魔道士(予定)と奴隷ちゃん

マサタカ

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十五章

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 意気揚々とルナとやってきたのは、池だった。道中と昨夜の話から、ここに呪いがあるのは間違いがないので、改めて調査したかったとのこと。

「あ、隊長さん。お勤めごくろう様です!」

 ルナは既に到着していた衛兵たちに元気よく挨拶して、すぐに池の周りを散策する。

「先輩、それではさっそく協力していただきますね」
「おう! ばっちこいや!」
「・・・・・・・・・・・・・・・なんかテンション高くないですか?」

 ルウとのことがあったからだ。俺はすべてが至らない。好きな子の悩みを解決することも、原因もまるでわからない。けど、二度と間違いを繰り返さない。それを忘れない。そのために今できることを、全力でやるだけだ。

 ルウを信じる。そして、自分が今できることを一つ一つしっかりと解決する。

「やってやる! 俺はやるぞ!」
「いつもと違って先輩こわいんですけど」
「うおおおおおおおおおおお!!」
「全身から炎が!? 感情おさえてください!」

 ルナに諭されながらも、昂ぶっている心はかっかかっかと熱いままだ。

「ふむふむ。なるほど。それでは奴隷と話していたら、いつの間にか奴隷が池の中に入っていたと。そのとき先輩は? ルウを助けようと飛びこんだ」
「なにかに引き寄せられた感覚はありましたか?」

 真面目なルナは違和感があるけど、そこには魔法士として、研究者としての真剣さがある。

「ふぅむ。先輩の話から推察すると、どのような呪いか特定するには難しいですねぇ」
「呪いってのはそんなにめんどうなものなのか?」
「フッ」
 
 鼻で笑われた。むかつく。

「あ~~。ですよね~。呪いって~~、魔法と違って複雑で魔法士でも魔道士でも完全に解呪したりできないことも多いですからね~~。いくら魔道士(予定)の先輩でも理解できないですよね~~。ふふん」
「ああ、そう・・・・・・・・・・・・・!」
「まぁ? でもでも? 先輩がどうしても教えてほしいって頭を下げるならお教えしますよ~~? へへへ!」
「いや、いい。帰る」
「ええ!? す、すいません! ごめんなさい調子にのりましたぁ~!」

 めんどくさい。背中から降りろ。マシラかおのれは。

「ごほん。え~~、基本的に呪いはですね。決まった形がないんですよ。ある意味で自由すぎる。道具を媒介にして永続的に被害が生じたり、呪詛を憎悪とともにずっとずぅ~っと特定の人物にかけ続けたが故に生じるものまで。死んだ人物の憎しみが原因で特定の地域全体に災いがおこりつづけるというものまで、幅広くあります。魔法って一から創ってもある程度計算したり構築法方法を模索しなきゃいけませんよね? でも、相手が憎い! 許せない! って感情があれば誰でもできるくらいなんです」
「魔法士でもなくてもか?」
「はいです。死者達の怨念が集まったが故の、偶発的原因ということもありえますが。今回は人為的な呪いだというのはたしかなので。ですが、勿論解呪することさえ誰でもできます。逆に、自由すぎるのでどんな方法による呪いかか、条件がなんなのか。突きとめるのが困難なのです」

 ふぅ~む、話を聞くに魔法とは仕組みが全然違うんだな。仮にも研究者のルナがこんなに断言するなんて。

「まぁ、乱暴な方法であれば呪いの原因も種類も特定できますが」
「どんな方法なんだ。もったいぶらないで教えてくれよ」
「はい。私たちが今ここにいても、なにもおきませんよね?」
 
 ふむ。

「なので、呪いによる被害をわざと誘発して、第三者が外側から観察したほうがよろしいかと。そうしたほうが解呪の方法もさっさとわかります」
「・・・・・・・・・・・・つまり?」
「先輩、ちょっと池の中に入って昨夜の状態を再現してもらえますか?」
「ざけんな」

 万が一死んだらどうすんだ。魔法も体力もなくなるんだぞ。泳げないくらいまで弱まるんだぞ。お前が入って実際に体験してみろ。そうすれば理解できるわ。

「むぅ~。そうなると、被害にあう直前の状況を再現しますか」

 こいつ、もしかして自分が危ないめに遭いたくないから方法変えやがった?

「じゃあ先輩。どんな風だったか教えてください。私と先輩で再現しましょう」
「なにが悲しくてお前と愛しのルウとの記憶を再現しないといけないんだよ。お前じゃ逆立ちしてもルウに成り代わることなんてできねぇんだよ身の程をしれ」
「我が儘やめてくださいよ~~! そうじゃないと他に方法がないんですよぉ~! いいんですか!? この街がずっと呪われ続けて先輩の故郷が滅びてしまうかもしれませんよ!? 謝礼だってもらえませんよ!?」

 衛兵の方々も、「さっさとやれよ」的な視線を送りはじめている。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。ぐ、くそ・・・・・・。

「これは街のため謝礼のため・・・・・・・・・・! ひいてはルウとの明るい未来のため・・・・・・・・・・!」
「泣きそうになりながら自分に言い聞かせるなんて、どんだけ嫌なんですか・・・・・・・・・・・・・」

 必死に耐えて、ルナをルウに置き換えて当時の会話、位置でやりはじめる。ルナはちょっとむかつくレベルで、ルウの表情と声音、台詞を再現している。もう役者にでもなれるんじゃね? ってレベル。

 時折、「うわぁ・・・・・・・」的な表情をしているけど、俺だって嫌だわ。なにが悲しくて赤裸々な好きな子とのやりとりを別人と再現しないといけないんだ。

「先輩があの奴隷とそんなやりとりしてるんだなぁって。なんか生々しい男女の重い感情がリアルに想像できてキツいです」

 黙れ。なりきれ。心を殺せ。

「しかし、おきませんねぇ。おかしいです。じゃあ先輩、次は私に愛の告白をしてみてください」
「無理にきまってんだろ!」
「私だって嫌です! なにが悲しくて先輩みたいな人に初めての告白をされないといけないんですか! でも先輩と奴隷の感情をできるだけ再現すればわかるかもしれないじゃないですか! あの奴隷のこと、先輩好きなんでしょう!? 感情に密接に作用する類いの呪いかもしれないじゃないですかぁ! さぁさぁ! 私の感情を揺さぶってください! いつもあの子にしているみたいに!」
「なんで俺がルウのこと好きだってわかったんだ!」
「乙女のたしなみです!」
「意味がわからん!」
「そうでないと一生終わらせませんよ!? 私一生ここに残りますよ!? 先輩のこと呪いますよ!」
「新たな問題作ろうとしてんじゃねぇ! だああああああああああ! わかったよ!」

 めんどうくさい。もうさっさと終わらせたい。信条的に難しいので、こいつはルウこの子はルウって自分に暗示をかけて。

「好きだ。大好きだ。愛してる」

 いつもルウに語っているみたいに、告げた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「いっそ殺せぇ!」

 どん引きしてんじゃねぇよ。お前がやらせたくせに。くそ、引き受けるんじゃなかった。

「ずいぶんと仲がよろしくなったのですね」
「え、ルウ!?」

 いつからそこにいたのか。ルウがすぐ側に立っていた。しかも、尋常ではないほどの圧倒的オーラを発している。

 というか、俺のすぐ後ろで見下ろしていた。
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