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第1章
街へ2
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「なっ…」
ルツの知っている街は木造の店が立ち並ぶ、所謂露店だった。
だがこの街はレンガ造りの店が立ち並ぶ商店街だった。
この街ほど大きい街をルツは見たこともなければ聞いたこともなかった。
ルツは圧倒されつつも枯れ枝のような細い脚を動かした。
まずは服だとルツは店に入ると、
「おいっ!此処はお前なんかが来る店じゃねーぞ!!」
店主が怒鳴りながら近づいてきたが金を見せて黙らせた。
ここは防具店だ。
ルツのような浮浪者がよく万引きをして捕まっていたのだろう。
気がたつのも仕方がないことだ。
ルツは60ギルの偽竜の鱗でできた黒い防具一式を買った。
次にルツは武具店へ向かった。
ルツの武器は弓矢だが消費が早いため小剣を買った。
15ギルと少し高めだが長く使えることを考えると安いものだろう。
最後にルツは携帯保存食を取り扱う店へと向かった。
そこで干し肉と乾パンを買った。
もって1ヶ月ほどだが、取り敢えずとしては十分だ。
あわせて8ギルだったので残りの所持金は37ギルになった。
今夜からの寝床に使えばちょうど良いだろう。
「ガリムスの跳ね橋」という安値で朝晩食事とシャワー付きの良い宿を見つけてはや一月。
周りとの生活に馴染めてきたある夜のことだった。
冒険者として生計をたてているルツは宿での一人酒が日常となっていたのだがその日は、一人ではなかったのだ。
正確には室内に他の客が5人程いただけなのだが、普段一人のルツにとってはとても狭く感じられた。
男三人と女二人のパーティのようでとても仲がよく見えた。
「なぁ、聞いてくれよみんなぁ…俺昔から好きだったやつに振られたんだよぉ…」
今日でもう何回目だとか、泣くなだとかガヤガヤと騒ぐ客たちの声がルツにはどこか遠く思えた。
ルツには仲間と呼べる者などおらず今も昔もずっと独りで生きてきた。
ルツは突然一人が寂しく感じられたのだ。
今までは一人で十分だと、そう感じていたはずなのになんだか急に仲間と呼べる者が欲しくなった。
しかし今まで一人で生きてきたルツが仲間を募集できる筈もなく、その日は考えながら床についたので翌朝は人生初の寝坊をすることになった。
愛想も恰幅も良い女将に
「お客さんも人間らしい所があるんだね」と笑われたことは恥と言える。
ルツは仕事(クエスト)に行かない日は少し大きめの服を常に着ている。
以前受けたクエストでとれた柔らかい植物の茎を煮て割いて作る糸を織った物で普段着用にと三着作成した。
女将に腕を誉められたが悪い気はしなかった。
今日は仕事に行く予定もないのでこの普段着を着て理由もなく街を散策することにした。
ふと、怒声が聞こえ顔を向けるとひどい有り様の男が道で罵られていた。
あぁ、奴隷商館の客引きだと一目でわかった。
周りをみても冷めた目でみる者は居れど止めようとする者はいない。
なぜなら客引きだとわかっているからだ。
この街はセイレーン王国という国の首都でありセイレーン王国では、奴隷に必要以上の暴力を行使することを禁止されていた。
だがルツにはその奴隷の男が切迫した表情をしていることが気にかかった。
いい鴨だなと自負しながらも仲間ができるかもと、期待に胸を膨らませるルツであった。
この先は本編に関係の無いあとがきになります
❰あとがき❱
毎回書く予定はないのですが、単価についての説明が必要かと思ったので少し先にこの話の設定を説明したいと思います。
ルツの知っている街は木造の店が立ち並ぶ、所謂露店だった。
だがこの街はレンガ造りの店が立ち並ぶ商店街だった。
この街ほど大きい街をルツは見たこともなければ聞いたこともなかった。
ルツは圧倒されつつも枯れ枝のような細い脚を動かした。
まずは服だとルツは店に入ると、
「おいっ!此処はお前なんかが来る店じゃねーぞ!!」
店主が怒鳴りながら近づいてきたが金を見せて黙らせた。
ここは防具店だ。
ルツのような浮浪者がよく万引きをして捕まっていたのだろう。
気がたつのも仕方がないことだ。
ルツは60ギルの偽竜の鱗でできた黒い防具一式を買った。
次にルツは武具店へ向かった。
ルツの武器は弓矢だが消費が早いため小剣を買った。
15ギルと少し高めだが長く使えることを考えると安いものだろう。
最後にルツは携帯保存食を取り扱う店へと向かった。
そこで干し肉と乾パンを買った。
もって1ヶ月ほどだが、取り敢えずとしては十分だ。
あわせて8ギルだったので残りの所持金は37ギルになった。
今夜からの寝床に使えばちょうど良いだろう。
「ガリムスの跳ね橋」という安値で朝晩食事とシャワー付きの良い宿を見つけてはや一月。
周りとの生活に馴染めてきたある夜のことだった。
冒険者として生計をたてているルツは宿での一人酒が日常となっていたのだがその日は、一人ではなかったのだ。
正確には室内に他の客が5人程いただけなのだが、普段一人のルツにとってはとても狭く感じられた。
男三人と女二人のパーティのようでとても仲がよく見えた。
「なぁ、聞いてくれよみんなぁ…俺昔から好きだったやつに振られたんだよぉ…」
今日でもう何回目だとか、泣くなだとかガヤガヤと騒ぐ客たちの声がルツにはどこか遠く思えた。
ルツには仲間と呼べる者などおらず今も昔もずっと独りで生きてきた。
ルツは突然一人が寂しく感じられたのだ。
今までは一人で十分だと、そう感じていたはずなのになんだか急に仲間と呼べる者が欲しくなった。
しかし今まで一人で生きてきたルツが仲間を募集できる筈もなく、その日は考えながら床についたので翌朝は人生初の寝坊をすることになった。
愛想も恰幅も良い女将に
「お客さんも人間らしい所があるんだね」と笑われたことは恥と言える。
ルツは仕事(クエスト)に行かない日は少し大きめの服を常に着ている。
以前受けたクエストでとれた柔らかい植物の茎を煮て割いて作る糸を織った物で普段着用にと三着作成した。
女将に腕を誉められたが悪い気はしなかった。
今日は仕事に行く予定もないのでこの普段着を着て理由もなく街を散策することにした。
ふと、怒声が聞こえ顔を向けるとひどい有り様の男が道で罵られていた。
あぁ、奴隷商館の客引きだと一目でわかった。
周りをみても冷めた目でみる者は居れど止めようとする者はいない。
なぜなら客引きだとわかっているからだ。
この街はセイレーン王国という国の首都でありセイレーン王国では、奴隷に必要以上の暴力を行使することを禁止されていた。
だがルツにはその奴隷の男が切迫した表情をしていることが気にかかった。
いい鴨だなと自負しながらも仲間ができるかもと、期待に胸を膨らませるルツであった。
この先は本編に関係の無いあとがきになります
❰あとがき❱
毎回書く予定はないのですが、単価についての説明が必要かと思ったので少し先にこの話の設定を説明したいと思います。
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