もゴボウとか、ニンジンに見えてきて…なんていうか、頭に入ってこない。
先ほど、来週からの新しいメンバーでの顔合わせも終わっていた。シキズキ先輩が腕を組みながら、壁にもたれかかって、その顔合わせの様子をみていた。彼の部下も何人か、参加するからだろう。
…と、思っていたのに。どうやら彼も、開発チームに少し、参加する話を同僚から聞いた。
「今回、あのドース部長もメンバーに入るみたいだよ」
「えぇ~、あの人がいると、周囲が凍るって話だけど、大丈夫なの?」
「男でも、あの人の冷気を感じるとぞくっとするよな~」
「あの、その…ドース部長が入ると、大変なんですか?」
話の輪に入らせてもらう。彼の話は、何でも聞いておきたい。
「あ、デズモントさんは知らないよね。第二開発部の、ドース部長。彼、めっちゃカッコイイけど、いつも冷たいっていうか、そっけないというか。氷の魔術師、なんて呼ばれているのよ。あの銀髪が動くと、冷気が出ているって噂もあるくらい」
「そうでしたか。私、時々空気読まないで発言してしまうので、大丈夫でしょうか…」
意外だ、シキズキ先輩が冷たいだなんて。あんなに情熱的で、甘ったるい人、いないのに。ああ、でもセリアも、そんな顔は私にしか見せていない、って言っていたかなぁ。
確かに、初日の挨拶では無表情で、冷たかった。あれが、通常の先輩なのかもしれない。だとしたら、確かに近寄りがたい人、だよね。
これから、彼に近づいて、何とか振り向かせるためには。接点を持たないと。今夜はせっかくの機会なのに、私から話しかける勇気が、でてこない。その内に、他の人から話しかけられてしまって、そして新しいグラスを差し出される。
ああ、どうしよう。なんだか、飲みなれないお酒も、回ってきてしまった。
目の前がぐにゃり、と曲がった途端、膝がカクン、と崩れ落ちた。いけない、酔ってる、私。
「アユ、大丈夫か?」
そう言って、懐かしい低い声で私をアユと呼び、腕を支えてくれたのは、―――シキズキ先輩だった。
顔を赤くして、いかにも酔っ払いになった同僚が、近づいてきた。
「あ、はい。十分いただいています」
さっきから、こうして男性から声をかけられる。密命を考えると、この機会に進展できそうな人を、見つけておいた方がいいのかもしれない。
とはいっても、過去に付き合ったことのある人は、彼だけだから、どうしても比べてしまう。そうすると、どんな男性もゴボウとか、ニンジンに見えてきて…なんていうか、頭に入ってこない。
先ほど、来週からの新しいメンバーでの顔合わせも終わっていた。シキズキ先輩が腕を組みながら、壁にもたれかかって、その顔合わせの様子をみていた。彼の部下も何人か、参加するからだろう。
…と、思っていたのに。どうやら彼も、開発チームに少し、参加する話を同僚から聞いた。
「今回、あのドース部長もメンバーに入るみたいだよ」
「えぇ~、あの人がいると、周囲が凍るって話だけど、大丈夫なの?」
「男でも、あの人の冷気を感じるとぞくっとするよな~」
「あの、その…ドース部長が入ると、大変なんですか?」
話の輪に入らせてもらう。彼の話は、何でも聞いておきたい。
「あ、デズモントさんは知らないよね。第二開発部の、ドース部長。彼、めっちゃカッコイイけど、いつも冷たいっていうか、そっけないというか。氷の魔術師、なんて呼ばれているのよ。あの銀髪が動くと、冷気が出ているって噂もあるくらい」
「そうでしたか。私、時々空気読まないで発言してしまうので、大丈夫でしょうか…」
意外だ、シキズキ先輩が冷たいだなんて。あんなに情熱的で、甘ったるい人、いないのに。ああ、でもセリアも、そんな顔は私にしか見せていない、って言っていたかなぁ。
確かに、初日の挨拶では無表情で、冷たかった。あれが、通常の先輩なのかもしれない。だとしたら、確かに近寄りがたい人、だよね。
これから、彼に近づいて、何とか振り向かせるためには。接点を持たないと。今夜はせっかくの機会なのに、私から話しかける勇気が、でてこない。その内に、他の人から話しかけられてしまって、そして新しいグラスを差し出される。
ああ、どうしよう。なんだか、飲みなれないお酒も、回ってきてしまった。
目の前がぐにゃり、と曲がった途端、膝がカクン、と崩れ落ちた。いけない、酔ってる、私。
「アユ、大丈夫か?」
そう言って、懐かしい低い声で私をアユと呼び、腕を支えてくれたのは、―――シキズキ先輩だった。
3
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!
ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」
それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。
挙げ句の果てに、
「用が済んだなら早く帰れっ!」
と追い返されてしまいました。
そして夜、屋敷に戻って来た夫は───
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる