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一九章
Ⅴ
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まずい。レベルが違いすぎる。まさか、俺達の魔法を即座に解析しているのか? それも、自らの魔法としてすぐに組み立てて、習得して、扱えるほどに?
それが、エルフなのか。俺の義眼より厄介じゃないか。しかもこっちは威力のある攻撃ができない。子供と自然現象が戦っているのと同じくらいの、圧倒的差。
しかもこっちは防戦一方だけじゃない。魔力を減らし続けている。逆にモリクはどんなからくりがあるのか疲労の色がない。
「ど、どんな脳みそしてんだお前は・・・・・・!」
徹底的に、モリクは俺とルナ達を上回っている。
「ああ、つまらぬ。退屈じゃ。退屈退屈。飽いたわ」
俺達の四方八方に、何かが生じる。『炎球』じゃない。バンバンと爆ぜながら、それでいてとてつもなく極小のサイズ。ゾッとする。俺の魔法で一番威力の大きい『炎塊』と同規模、そして『発火』も組み合わせている。いや、きっと想像以上の威力と破壊力を秘めている。
「せ、先輩。もう例のあれを」
ルナの指摘通り、モリクへの唯一の対抗手段を使うか。それとも義眼を使うべきか。どうする? 下手に使えば、制御の奪う方法さえ。
「なんじゃ。飽いたと申したであろう。使うがよい」
「っ」
ぎくりとする。まさか、こいつは気づいている? 冷や汗が走る。
「それとも、おそれておるか? 己が相貌を晒すのが。己の過ちを妾に嗤われるのが」
モリクは、対抗手段の話をしているんじゃない。俺の義眼の話をしている。けど、どうしてこいつは俺の傷のことについて知っている? 傷ができた経緯。それについては、限られた人しかしらない。こいつはなんで俺の秘密を知っているんだ?
誰かから聞いたのか? いや。誰から聞いたんだ?
「もうよい」
途端に興味を無くしたモリクの言葉にハッと我に返る。ルナが俺に庇われるようにして身を縮込ませて。布を外して戒めを解く。だめだ、魔法が発動する。間に合わない。
「うむ?」
今にも破裂しそうだった周囲の魔法が、急速に萎んでいく。バッ! と俺達を庇うように前に出たガーラ様を、忌々しそうにモリクは睥睨している。
そんなモリクの反応から、遅ればせながら、俺が推測したとおりだと確信する。
「興がさめた。もうよい」
そのままモリクは、指をちょいちょいと動かしただけで、ルウの体を引き寄せた。そして、耳元でなにかぼそりと呟く。カッと不自然な目の見開方。地面に降り立ちながらもどこか不安定で所在なさげなかくかくとした移動。明らかに常軌を逸している足の運び方。
「待て! やめろ! ルウにそれ以上なにをするつもりだ!」
「この者の扱いは、そのほうには荷が重い。少なくとも妾に勝てないそのほうではな。ゆえに、これより妾が解き放つ。この者のあるべき姿をな」
解き放つ。あるべき姿。まさか『隷属の首輪』を壊して自分の奴隷に!?
「どんなことをさせるつもりだ! もふもふか!? 『もふもふタイム』か!? 『もふもふフェスティバル』か!? それともペロペロか!?」
「そのほうの言葉がわからぬ」
「まさか一緒に寝るのか!? 手を繋いで歩くのか!? デートするのか!? ええ、おい!」
「もういい。好きにほざいておれ」
無理に動かされているルウは、俺の呼びかけにも応じず、ただモリクに従っていく。
だめだ。ルウ。俺はまだ君に伝えたいことが残っているんだ。行かないでくれ。
「だめ!」
ガーラ様が飛びついて、ルウを少しだけとめた。
「先輩!」
ルナの叫びと風魔法。モリクはめんどうくさい、という億劫そうな鈍い動きのまま、魔法で応戦するかまえを。咄嗟に義眼を発動する。同時に懐から忍ばせていた物を投げつけて、それがなんなのかはっきりと認識したであろう、モリクの表情が固まった。
隙ができた。予め三人で示し合わせ、徹底的に油断させて、ここぞというときにまで使わないでいた、存在さえ隠していた、呪具。それ目掛けて二人同時に魔法を放つ。
けたたましい破壊音と、閃光が走った。モリクはどうなったのか。ルナは。ガーラ様は。ルウは。もうなにも聞こえない。白い光の中で、永久に続く気持ちの悪い負の感情がダイレクトに耳朶を震わせ、おぞましい気分にさせる。
池で溺れたときと同じだ。あのとき、俺は呪具に籠められていた怨念を受けていた。なら、今それを聞いているのか?
ルウは。今どこにいるんだろう。無事なのか。
「『念話』・・・・・・」
それだけが、知りたかった。
それが、エルフなのか。俺の義眼より厄介じゃないか。しかもこっちは威力のある攻撃ができない。子供と自然現象が戦っているのと同じくらいの、圧倒的差。
しかもこっちは防戦一方だけじゃない。魔力を減らし続けている。逆にモリクはどんなからくりがあるのか疲労の色がない。
「ど、どんな脳みそしてんだお前は・・・・・・!」
徹底的に、モリクは俺とルナ達を上回っている。
「ああ、つまらぬ。退屈じゃ。退屈退屈。飽いたわ」
俺達の四方八方に、何かが生じる。『炎球』じゃない。バンバンと爆ぜながら、それでいてとてつもなく極小のサイズ。ゾッとする。俺の魔法で一番威力の大きい『炎塊』と同規模、そして『発火』も組み合わせている。いや、きっと想像以上の威力と破壊力を秘めている。
「せ、先輩。もう例のあれを」
ルナの指摘通り、モリクへの唯一の対抗手段を使うか。それとも義眼を使うべきか。どうする? 下手に使えば、制御の奪う方法さえ。
「なんじゃ。飽いたと申したであろう。使うがよい」
「っ」
ぎくりとする。まさか、こいつは気づいている? 冷や汗が走る。
「それとも、おそれておるか? 己が相貌を晒すのが。己の過ちを妾に嗤われるのが」
モリクは、対抗手段の話をしているんじゃない。俺の義眼の話をしている。けど、どうしてこいつは俺の傷のことについて知っている? 傷ができた経緯。それについては、限られた人しかしらない。こいつはなんで俺の秘密を知っているんだ?
誰かから聞いたのか? いや。誰から聞いたんだ?
「もうよい」
途端に興味を無くしたモリクの言葉にハッと我に返る。ルナが俺に庇われるようにして身を縮込ませて。布を外して戒めを解く。だめだ、魔法が発動する。間に合わない。
「うむ?」
今にも破裂しそうだった周囲の魔法が、急速に萎んでいく。バッ! と俺達を庇うように前に出たガーラ様を、忌々しそうにモリクは睥睨している。
そんなモリクの反応から、遅ればせながら、俺が推測したとおりだと確信する。
「興がさめた。もうよい」
そのままモリクは、指をちょいちょいと動かしただけで、ルウの体を引き寄せた。そして、耳元でなにかぼそりと呟く。カッと不自然な目の見開方。地面に降り立ちながらもどこか不安定で所在なさげなかくかくとした移動。明らかに常軌を逸している足の運び方。
「待て! やめろ! ルウにそれ以上なにをするつもりだ!」
「この者の扱いは、そのほうには荷が重い。少なくとも妾に勝てないそのほうではな。ゆえに、これより妾が解き放つ。この者のあるべき姿をな」
解き放つ。あるべき姿。まさか『隷属の首輪』を壊して自分の奴隷に!?
「どんなことをさせるつもりだ! もふもふか!? 『もふもふタイム』か!? 『もふもふフェスティバル』か!? それともペロペロか!?」
「そのほうの言葉がわからぬ」
「まさか一緒に寝るのか!? 手を繋いで歩くのか!? デートするのか!? ええ、おい!」
「もういい。好きにほざいておれ」
無理に動かされているルウは、俺の呼びかけにも応じず、ただモリクに従っていく。
だめだ。ルウ。俺はまだ君に伝えたいことが残っているんだ。行かないでくれ。
「だめ!」
ガーラ様が飛びついて、ルウを少しだけとめた。
「先輩!」
ルナの叫びと風魔法。モリクはめんどうくさい、という億劫そうな鈍い動きのまま、魔法で応戦するかまえを。咄嗟に義眼を発動する。同時に懐から忍ばせていた物を投げつけて、それがなんなのかはっきりと認識したであろう、モリクの表情が固まった。
隙ができた。予め三人で示し合わせ、徹底的に油断させて、ここぞというときにまで使わないでいた、存在さえ隠していた、呪具。それ目掛けて二人同時に魔法を放つ。
けたたましい破壊音と、閃光が走った。モリクはどうなったのか。ルナは。ガーラ様は。ルウは。もうなにも聞こえない。白い光の中で、永久に続く気持ちの悪い負の感情がダイレクトに耳朶を震わせ、おぞましい気分にさせる。
池で溺れたときと同じだ。あのとき、俺は呪具に籠められていた怨念を受けていた。なら、今それを聞いているのか?
ルウは。今どこにいるんだろう。無事なのか。
「『念話』・・・・・・」
それだけが、知りたかった。
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