魔道士(予定)と奴隷ちゃん

マサタカ

文字の大きさ
124 / 192
十七章

しおりを挟む
「せん、先輩。お願いします。そろそろ休憩してください」

 弱音を吐くルナを無視して魔法陣の構築に集中している。時間がない。少しでも遅れればそれだけエルフの被害は増える。それに、これくらいで休憩なんて早すぎる。

「休みたいならお前だけ休んでていい」
「いや。先輩は気づかなかったでしょうけど私昼食もおやつもお昼寝もティータイムもすませているのですよ。さすがに私だけ欲張りすぎだったなぁ~って」
「てめ、このやろ」

 人が熱中している間になんてことを。

「いえいえ。私は何度か声をかけたのですよ? ですが、先輩が熱中しすぎてて無視しちゃってたんじゃないですか~。つまり先輩が悪いのです。ぷんすかです」

 ルナが呪いの仕組みについて解説してくれたから、あとは組み合わせるだけ。最初はルナも手伝ってくれていたけど、魔法的部分については俺が担当するしかないから、合間にアドバイスやチェックをもらう。つまり、圧倒的にルナのやることが少ないんだ。

 だとしても、基礎的な手伝いはできるだろ。わざとさぼっていたんじゃないだろうな。

 追求しようとしたとき、ノックが響いた。使用人がやってきて夕食の用意ができたと。今日はもしかしたら泊まりこみになるかもしれない。ちょうど集中力が途切れたし、英気を養うためにも一息をついたほうがいい。

 ルナにしつこく言われて、不承不承ながら頷いた。夕食の席にはガーラ様はいなかった。進捗具合を報告したかったんだけど。

「ま、まぁガーラ様もお年頃ですし!? 私達と同じくらいお忙しいはずですから!? しょうがありませんよ!」

 何故かテンパりまくるルナが、慌てて話を中断させた。

「それよりも先輩早く食べましょう! 時間は有限ですし、先輩みたいな金欠野郎には食べられないメニューでしょ!?」

 喧嘩売ってんのか。というか、お前が用意したもんじゃないだろうよ。けど、食事のメニューにはどこか違和感がある。

「ガーラ様は毎日こういうのを食ってんのか」
「はいっ、私達ともなれば毎日食べてますよっ。どうです? 婿入りしたくなりました?」
「ところで、逆探知のことなんだけど」
「スルーしないでくださいよぅ。冗談なのに無視されると恥ずかしくなります。私がフラれたみたいじゃないですかぁ。ぐすん」
「呪具は、そのまま使って大丈夫なのか? 前に一度、下手に扱えないとか呪い返しとか言ってたろ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・私もちゃんぁ~んと呪具の処置をしていますよぅ。時間をかけてですけど~~」
「そうか。じゃあもし終わったら俺が引き取っちゃだめか?」
「ほぇ? なんでですか?」

 自分の研究に使いたいからだ。呪いを逆探知みたいに魔法と併用させれば、新しいことができるかもしれない。それに、俺の義眼の改良にも使えるんじゃないかって。魔力と俺の魂と義眼は複雑に絡みあっている。だけど、もし呪いを利用すれば使いこなせるし、簡単に取り外したりもできる。

 いろいろと不便だからな。今のままだと。風呂入るときとか顔を洗うときとか慎重にしないといけないし。勿論、今は優先しないけど。

「だとすれば、もっと呪いについて詳しく書かれた書物もほしいし」
「は、はぁ」
「改めて呪いって奥が深いなっておもったんだ」
「そっすね」
「あ。そうそう。魔法陣についてだけど、ちょっと夕食終わったら様子みてほしんだ」
「あの、先輩。食事のときくらい研究とか呪いから離れません? 嫌われますよ?」
「お前に嫌われてもどうでもいい」
「好きな子にですよぅ。というか先輩私に対してひどすぎません!?」

 なにを今更。右から左へと受け流そうとしたけど、好きな子と指摘されて自然とルウが浮かんでとまってしまう。

「先輩?」
「どうして魔法とかの話をすると、好きな子に嫌われるんだ?」

 え? なんでそんなこと? と訝しんでいる。それはそうだろう。さっきまでまるっきり違う話なのだから。

「え、ええ~~~? そりゃあ食事中って楽しく味わいたいじゃないですか。仕事とかそういう難しい話をされると萎えるといいますか。それよりも料理の感想とかお互いのこととか話したいでしょう?」
「それは・・・・・・・・女性全員に当てはまるのか?」
「そりゃあそうでしょう。逆に先輩はどうですか? 自分の仕事の話とか興味ないこととか相手に話されたら嬉しいですか? もっと別のこと話したいってなりませんか?」
「ならない。とてつもなく嬉しい」
「・・・・・・じゃあ相手が夢中になっているもののことを延々と喋られたらどうです?」
「とてつもなく嬉しい」
「どうしよう、なにを言っても通じる気がしません」

「先輩ってもしかしてあの奴隷の子に同じこと言っていません? 魔法のこととか研究のこととか」
「ああ。してるよ。よく」
「・・・・・・あの子よく嫌になりませんね。いえ、奴隷だからはっきり断れないんですねかわいそうに」
「しつ・・・・・・・・・・・・・・れい、な」

 もしかしたら、ルウも本音は嫌だったんじゃないだろうか。我慢していたんじゃないだろうか。

「え? もしかして思い当たることあります? あったりします?」

 なんでこいつ目をキラキラ輝かせてるんだ。

「ああ。あるよ。ありまくりだ」
「うわぁ。鬼畜ですねぇ。うける。マジウケマクリングです」 
「ああ。だから今後のためにもはっきりさせるよ」
 
 そのためにも、今は早く終わらせる。この街の問題も。ルウとの関係も。

「へぇ。そうですか。まぁ私には関係ないのでご自由に。あ、でもでも愚痴くらいなら付き合いますよ? あ、でもでも私が優しくすると先輩また勘違いして私のこと好きになっちゃったり? きゃあどうしましょう!」
「寝言は寝てほざけ。というか、お前ルウと話しただろ。嫉妬のこととか羨んだこととか。理由教えろ」
「ええ~~~? だめですよぉ~~。あの子に脅さ、口止めされているので~~~。それは先輩が自分で考えてくださいよぉ~。乙女にだって知られたくないことの一つや二つあるんですぉ~? 種族が違っても身分が違ってもそこは共通ですぅ~~。乙女心を探ろうとする人は敵ですよ~」
「いいじゃねぇか。ちょっとくらい――――――」

 ここであることをおもいだして、そこはかとなく自省する。急に黙りこんで食事もとまった俺を「先輩?」と声をかけてきた。

「違ぇ。なんで恋バナ相談みたいになってんだ!」
「ほえ? そりゃあ先輩が奴隷の子を好きだからでは?」
「呪具のことについてだろ! 俺も偉そうなこと言えんけど!」

 本当、よくここまで脱線できたよ俺達。

「え? 呪具? え?」

 まじで忘れてやがるし。こいつは本当に専門家か?

「あ、あ~~~。呪具を引き取りたいって話ですか~~。それは・・・・・・う~~ん。どうでしょねぇ~~。ガーラ様が首を縦に振らないのではと」

 ? 変な話だな。どうしてだ? ガーラ様達にとっては災いと苦労の象徴。逆に手元に残しておきたくないんじゃないか?

「前に聞いたことがあるのですよ。私が呪具の解析や危険を取り除けたらどうするのかと。私が個人的に引き取ってよろしいか、と。理由は明言されませんでしたけど」
「それは・・・・・・ずいぶんと変な話じゃないか」
「まぁガーラ様にもおもうところがあるんじゃないですか? 思い出に、とか言ってましたし。まぁどうでもいいではないですか。それより冷めちゃいますよ。早く食べちゃいましょう」

 ルナがどうでもいいと断じたことが、どうしても引っかかった。魔法士じゃないやつには、あんなものが思い出になるのか? 逆に戒めの意味で引き取りたいのかもしれない。けど、だったら思い出という言い回しは不自然だ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。 先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。 龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。 魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。 バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……

処理中です...