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その後~特別編~
Ⅰ
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夕方の市場は、人通りが少なくて買い物がしやすいですが、商品が少ないです。しかも日が経ちすぎていたりボロボロだったり、状態が悪いものばかり。それでも安くなるため、最近はこの時間帯に来ています。
「やぁルウちゃん。ご主人様の容態はどうだい?」
「あいかわらずです。魔導書を作成しようとして傷が開きそうになりました」
まったく、お世話をするこちらの身にもなってほしいです。とはいえ、顔見知りの承認さんとこんな軽口を叩きあっていても、本当は笑い話ではありません。
ご主人様は大魔道士の魔導書に感銘を受けたらしく、創り直す魔導書を根本から見直しています。私は魔導書を創ったことはありませんが、ご主人様の様子を見るに尋常ではない負担がかかっているはず。本当は工房で魔導具も新しく創りたいのに、あえて魔導書を先に創るというのがせめてもの救いなのでしょう。
羽根ペンを握る指先が裂けて、血を流していても本人は気づかなかったくらいなんですから。改めてご主人様の異常さを目の当たりにしました。普通だったら痛みや血で止まったりするでしょう? けどあの人、ユーグ様はまったく気づいていませんでした。
『わざと怪我を悪化させて長引かせるおつもりですか? 働きたくないのですか? それで私を働きに出させるおつもりですか? 甲斐性なしのろくでなしになりつつあると自覚されてますか?』
本当はもっと注意したかったのですが、私に注意をされて(なぜか)悶えながら喜んでいる気持ち悪いご主人様にはなにも言えなくなってしまいます。
あんなことがあったというのに、ご主人様はなにも変わりません。以前と同じように魔道士になるための研究に情熱を捧げて、そして私への好意が丸わかりなのです。裏切ったことを責めるわけでもなく。それが当たり前だとでもいわんばかりにあまりにも以前と同じすぎて。自然すぎて嬉しくて。ありがたくって。
そもそも、普通裏切った奴隷なんて側に置かないでしょう。好きで居続けられないでしょう。なのになにも変わりません。私のことに一喜一憂して悶えて叫んだりして。それなりの覚悟を決めてそれなりの命令を受けるつもりであったのにあいかわらずなにもしないチキン野郎ですし。ああ、いえ。別にえっちな要求を期待していたわけではなくって。
ともかく。最初は困惑していたけど、慣れというのはおそろしいですね。今では私も本音で接してしまいます。本当に以前通りに戻っています。我ながら調子いいなぁっておもうけど、でもご主人様もそう望んでいますし。もうこんなかんじでいいかなぁって。
けれど、相変わらず無茶を平気でしてしまうご主人様には、呆れるやら心配するやら。この人の死因はきっと過労死か寿命しかないってくらいです。不安だし心配ですけど、心の底から楽しんでいるご主人様を無理に止められず。そんなご主人様に尽くしたい、夢を叶えてほしい、自分も役にたちたい、けど体を労ってほしい。以前なら苦しんだ感情も、今の私は受け入れられています。それが幸せなんだって実感できるくらい。
「ははは。魔道士(予定)さんはしょうがねぇなぁ」
「本当に、困ったご主人様です」
この幸せが奴隷としての幸せなのはたしかです。充実しています。けど、それをご主人様に伝えると調子にのりますから。ですから、こうやって愚痴としてこぼしてバランスをとるくらいがちょうどいいのでしょう。
市場からの帰り道、偶然シエナ様に会いました。私は頭を下げます。むこうも私を視認したらしく、美しいお顔が嫌悪感で歪みます。
私は・・・・・・気まずいのでそのまますたこらさっさと通り過ぎます。私がご主人様を裏切ってエドガー様に協力していたことが許せないのでしょう。騎士として。そしてユーグ様の親友として。お見舞いに来るときの態度と視線から肌でかんじます。
許してほしいとは願いません。ただご主人様と今後も友人として接していただきたいとおもっています。だから私にできることは、せめてシエナ様が不愉快にならないよう去るのみ・・・・・・・・・・・・。
けど、シエナ様は私の後をピッタリついてきています。なにゆえ・・・・・・・・・?
気配と音、そして嗅覚がシエナ様の存在をすぐ近くにいると私に訴え続けています。もしかして、ユーグ様のお見舞いに行く予定なのでしょうか? だとしたら、私は少し帰る時間をずらしたほうがよいでしょう。
ちょうどご主人様に頼まれて素材をいくつか買いに行くつもりだったので、助かりました。マット様のお店に入って、商品を見繕います。
「やぁルウちゃん。こんばんは。また旦那のお使いかい?」
こうやって以前と変わりなく話してくれるマット様には頭が下がります。この方にも少なからずご迷惑をかけたのに。私は、なんて恵まれているのでしょうか。
「あ、あの。コウモリの牙ありますか? それとマンドレイクも」
「ん。他には?」
「あ、あとは、そうですね」
以前の私は、きっとマット様にもシエナ様にも罪悪感なんて抱かなかったでしょう。話し方も動揺しないで、すらすらと言葉が自在に出ていたに違いありません。復讐の対象であったユーグ様意外はその他。どうでもいい存在だったんですから。
「了解。揃えておくよ。それで、シエナの旦那は? なにか用事でも?」
「え?」
私の後ろに視線をやったマット様につられ、私は振り向きました。なんとシエナ様がいるではないですか。
「別に。用件というわけでもないさ。ただ、近くまで寄ったから世間話でもってね」
「へぇ。そいつぁありがてぇ。けど、騎士様に聞かせるようなお話はありやせんぜ」
お二人のやりとりから推察するに、どうもシエナ様はマット様に会いに来たんでしょう。どうも騎士のお役目の一環として情報収集を行っているようです。マット様は曲がりなりにも商人。いろいろな人を通じた話を知っているからかもしれません。
「最近、急成長しているスェニルタ商会なんて知っているかい? 僕は行ったことないけど、ガールフレンドが教えてくれてさ。今度プレゼントに利用しようかなって」
「なんでも魔道士と契約しているとかで、珍しい魔導具を安価で売っている商会だって」
「へぇ」
「けど、安くて小さくて効果はいまいち、長持ちしなくてすぐに壊れちまうそうです」
「ふぅん。どこにでもある、ありがちな商会なんだね。女の子はどうしてそんなもの買うんだろうね。素材はこのお店で?」
「独自のルートがあるんじゃないですかい?」
「マット。君も自分から営業かけないとさ。駄目なんじゃない? 商人目指してるんでしょ?」
「細く長くを心がけているんで。それに、下手に商会と関わるとろくなことになりませんよ」
「うわぉ。なにか昔嫌なことでもあったのかい?」
シエナ様はどうやら本当に世間話をしに来ただけのようです。それからも仕事のことやお互いの近況を話しています。偶然私と行くお店が被ってしまった。単にそれだけだったのでしょう。
「それではマット様。私はこれで失礼いたします」
長居する理由はないため、私は断りを入れて店を後にしました。店を出て歩きだして、すぐに違和感をかんじます。耳が勝手に反応して、捉えた情報を反射的に私の体を動かしました。振り向くと、シエナ様も同様にお店を出てくるところでした。
視線が合った刹那。私は顔を元の向きに戻して歩きだします。それからも立ち寄った場所には必ずシエナ様は付いてきています。偶然・・・・・・じゃないのでしょうね。もう。
諦めと同時に、少しの悲しみが私の心に暗い影をもたらしました。きっと、シエナ様は私のことを疑っているのです。私がユーグ様の奴隷に戻ったのを訝しんで、またなにか企んでいるのではないかと。尾行して怪しいところはないか調べているのでしょう。
被害者ぶるつもりはありません。疑われても致し方のないことだと受け入れています。そうなる原因は私にある。ならあえて行動で示せばいい。やましいことはないのですから。
けど、ご主人様への罪悪感も思い出してしまって、決心が揺らいでしまいそうです。ご主人様への贖罪として生きようとした私に戻りそうになってしまうのです。単なる奴隷としてご主人様の側にいることを後悔してしまいそうです。それだけは絶対に嫌なのです。だって、あの命令は私の願いとご主人様の願いが重なった命令でもあるのですから。
垂れている耳を引っ張って、気合いを入れ直します。
「ただいま帰りました」
玄関を進み、先にご主人様の様子を確認します。案の定です。やはりご主人様はまた魔導書創りに励んでいらっしゃいます。私が帰ってきたことにも気づいていない様子。羊皮紙がベッドの上に山になったものがいくつもあって。指も顔もそのまま擦ったからかインクで汚れています。あとで包帯も取り替えなくてはいけませんね。早く戻さなくては。
「まったく、どうしようもないご主人様ですね」
「うわぁ!!??」
恥ずかしさとあえて耳元でささやきました。きっとそれでも気づかれないのではと思っていたのですが、よかったです。
「ルウ!? お前いつ帰って来たんだ!?」
もうわざとなんではないか? という焦りっぷりにも慣れたものです。
「ご主人様。私が出掛ける前になんて言ったか覚えていますか?」
「え? あ、あ~。これはその・・・・・・・・・」
「ただでさえ治療費とお薬代と出費が重なって次のお給料日までかつかつで過ごさなくてはいけなくて。私も1日お肉は一切れ大で我慢しているというのに」
「うん・・・・・・・・・」
「まさか私に体を売るように仕向けていますか? どこぞの誰かの性奴隷になることがお望みですか?」
「そんなこと! 俺はルウのことが大好きなのに!」
っきゅん///
「は、ははぁ~んです。なるほど。つまり好きな子を別の誰かと関係を持たせることに興奮するようになったと。そういう妄想だけでは満足できず、ついに実行させるときがきたと。そういうことですね?」
「なんでそうなる!?」
「ネトラレを体験し、お金と性欲を満たせるダブルでナイスな作戦ですか?」
「妄想がすぎる! ひどい誤解だ!」
「うるさいです。鼓膜が震えます」
「あ、ごめん」
「それと吐き気がします。頭痛もします」
「俺の声と大きさって脳にダメージを与えるレベルなの?」
あぶないあぶない。つい動揺するところでした。ご主人様は私に対しての好意をふとしたときに伝えてきます。こちらにはまだそんなつもりは一切ないというのに。唐突に言われるから変に焦ってしまうではないですか。私が動揺しているところを知られるとご主人様は調子にのりますから。まったく・・・・・・。
「本当に、困ったご主人様ですね」
ご主人様とのやりとりを繰り返しながらも、私は意識をわずかにずらしていました。尻尾の反応がどうなっているか。それでご主人様に誤解されないか。気が気じゃありませんでしたから。
「やぁルウちゃん。ご主人様の容態はどうだい?」
「あいかわらずです。魔導書を作成しようとして傷が開きそうになりました」
まったく、お世話をするこちらの身にもなってほしいです。とはいえ、顔見知りの承認さんとこんな軽口を叩きあっていても、本当は笑い話ではありません。
ご主人様は大魔道士の魔導書に感銘を受けたらしく、創り直す魔導書を根本から見直しています。私は魔導書を創ったことはありませんが、ご主人様の様子を見るに尋常ではない負担がかかっているはず。本当は工房で魔導具も新しく創りたいのに、あえて魔導書を先に創るというのがせめてもの救いなのでしょう。
羽根ペンを握る指先が裂けて、血を流していても本人は気づかなかったくらいなんですから。改めてご主人様の異常さを目の当たりにしました。普通だったら痛みや血で止まったりするでしょう? けどあの人、ユーグ様はまったく気づいていませんでした。
『わざと怪我を悪化させて長引かせるおつもりですか? 働きたくないのですか? それで私を働きに出させるおつもりですか? 甲斐性なしのろくでなしになりつつあると自覚されてますか?』
本当はもっと注意したかったのですが、私に注意をされて(なぜか)悶えながら喜んでいる気持ち悪いご主人様にはなにも言えなくなってしまいます。
あんなことがあったというのに、ご主人様はなにも変わりません。以前と同じように魔道士になるための研究に情熱を捧げて、そして私への好意が丸わかりなのです。裏切ったことを責めるわけでもなく。それが当たり前だとでもいわんばかりにあまりにも以前と同じすぎて。自然すぎて嬉しくて。ありがたくって。
そもそも、普通裏切った奴隷なんて側に置かないでしょう。好きで居続けられないでしょう。なのになにも変わりません。私のことに一喜一憂して悶えて叫んだりして。それなりの覚悟を決めてそれなりの命令を受けるつもりであったのにあいかわらずなにもしないチキン野郎ですし。ああ、いえ。別にえっちな要求を期待していたわけではなくって。
ともかく。最初は困惑していたけど、慣れというのはおそろしいですね。今では私も本音で接してしまいます。本当に以前通りに戻っています。我ながら調子いいなぁっておもうけど、でもご主人様もそう望んでいますし。もうこんなかんじでいいかなぁって。
けれど、相変わらず無茶を平気でしてしまうご主人様には、呆れるやら心配するやら。この人の死因はきっと過労死か寿命しかないってくらいです。不安だし心配ですけど、心の底から楽しんでいるご主人様を無理に止められず。そんなご主人様に尽くしたい、夢を叶えてほしい、自分も役にたちたい、けど体を労ってほしい。以前なら苦しんだ感情も、今の私は受け入れられています。それが幸せなんだって実感できるくらい。
「ははは。魔道士(予定)さんはしょうがねぇなぁ」
「本当に、困ったご主人様です」
この幸せが奴隷としての幸せなのはたしかです。充実しています。けど、それをご主人様に伝えると調子にのりますから。ですから、こうやって愚痴としてこぼしてバランスをとるくらいがちょうどいいのでしょう。
市場からの帰り道、偶然シエナ様に会いました。私は頭を下げます。むこうも私を視認したらしく、美しいお顔が嫌悪感で歪みます。
私は・・・・・・気まずいのでそのまますたこらさっさと通り過ぎます。私がご主人様を裏切ってエドガー様に協力していたことが許せないのでしょう。騎士として。そしてユーグ様の親友として。お見舞いに来るときの態度と視線から肌でかんじます。
許してほしいとは願いません。ただご主人様と今後も友人として接していただきたいとおもっています。だから私にできることは、せめてシエナ様が不愉快にならないよう去るのみ・・・・・・・・・・・・。
けど、シエナ様は私の後をピッタリついてきています。なにゆえ・・・・・・・・・?
気配と音、そして嗅覚がシエナ様の存在をすぐ近くにいると私に訴え続けています。もしかして、ユーグ様のお見舞いに行く予定なのでしょうか? だとしたら、私は少し帰る時間をずらしたほうがよいでしょう。
ちょうどご主人様に頼まれて素材をいくつか買いに行くつもりだったので、助かりました。マット様のお店に入って、商品を見繕います。
「やぁルウちゃん。こんばんは。また旦那のお使いかい?」
こうやって以前と変わりなく話してくれるマット様には頭が下がります。この方にも少なからずご迷惑をかけたのに。私は、なんて恵まれているのでしょうか。
「あ、あの。コウモリの牙ありますか? それとマンドレイクも」
「ん。他には?」
「あ、あとは、そうですね」
以前の私は、きっとマット様にもシエナ様にも罪悪感なんて抱かなかったでしょう。話し方も動揺しないで、すらすらと言葉が自在に出ていたに違いありません。復讐の対象であったユーグ様意外はその他。どうでもいい存在だったんですから。
「了解。揃えておくよ。それで、シエナの旦那は? なにか用事でも?」
「え?」
私の後ろに視線をやったマット様につられ、私は振り向きました。なんとシエナ様がいるではないですか。
「別に。用件というわけでもないさ。ただ、近くまで寄ったから世間話でもってね」
「へぇ。そいつぁありがてぇ。けど、騎士様に聞かせるようなお話はありやせんぜ」
お二人のやりとりから推察するに、どうもシエナ様はマット様に会いに来たんでしょう。どうも騎士のお役目の一環として情報収集を行っているようです。マット様は曲がりなりにも商人。いろいろな人を通じた話を知っているからかもしれません。
「最近、急成長しているスェニルタ商会なんて知っているかい? 僕は行ったことないけど、ガールフレンドが教えてくれてさ。今度プレゼントに利用しようかなって」
「なんでも魔道士と契約しているとかで、珍しい魔導具を安価で売っている商会だって」
「へぇ」
「けど、安くて小さくて効果はいまいち、長持ちしなくてすぐに壊れちまうそうです」
「ふぅん。どこにでもある、ありがちな商会なんだね。女の子はどうしてそんなもの買うんだろうね。素材はこのお店で?」
「独自のルートがあるんじゃないですかい?」
「マット。君も自分から営業かけないとさ。駄目なんじゃない? 商人目指してるんでしょ?」
「細く長くを心がけているんで。それに、下手に商会と関わるとろくなことになりませんよ」
「うわぉ。なにか昔嫌なことでもあったのかい?」
シエナ様はどうやら本当に世間話をしに来ただけのようです。それからも仕事のことやお互いの近況を話しています。偶然私と行くお店が被ってしまった。単にそれだけだったのでしょう。
「それではマット様。私はこれで失礼いたします」
長居する理由はないため、私は断りを入れて店を後にしました。店を出て歩きだして、すぐに違和感をかんじます。耳が勝手に反応して、捉えた情報を反射的に私の体を動かしました。振り向くと、シエナ様も同様にお店を出てくるところでした。
視線が合った刹那。私は顔を元の向きに戻して歩きだします。それからも立ち寄った場所には必ずシエナ様は付いてきています。偶然・・・・・・じゃないのでしょうね。もう。
諦めと同時に、少しの悲しみが私の心に暗い影をもたらしました。きっと、シエナ様は私のことを疑っているのです。私がユーグ様の奴隷に戻ったのを訝しんで、またなにか企んでいるのではないかと。尾行して怪しいところはないか調べているのでしょう。
被害者ぶるつもりはありません。疑われても致し方のないことだと受け入れています。そうなる原因は私にある。ならあえて行動で示せばいい。やましいことはないのですから。
けど、ご主人様への罪悪感も思い出してしまって、決心が揺らいでしまいそうです。ご主人様への贖罪として生きようとした私に戻りそうになってしまうのです。単なる奴隷としてご主人様の側にいることを後悔してしまいそうです。それだけは絶対に嫌なのです。だって、あの命令は私の願いとご主人様の願いが重なった命令でもあるのですから。
垂れている耳を引っ張って、気合いを入れ直します。
「ただいま帰りました」
玄関を進み、先にご主人様の様子を確認します。案の定です。やはりご主人様はまた魔導書創りに励んでいらっしゃいます。私が帰ってきたことにも気づいていない様子。羊皮紙がベッドの上に山になったものがいくつもあって。指も顔もそのまま擦ったからかインクで汚れています。あとで包帯も取り替えなくてはいけませんね。早く戻さなくては。
「まったく、どうしようもないご主人様ですね」
「うわぁ!!??」
恥ずかしさとあえて耳元でささやきました。きっとそれでも気づかれないのではと思っていたのですが、よかったです。
「ルウ!? お前いつ帰って来たんだ!?」
もうわざとなんではないか? という焦りっぷりにも慣れたものです。
「ご主人様。私が出掛ける前になんて言ったか覚えていますか?」
「え? あ、あ~。これはその・・・・・・・・・」
「ただでさえ治療費とお薬代と出費が重なって次のお給料日までかつかつで過ごさなくてはいけなくて。私も1日お肉は一切れ大で我慢しているというのに」
「うん・・・・・・・・・」
「まさか私に体を売るように仕向けていますか? どこぞの誰かの性奴隷になることがお望みですか?」
「そんなこと! 俺はルウのことが大好きなのに!」
っきゅん///
「は、ははぁ~んです。なるほど。つまり好きな子を別の誰かと関係を持たせることに興奮するようになったと。そういう妄想だけでは満足できず、ついに実行させるときがきたと。そういうことですね?」
「なんでそうなる!?」
「ネトラレを体験し、お金と性欲を満たせるダブルでナイスな作戦ですか?」
「妄想がすぎる! ひどい誤解だ!」
「うるさいです。鼓膜が震えます」
「あ、ごめん」
「それと吐き気がします。頭痛もします」
「俺の声と大きさって脳にダメージを与えるレベルなの?」
あぶないあぶない。つい動揺するところでした。ご主人様は私に対しての好意をふとしたときに伝えてきます。こちらにはまだそんなつもりは一切ないというのに。唐突に言われるから変に焦ってしまうではないですか。私が動揺しているところを知られるとご主人様は調子にのりますから。まったく・・・・・・。
「本当に、困ったご主人様ですね」
ご主人様とのやりとりを繰り返しながらも、私は意識をわずかにずらしていました。尻尾の反応がどうなっているか。それでご主人様に誤解されないか。気が気じゃありませんでしたから。
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