NETSU

第1章

生活開始

「ガリムスの跳ね橋」に着くとルツはまず女将さんにカインについて話した。

奴隷であることを説明しても女将さんは二人用の部屋を用意してくれた。

料金が変わらないだけでなく部屋のグレードもそのままらしい。が、流石に食事は用意できないそうだ。

少しの間は半分の量の食事になるがルツは少食なので問題なかった。


新しく用意された部屋へ二人で入ると早速ルツはカインに命令した。

「カイン…今からこの部屋の掃除をするぞ」

ルツはまず部屋を掃除する。

特に掃除が好きな訳でもないのだが部屋の上部の蜘蛛の巣等に気が取られるためある程度の清潔な部屋にしたかった。

「掃除…ですか」

呆気にとられているカインをよそにルツは備え付けの雑巾を手に取った。

(ウォーター)と心の中で唱えて水を出し雑巾に染み込ませた。

「あっ、主っ!?」

カインが大声を出してルツの行動を止めさせた。

「私が、私がやりますので…」というカインに二人の方が効率がいいからと言い聞かせ二人でスムーズに掃除を済ませた。


しかし終わったときには既に日は落ちていて女将さんの夕食の報せが聞こえてきた。

そのまま降りていこうとしたがカインの服装が酷いことを思い出したので、着られないサイズを作ってしまい失敗作だとインベントリに入れてあった服を引っ張り出した。

カインに渡すと

「宜しいのですか!!」

と感激した様子だった。

明日にはしっかりした服を用意してやるからな、と心の中で考えているとカインの着替えが終わった。

ルツが着ると大きすぎた服をカインが着ると丁度のサイズだったことは少しだけ悔しく思った。


食堂にいくと女将さんが食事を用意してくれていたのでカインが受け取り席へと運んだ。

女将さんにもう一枚皿を用意してもらい４:６の割合で食事を分けてカインに渡した。

「食え。」

えっ、と驚いたカインが

「主より多くの食事を頂けません。」と、律儀に言うカインへとルツは自分より体が多いのだから食べろとだけ言うと自分の皿の方へ向いて食事を始めてしまった。

カインは困惑しながらも自分の皿のにくへフォーク刺すと口へ運んだ。

すると目を輝かせながら黙々と食べ始めた。

ルツが毎日苦労していた料理がカインのおかげで楽に食べられた。

カインが幸せそうなので量は足りたのだろう。

二人は取り合えず明日に備えて今日はもう寝ることにした。