平凡女だってイケメンが欲しい

雨宮志津

文字の大きさ
3 / 4
最悪の出会い

上京③

しおりを挟む


希さんの仕事場を見学すると約束した日の前日。
明日着ていく服装を悩みに悩んだ末に決め、翌朝お化粧もバッチリして準備万端!意気揚々と現場に向かった。

現場で希さんと合流し、そこからは希さんに着いて回った。そこは今まで見聞きしたことのないようなとても華やかな世界だった。しかしその幸せな時間も一瞬。何故か途中から希さんのいない隙間時間にちょっとした雑用を頼まれ始め、気づいたら希さんの仕事見学をそっちのけにして、頼まれた雑用の処理に追われていた。(素人に頼むか普通...)
やっとひと段落ついた頃には既に沢山の雑用をこなし終えた後で、髪はボサボサ、お化粧も撚れ、服も所々汚れが目立っている。
「こんなはずじゃなかったのに...」
つい本音が口から出た。ちょうどその時、私のいるスタジオの入口が騒々しい事に気づいた。少し近づいて見てみると、その中心にいたのはなんとあの有名な俳優

【新堂歩】だった。

芸能人に会えたことへの興奮で周りが見えなくなっていた為、当然足元に伸びていたコードになど全く気付かなかった。彼の方へと一歩足を踏み出した途端に、足に何か線状のようなモノが引っかかる感覚を覚えたと同時に「ギギギー」とした嫌な音が聞こえ、そのまま

「ガッシャーン!!」

何か重い物体が落ちたような音がスタジオ内に響きわたりスタジオ内は一気に静まった。周りの視線が一点に集まっている。恐る恐る後ろを振り向くと、やはり撮影の機材がドミノ倒しのように無惨に倒れていた。機材の部品と思われる破片がいくつか地面に散在している。状況を把握し始めた周囲は徐々にざわつき始め、裏方スタッフが急いで機材の回収を始めた。
それにもかかわらず当事者の私は自分のしでかした事の大きさと、機材やら何やらの賠償責任が頭を駆け巡り、項垂れながら顔を青くしていた。

「コツ、コツ、コツ」

自分の方へ足音が近づいてくる。鼻息を荒くし、目をギラギラとさせながら怒っている小太りの監督が来たのかと思った。
しかし、頭上から聞こえてきた声は怒りを含んだものでは無く、優しく労るようなもので、

「大丈夫ですか?怪我しませんでした?」

と言いながら差し伸べられた手に掴まり同じ目線に立つと、わたしは驚きのあまり目を見張った。
なんと私に手を差し伸べてくれたのは、あの
【新堂歩】だったのだ。
私は自身の身に起きた事があまりにも受け入れ難いものだった為、動転してしまい、思わずお礼の一言も言わずにスタジオから飛び出してしまった。背後から監督の怒鳴り声が聞こえた様な...聞こえなかった様な(後半で)
                             





後日 
希さん経由でしっかりと機材の賠償金は請求され、返済するにもまだバイトが決まっていなかった為、優しい監督のご配慮により現場でADとしてアルバイトをして返済することとなった。







この後、現場で私と彼が再会?するのは後程。




















しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ある日、憧れブランドの社長が溺愛求婚してきました

蓮恭
恋愛
 恋人に裏切られ、傷心のヒロイン杏子は勤め先の美容室を去り、人気の老舗美容室に転職する。  そこで真面目に培ってきた技術を買われ、憧れのヘアケアブランドの社長である統一郎の自宅を訪問して施術をする事に……。  しかも統一郎からどうしてもと頼まれたのは、その後の杏子の人生を大きく変えてしまうような事で……⁉︎  杏子は過去の臆病な自分と決別し、統一郎との新しい一歩を踏み出せるのか?   【サクサク読める現代物溺愛系恋愛ストーリーです】

幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜

葉月 まい
恋愛
近すぎて遠い存在 一緒にいるのに 言えない言葉 すれ違い、通り過ぎる二人の想いは いつか重なるのだろうか… 心に秘めた想いを いつか伝えてもいいのだろうか… 遠回りする幼馴染二人の恋の行方は? 幼い頃からいつも一緒にいた 幼馴染の朱里と瑛。 瑛は自分の辛い境遇に巻き込むまいと、 朱里を遠ざけようとする。 そうとは知らず、朱里は寂しさを抱えて… ・*:.。. ♡ 登場人物 ♡.。.:*・ 栗田 朱里(21歳)… 大学生 桐生 瑛(21歳)… 大学生 桐生ホールディングス 御曹司

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

ことりの上手ななかせかた

森原すみれ@薬膳おおかみ①②③刊行
恋愛
堀井小鳥は、気弱で男の人が苦手なちびっ子OL。 しかし、ひょんなことから社内の「女神」と名高い沙羅慧人(しかし男)と顔見知りになってしまう。 それだけでも恐れ多いのに、あろうことか沙羅は小鳥を気に入ってしまったみたいで――!? 「女神様といち庶民の私に、一体何が起こるっていうんですか……!」 「ずっと聴いていたいんです。小鳥さんの歌声を」 小動物系OL×爽やか美青年のじれじれ甘いオフィスラブ。 ※小説家になろうに同作掲載しております

降っても晴れても

凛子
恋愛
もう、限界なんです……

【完結】結婚式の隣の席

山田森湖
恋愛
親友の結婚式、隣の席に座ったのは——かつて同じ人を想っていた男性だった。 ふとした共感から始まった、ふたりの一夜とその先の関係。 「幸せになってやろう」 過去の想いを超えて、新たな恋に踏み出すラブストーリー。

恋。となり、となり、隣。

雉虎 悠雨
恋愛
友人の部屋にルームシェアすることになった篠崎ゆきは、引っ越してから三ヶ月、家が変わった以外は今まで通りの日常を送っていた。隣は赤ちゃんがいる家族と一人暮らしの背の高いあまり表情のない男。 ある日、マンションに帰ってくると、隣の部屋の前でその部屋の男、目雲周弥が倒れていた。 そして泥酔していたのを介抱する。 その一ヶ月後、またも帰宅すると隣の部屋の前でうずくまっている。また泥酔したのかとゆきが近づくと、前回と様子が違い酷いめまいを起こしているようだった。 ゆきは部屋になんとか運び入れ、また介抱した。 そこからゆきの日常も目雲の日常も変化していく。 小説家になろうにも掲載しています

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

処理中です...